2017.04.03 ああいうやつに限ってムケてない

さて本日はS子さんと体の火照るタイプの水を飲みにゆき、
先週彼女が参加した合コンのお話などを主に聞かせていただきました。

「つーかS子ちゃんてさ、甘皮の処理あまくね(笑)?」

飲み会も佳境に入った頃、
突然向かいの男性(5歳下)に言い放たれたそうです。

S子さんは戸惑いました。

(え・・・コイツ・・・何言ってんの・・・急に何・・・甘皮・・・は?・・・てか甘皮てどこ?え?・・・こ、怖っ!)

それまでの話の流れを度外視した、
実に不愉快で不可解な指摘だったと彼女は語ります。

困惑するS子さんのことなど眼中にない様子の彼はなおも続けます。

「ダメだよ~いちおうS子ちゃんも女の子なんだから~!ほら、こことか(といってS子さんの手を取る)、ここも~!ささくれ出来てんじゃん~笑!しっかりして~!」

いちおう女・・・だと・・・?
ささくれ・・・だと・・・?
タメ語・・・だと・・・?←今更

ビール5杯飲んであの状況で冷静に対処できる女なんていないと思う。
とりあえずカッとなって手を払った後、自然に枝豆を皿ごと投げていた。

そう言ってひゅん!とフリスビーを投げるような仕草をするS子さん。

「つーかすっごい飛んだの枝豆が~笑!したらそっからずっと皆に“室伏”って呼ばれてさ~笑!もう調子乗って投げまくっちゃってさ~店長ガン切れだよね~笑!」

ゲラゲラ笑う彼女の瞳が心なしか濡れているような気がしましたが、
考えすぎだったのかもしれません。

わたくし「つかそもそもさ、彼ってネイリストとかなの?」

「全然、ただのSE。システムエンジニア」

え、えすいー。
よく分からないがネイリストではないし、
美容系の職業ではないな。

わたくしはありったけの熱量で彼女の心中をお察しいたしました。

SEが何言ってんだよ甘皮の処理だと笑わせんなささくれ舐めんなよまじで事務職なめんなよ書類の束がどれだけ手の油分水分奪うかわかってんのかアァ?!爪とか気にする女子力あるならもっと気ぃ使ってサラダぐらい取り分けてみろや何外見だけ文句つけてんだよ女子に女子であること求めるならお会計割り勘とかしてんじゃねぇよ肉を手掴みで食べるぐらいの男子力見せてみろやオイコラボケェ!!

多分、こんな感じではないでしょうか。

わたくし「あんな男と付き合ったら絶対甘皮どころじゃ済まなくなるよね。化粧、服装、何から何まで言われるようになるんだよ、そのうち」

「だよね、つーかああいうやつに限ってムケてないんだよ!や、いいけどさ、ムケてなくても」

甘皮の処理云々を指摘する前に、
自分のムスコの甘皮処理を今一度確認しておけ、話はそれからだ、
とS子さんはジョッキを傾けます。

しかしわたくしは見てしまいました。
S子さんの甘皮がきちんと処理され、
普段はしないデコラティブなネイルが施されているのを。
つるっとムケてささくれひとつない10本の指たちを。

女子です。やはり彼女は、誰よりも女子だったのです。
いいなと思っていた男性にあんな事を言われて傷つかないはずがないのです。
翌日ネイルサロンにすがるように駆け込む彼女の姿がまざまざと思い浮かびます。

もうあんなこと言われたくない!言わせない!
そもそも私は室伏じゃない、S子よ!
苗字は高橋なんだからぁぁぁ!

ネイルストーンの煌めきに託された、
彼女の秘めたる想いに胸を焦がしながら、
わたくしにも早く、
ささくれを弄んでくれるムッケム・・・
じゃなかったムッキムキの室伏よ現れたまへ!
と渇望して止まない新宿の夜でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?