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連載漫画の作り方11 発表作と漫画家人生1

原稿料のこと 今は安い?高い?

漫画家のギャラは総じて原稿料と呼ばれています。払われ方はいろいろで一冊丸ごとでいくらってこともあるし、ページ単価でってこともあります。一冊丸ごとの場合は、例えば192ページでいくら…とページ数決まってることもあるし、200ページくらいで、のように大体ってこともあります。
ボクはいきなりWEB漫画を描くという経験がないので、そっち関連はよくわかりません。こっから話す内容は自分の経験と最近人から聞き込んだ話。

実は最近どっかの記事で「漫画の原稿料はいまとても高い」という記事を読みました。これには正直驚きました。漫画家になってこの方「新人の原稿料はどんどん下がってる」という話しか聞いたことがないんですから。専門学校を出て新人になった人たちの話も時々聞いてましたが「あー、やっぱりそんな感じだよね、なかなか歯止めかからないんだなあ」みたいなことを思うばっかりでした。
それが、「いまは原稿料が高い」ですか……?

原稿料のこと ボクがみてきた原稿料


23年前に週刊少年マガジンで仕事が来たとき、ボクのページ単価は一万円でした。以降それを越えても数千円、さがることはないけど……というのが標準でしたねえ。たまに一点物の仕事で単価の高いのが来たことはありますが。あ、フランスの漫画をやったときの話も。もともとフランスは原稿料高いのですが、その時は特に円がだだ下がりなお陰で、結構な額になりました。そりゃあ日本から働き手が去ります。前にバンドデシネの原稿料も聞いたのですが忘れちゃったので、今度改めて訊いてみましょう。

つきあってる会社によってもいろいろ性格が違います。
例えば秋田書店で初めて仕事をやったときはボクも駆け出しだったから仕方がないかなと思いはしたけど、ページ5000円でした。一年くらいやって「あの~。これってなんとかなりません?」と訊いたら「言ってくれなきゃ」と担当は7500円にしてくれました。その時秋田で一番高い原稿料は確か水島新司先生でページ10万円と聞いた記憶があります。『ドカベン』のプロ野球の頃です。ボクの思い違いでしたら誰かご指摘下さい。
秋田と言えば当然気になる手塚治虫先生は、20000円だったそうです(当時、亡くなったあとでした)。「え?本当かよ?」と思うと同時に「手塚先生ならやりかねない」とも思いました。とにかく何でもかんでも仕事を受ける人だったようですから。
「手塚先生が20000円だからというと、みんな賃上げ交渉しなくなる」と秋田の人が言ってました。いや、そりゃあそうだけどさ……。

集英社は長く描いていると少しづつですが着実にベースアップしてくれますね。賃上げ交渉しなくてもいいので、楽。
「長くやってるととてつもない原稿料になるのか?」というとそういうわけでもなく、50年くらいやってるM先生で10万円くらいだとか。日本の漫画雑誌は総じて安いので、どうしても原稿料の上限ができちゃうのでしょう。尾田さんで5,60000円という噂も聞きました。

今まで聞いた原稿料で最高の単価はページ400000円。白土三平さんが『カムイ伝』を短期間復活させた時の話。ただこれ、ネタ元が『噂の真相』なんで信憑性があるんだかないんだか。

原稿料のこと それで今はどうなんだい?

で、「いま漫画の原稿料って最高に高いって話を聞いたんだけど?」というのを率直に知り合いの編集者にぶつけてみました。
A氏「 原稿料の長期的な推移は、 大手雑誌関係に関しては30年くらい変化なし。新人で10000円だそうです。大手 web関連の新人は8000円。あ、もし原作がついてもこの金額は変わりません。
webは小さい会社は新人から額を下げてるようです。 新人は互いに原稿料の情報を交換しない傾向にあるので 昨年8000円払って今年7000円にしても 容易にばれないから」

B氏「小さいところはは新人の原稿料は7,000円/1P単価ではないすかね。 紙・電子共通です。 原作ありの場合は5~6,000円/1Pというのも目にします」
大体予想通り。ボクの体感やら見聞もこの通りです。

じゃあ何故「今、原稿料が最高に高い」なんて話がでたのか

当然これも不思議に思えますよね。誤情報を流そうという意図がない限り、どこかでそう感じた理由があったはずです。それについても編集者と話をしてみました。推測は以下のとおり。
A氏「web関連の新人について、IT系が参入を始めた頃は 法外なくらい安い原稿料もあったそうです…ページ5000円とかね。 そういう会社は潰れるなり撤退するなりしてしまい、 現在は雑誌系の新人原稿料にかなり近づいてきてます。ですので
★ここ10年に限る
★web漫画新人に限る
という意味でなら、確かに原稿料は最高に高いのかもしれませんね」

なるほどぉ。
納得するとともに、「出版不況とか30年くらい言ってるけどなんか新規のアイディアないのかね、出版界も」なんて思いました。
出版界にアイディアないのなら漫画家の方が何かを考えなきゃいけない時代に来てるますねえ。

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