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漫画教育を考えよう

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漫画家をやりながら、漫画の専門学校の講師をしています。 大学の准教授をしたり 海外の漫画学校に教えに行ったりしてます。 その中で教育というのを、真面目に考えよう、もっといい教育は… もっと読む
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#私の仕事

ブサメンガチファイターで      ライトノベルのコミカライズを考える

   「小説家になろう」という投稿サイトに掲載されている『ブサメンガチファイター』という弘松 涼さんの小説がコミカライズされている。 掲載誌は「ビッグガンガン」。タイトルは原題のまま、『ブサメンガチファイター』。作者は上月ヲサムさん。 実は上月さんはアミューズメントメディア総合学院でのボクの教え子だった。とはいうものの在学中から非常に上手く、大して教えることもない人でした。 上月さんにお願いしてスカイプで講演をして貰った。演題は ライトノベルのコミカライズについて ボクはオ

日本の漫画とスペインのコミック:手塚治虫と漫画誌『テヅコミ』を巡り出会う2つの世界  を聞きに行く

麹町というか市ヶ谷というか…その中間にあるインスティトゥト・セルバンテス東京に、表題の講演会を聞きに行った。 インスティトゥト・セルバンテス東京というのはスペイン国政府がもってる施設で、スペイン文化やスペイン語の普及のためにある。似たようなものはいっぱいあって、アンスティトューフランセとかブリティッシュカウンシルなんかが、それ。 この日のトーカーはケニー・ルイス、ケン・ニイムラ、カネコ アツシ。 『日本とスペインで用いられてきた伝統的な手法がどのように反映されているかを明らか

海外漫画フェスタにいく

うっk東京ビッグサイトで行われたコミッティアというイベントの一環で行われている海外漫画フェスタ。バンドデシネやグラフィックノベルが安く手に入るのでたまに出かける。 同人誌の方は全く興味なく生きてきたので、どういうことをしてるのかよく知らないが、海外漫画フェスタにフランスの出版社が三社参加していて、それである事に気がついた。 どうぶつしょうぎというゲームはご存じだろうか。将棋の女流棋士、北尾まどかと藤田麻衣子が創案したゲームだ。 北尾のことは彼女が高校生から知ってる。頭の回

フランスからマンガの専門学校について考える3

そういうわけで帰国しましたが、この講座を受け持ったのはボクにとっても勉強になりました。それも大変に。 ボクは日本の漫画の専門学校では通常ないような授業をやっている自信があります。 例えば「アナリシス」。チームに分かれて担当した作品を褒め、相手の作品の悪いところをあげていくという授業。本心とは関係なく議論のために作品を見ていく必要があります。そう、アメリカなんかのディベートの手法を取り入れた講座です。普段クラスメートに訊いても「ああ、いいんじゃない」と曖昧な返事を返したがるも

フランスからマンガの専門学校について考える2

EIMAは三年制の学校ですが、遠くない先に四年制に移行したいらしいです。何故か。 漫画の修行期間として三年は短すぎるから、という理由だそうです。 この学校では二年まではペンの遣い方、漫画の歴史知識、それも含めて日本美術史などを勉強して、本格的に作品をこしらえて売り込むのは三年生になってから…という方針だそうです。 ボクはこれを聞いて何度も思い返して、そのたびに胸が詰まるような思いを感じるのです。大学の研究ならまだしも、漫画を日本美術の流れの一つとしてみる日本の漫画専門学校があ

フランスからマンガの専門学校について考える1

前回の更新から間が空いてしまいました。 前回触れていたEIMAに、実は講師として来ています。 全8日間の日程。 EIMA…… Ecole Internationale du Manga et de l'Animationはフランス南西部トゥールーズという都市のほぼ真ん中にあります。 トゥールーズは国内4番目か5番目の街。スペインへの巡礼路サンチャゴデコンポステーラのフランス側最後の大きな街です。ここから飛行機で一時間足らずでバルセロナに着きます。クラシック音楽好きの人には、ト

マンガの専門学校について考える3

神田・神保町の三省堂書店にいくと著名人の色紙が飾ってある。その中に小学館社長の相賀さんのもあってそこには「自分はギャンブルをやらない、出版がギャンブルだから」みたいな一言が書いてあった。 そうか?出版界って…少なくとも小学館みたいな大手はギャンブルやらないでしょう? マンガの世界で一番のギャンブルは新人への投資だ。惚れ込んだ作品、新人に金をかける。回収できなきゃ沈没…のつもりで。 今の出版業界はそういうことはしない。出版不況というなら商品開発…新人育成にお金かけるべきだろうと

マンガの専門学校について考える2

マンガの技術面もこの10年くらいで大きく変わっている。パソコンソフトの普及がでかい。画材で一番高かったトーンをソフトで使えるようになって、トーンが売れなくなった。10年前230円くらいだったものがいま、320円くらいになっている。みんながソフトに向かったのでソフトの開発もドンドン進んで、積み重ねないとできなかった技術が、ソフトにデフォルトに備わるようになってきた。ペンの練習として奨励されてきたカケアミとかカケナワは、描いたことないどころか名称すらしらない学生がほとんどだ。 昨

マンガの専門学校について考える1

あるマンガ専門学校の教務の人と話する機会があった。それは雑談だったけどそれ故遠慮がなく、いろいろ考えさせられた。 教務というのはクラスの担任だが事務方。プロフェッショナルではないので授業を教えたりはしない(たまに教える人もいる)。教えるのは講師。ボクは講師である。 教務「この間、学校で編集部批評会をしたんですよ」 ボク「はいはい」 編集部批評会…出張編集部などともいうが、漫画の講座のある専門学校や大学へ編集部部員が出向いて人材発掘をするイベントである。出向いて原稿をみるの