赤/燕脂(えんじ)
少し紫を帯びた美しい赤色、梅や桜の花びらなど赤みのある植物を描くときに使用します。雲母胡粉と一緒に溶くと桜の花びらをそのまま絵具にしたような色になります。
私が使用する燕脂は綿燕脂という色料です。東南アジアで採取されるラックカイガラ虫の分泌物で主に作られ(紫草が原料のものもある)、奈良の正倉院宝物の中にも収蔵されている古から伝わる色料(あるいは漢方薬)です。東京国立博物館所蔵 国宝「紅白芙蓉図」の淡い薄紅色もこの色料が使われたとされています。中国では絹の染料としても使われていたため4000年以上の歴史がありヨーロッパでも紀元前3700年頃には既に使用されていたとされます。
絵具として使用するためにはひと手間いります。乾燥した状態で保管しているので使用するときは綿を湿らせて色料を抽出し
(保管状態、使用する分だけ切り取る)
水飴などを少し加えてから熱で水分を蒸発させ絵皿に焼き付けます。
(使用中の絵皿)
その後、水で溶いてそのまま使えますが少量でも胡粉と混ぜて使う方が退色しにくいです。
コチニール(洋紅)とよく混同されますが、コチニール(洋紅)はサボテンに寄生するコチニールカイガラ虫の体液から作るので別物です。
虫の特性も書くか迷いましたがマニアックな内容になるのでまたいずれにします。次はコチニールについて書きたいと思います。
古から伝わる素材とその使い方を繋げていきたい思っています。そして見てくださった方の心に良い変化がありますように願いを込めて…