谷中美佳子 /MikakoYanaka

画家/Japanese Style Painter 命の"ぐるり"…

谷中美佳子 /MikakoYanaka

画家/Japanese Style Painter 命の"ぐるり"について考えながら、古今東西の天然素材を通して人と動植物が生きた痕跡を描いて遺すということを探求しています。 https://yanakamikako.sakura.ne.jp/

マガジン

最近の記事

赤/燕脂(えんじ)

少し紫を帯びた美しい赤色、梅や桜の花びらなど赤みのある植物を描くときに使用します。雲母胡粉と一緒に溶くと桜の花びらをそのまま絵具にしたような色になります。 私が使用する燕脂は綿燕脂という色料です。東南アジアで採取されるラックカイガラ虫の分泌物で主に作られ(紫草が原料のものもある)、奈良の正倉院宝物の中にも収蔵されている古から伝わる色料(あるいは漢方薬)です。東京国立博物館所蔵 国宝「紅白芙蓉図」の淡い薄紅色もこの色料が使われたとされています。中国では絹の染料としても使われて

    • 色について

      作品制作と並行して古典技法について勉強していると色について色々と知ることができます。美術に限らず外交や侵略、歴史についても学ぶことができます。これまで私が実際使用して調べたことを少しずつまとめていきたいと思います。 先ずは赤をテーマに書いていこうと思いますのでよろしくお願いいたします。

      • 裏打ち

        絵が描き終わりましたら次は装こうの仕事になります。 肌裏打ち⇨伏せ干し⇨増裏打ち⇨仮張り⇨返し張り⇨パネル張りこみ⇨仕上げの加筆⇨落款印⇨完成 だいたいこのような流れになります。 先ずは絹を絹枠からはがして裏打ち用の薄い紙を用意します。ちなみに私は楮から作られた薄美濃紙を使用しています。 炊いた糊を用途に合わせて希釈して紙に糊つけします。 肌裏打ちはそのまま伏せ干します。増裏打ち後は仮張り板に張りこみ本画と紙をなじませます。 よく乾いたら仮張り板からはがしてパネル

        • 金泥

          金泥とは金を粉末状にした絵具で銀の含有量によって多少色味が変わります。 まず薄い膠で溶いていきます。 とても軽くてふわふわしているので風に飛ばされないように優しく溶いていきます。 お皿に均一に広がるように これを繰り返します。 ちなみにお皿を温めながら繰り返します。大学では温めるのに電熱器を使いましたが、私は熱湯入り熱々ホーローカップの上で温めながら溶いています。この作業を焼き付けと言います。 仕上げは熱湯を注いでアクを抜いて完成です。 なるべく少ない動きで筆に

        マガジン

        • 絹本制作
          9本

        記事

          天然由来の絵具は石油由来の絵具とは違いベースになる色の種類に限りがあります。昔の人は重ね合わせたり、混ぜたりと色々工夫して色を表していました。特に紫色は難しく謎も多いです。 今回は燕脂の具と藍の具を丁寧に重ね合わせて菫の紫色を出しました。

          彩色

          段々と色数を増やしていきます。 モチーフによりますが、発色が濁らないように気をつけて描いています。

          裏箔

          裏彩色の他に裏箔という技法があります。仏画ですと肉身に金箔が貼られていることで荘厳性を高める効果があります。 自分の場合、光のカケラを拾い集めている気持ちで画面に箔を貼ります。今回は銀箔を使用しました。 表からだと柔らかい光になります。

          具色

          胡粉を調合してつくる具色。古から伝わる技法で仏画の裏彩色等でも使用されています。段々と塗り重ねることで調和のとれた色合いになります。

          見え方の違い

          よく透ける基底材は裏側の色によって見え方が変わります。 張りこみ用のパネルを置くと こんな感じです。 この特性を生かして裏面から描くことで独特な奥行きが出てきます。

          隈取り

          雲母胡粉で隈取りしていきます。絹本の特徴として裏側から彩色(裏彩色)しやすいのでモチーフにあわせてそのようにしています。 裏側 胡粉の次は葉を緑青の具で彩色していきます。 胡粉:牡蠣から精製された白い絵具です。(溶き方はInstagramに投稿してあります) 雲母:雲母(うんも、キラ)を粉末にした絵具、パールのような光沢になります。 緑青:孔雀石を粉砕し粉末状にした絵具です。 緑青の具:胡粉と混ぜて作る絵具のことを〜の具といいます。今回は白緑青の上汁と混ぜて使用し

          骨描き

          今回は松煙墨、藍、綿燕脂、藤黄を淡く抽出して使用しました。 その時々ですが、花びらは墨以外の色で骨描きすることが多いです。 藍:藍成分を含む葉から抽出した染料、蓼藍・インド藍・中国藍を併用しています。今回は中国藍を使用しました。 綿燕脂:燕脂虫の分泌物を綿に染み込ませた染料、綿を湿らせて染液を抽出し直して使用する。 藤黄:東南アジアに生育する植物の樹脂を固めた染料、墨のように水で溶いて使用する。

          絵を描く

          絵を描くときいつも色々なことを考えます。主に植物をよく描いていますが、どちらかというとカタチを借りて内面性を描いています。 今回は絹本制作のメモをしていこうと思います。まず、絹裁断⇨生麩糊準備・絹張り⇨湯引き⇨ドーサ引きの準備があります。画像は準備を終えた絹本に松煙墨で骨描きをしているところです。(糊準備と木枠への張り方はInstagramに動画を投稿中) 絹本制作:絹を基底材として描くこと 生麩糊:粉の状態(でんぷん)なので水で希釈して鍋で炊き、漉してから水で固さを調