2014.04.29 歯に衣着せぬを地で行く、素っ裸な歯が眩しいガックン

眠れない夜を慰めてくれるのが男の愛撫・・・
であれば世界はどんなに平和であろうか、
だがしかし現実は甘くないどころか塩辛いを通り越して臭い。

そんな臭い世界で私はとりあえず、
乳首(なお、ここでは少しくすんだ桃色が望ましい)を扱うが如く、
優しくラジオのつまみをひねった。

その夜ニッポン放送ではGACKT様の番組をやっていて、
「ガックンのイチ押しソングランキーン」みたいな特集が組まれていた。

ドリカムの『未来予想図Ⅱ』は元カノとの思い出の曲で、
当時は洋楽しか聞かなかったガックンに
彼女がゴリ押しで勧めてきたから仕方なく聞いてみたらよかった、
とのことで見事ランクインしていた。
案外、そうゆうとこ柔軟なんだ・・・
もっと、こう、“俺は俺のミュージックしか聞かねぇ!”
みたいなタイプかと勝手に思っていたので、
なんだか意外性を垣間見たようでキュンとした。
でもサングラスは、取った方がいいと思った。

で、次はオレンジレンジの『花』という曲をお勧めするのだが、
開口一番ガックンはこう言ったのだ。

「いや~最初この曲聞いたときさ~まじでこいつらほんっと歌下手クソだな~って思ったんだよね~。なんでこんな曲が1位なのって感じだったよ当時は~」

と、“歯に衣着せぬ”を地で行く、素っ裸な歯が眩しいガックンなのであった。

しかしどうしてそんな曲がイチ押しランキングに入っているのか。
疑問に思っているとガックンは遠い目をして語る(あくまで想像上)。

「俺ね、DVDとかって移動中の車で見るわけ。で、最近借りたDVDの中にたまたま『いま、会いにゆきます』が入ってて見てたわけよ。そしたらもう、感動しまくっちゃってしまくっちゃって。で、エンディングにこの『花』って曲が流れるわけよ。もうね、“そりゃ売れるわ!ズルイでしょ!”って感じだったんだよね(笑)!」

とケラケラ笑っていたのだ。

「しかもあれだよねー、竹内結子ちゃんと中村獅童くんこの後実際に結婚したんだもんね~!そりゃするわ!って内容だったな~!」

と、リスナーに『いま会い』(と、略すかは知らない)の素晴らしさを熱弁。

「30分しか見てないんだけどさ~、そのあと車で2時間も涙が止まらなくてさ~ほんと現場が押し押しで大変だったんだよね~ハハハハ」

っておい!見たの30分だけかい!
どんだけ早送りしとんねん!それでよう2時間も泣けたな!

と、ラジオの前で思わずちゃぶ台をひっくり返したリスナーも
少なくはなかったように思う。
だがしかしそこがいい!それでこそGACKT様がGACKT様たる所以だ。
ぜひ見習いたい。

そういえばあの映画が公開された当時、私の妹が狂うほどに見ていて、
「まじで!いいから!とにかく!見て!」
と何度もしつこく言われていたのだが、
そう言われるとこちらもなぜか意地になって、
絶対に見るまい、見たら負けや、負けなんや!となり、
結局この10年間、ついにレンタルもしないまま生きてきてしまった。

だがあのガックンがそこまで推すのだ、
こりゃあいよいよ見るしかない、
そう思った私はあのイケメン店員がいることを願いつつTSUTAYAに走った。

それは文字通り走って行った(前述通り、免許・チャリなしのため)のであって、
着くころには太ももがパンッパンに腫れあがっており、
そのフォルムはさながらチキンウイング、もしくは手羽先のそれであった。

旧作コーナーにいくと色あせた『いま会い』が並んでおり、
カウンターにも、もれなくイケメン店員が待ち構えていたので、
会計を待つお年寄りや子供たちにさりげなく順番を譲り、
なんとか私担当になるようにイケメンをセッティングした。
我ながら策士だ。

が、今日もイケメン店員は私をただの客としてしか見ず(当たり前だ)、
機関銃で打ちまくったラブラブ弾丸も見事にかわされ、
彼は無傷の兵として祖国・カウンター業務の国へと帰還していった。

一方、またしても戦に負けた私はおめおめと家に帰り、
悲しみをぶちまけるかのようにDVDデッキに
ガツンと『いま会い』をブッ込み再生ボタンをガツガツ押しまくった。

しかし、30分程経った頃であろうか、
ふいに画面がフリーズし、続きが見れなくなってしまったのだ。

なぜだ!神様なぜなの!OMG!そんなのってないよ!どうして!どうして神様!

私はべそべそと母に泣き言を、ねちねちと父に文句を言い、
『とにかく早急に我をTSUTAYAへ送り給え!給えよ!』
とわんわん泣いた。ここで泣いてどうする。泣き所はまだ先のはずだ。

めそめそが完全にイライラに変わった頃、
ようやくTSUTAYAに到着、ずんずんとカウンターに迫り、

「あの、コレ途中から見れなくなったんですけど!ひどくないですか?!早く代わりのモノと交換してくれないとこまるんですけど!!マジで!」

と、怒鳴り散らしたかったが、そこは小心者代表、
一貫して低姿勢、なるべく穏便に事が運ぶよう尽力した。

店員さんはすぐに代わりのDVDを持ってきてくれて、

「たぶん!コレなら!大丈夫と思いますっ!」

と声高におっしゃり、(たぶん・・・?大丈夫と・・・思います・・・?)
と若干不安になりながらも笑顔でその場を去った。

嗚呼ようやく10年越しの『いま会い』だ。
今度は優しく、初めてイケナイ事をしたあの日のように、
初々しくそっと、DVDを差し込んだ。

が、30分後。
私は天変地異が起こり、あのTSUTAYAだけ壊滅的被害を受ければいい!
と思うほど怒りに身を震わせていた。
そう、またしてもDVDはフリーズしてしまったのだ。

もしかしたらデッキの方が故障しているのかもしれないと思い、
もう1台の方でも試してみたがやはりこちらもフリーズ、完全にクロだ。許せない。

大憤慨も大憤慨、
バイオレンスにみちた暴走機関車はまたしてもTSUTAYAへと乗り込み、

なんやねん!どうなっとんねん!こちとら2回目やでわれぇ!

とはならず、低姿勢、あくまで善良なお客様然として、
何卒わたくしに鑑賞可能なDVDを、DVDをお与え下さいませー、
と店員に懇願した。

すると、

「実は当店には“ディスクチェック”の機械がございませんで、古いDVDではたまに見れないケースもあるんです・・・申し訳ありません、すぐに他店からお取り寄せいたしますので・・・」

と言うではないか。

なんやとぉ!?どの口が言っとんじゃわれぇ!えぇ!?この口かぁ?!なんやったら脱ぎたての靴下入れたってもえぇねんぞ!わかっとんのかぁ?!口の中バイ菌でいっぱいいっぱいになんねんぞー!えぇんかぁー!

と叫びたい気持ちを必死に押さえ、しばし呆然としていた。

新作で人気商品のため欠品中、とか、古すぎて店舗にない、なら分かるが、
見れるか見れないかも分からないモノを店頭に並べて一か八かで商売している、
そのことにものすごく驚いた、というかこれが田舎なのか、
田舎のTSUTAYAの現実なのか・・・
と思って少し惨めな気持ちになってしまった。

いいんだ、もう、いいんだ見れなかったことは。
ただ、その“ディスクチェック”なる機械が導入できない程、
導入する必要なしと見なされている現状、
そのことに過疎の進んだこの町の、今を感じて落胆したのだ。

が、嘆いていても仕方がないので、
2度あることは3度ある…じゃなかった、
3度目の正直、ということで、今度こそはあのDVDに会いに行きたい。

もしもまた見れなかったら・・・
次こそはあのイケメン店員に責任を取ってもらおうと思う。
楽しみだ。

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