見出し画像

その温もりは心に染みる。

食べることが好きだ。
子どもの頃からどんなに調子が悪いときでも食欲が落ちることはなかった。
本能的に、食べることで元気を取り戻そうとしているのかもしれない。

学生の頃から学校にいる時間の楽しみといえば給食と部活だった。
立場が変わった今でも、それは変わらないのだけれども。

どんな食事も元気をくれる。頑張ろうと思わせてくれる。
食事をそんなふうに捉えられる自分は、
他の人に比べて大きな悩みもない幸せな人生を
送ってきたのかもしれないな、とも思う。

そんなポジティブさんな自分も、
当社比では悩んだり落ち込んだりするときもあった。
緊張や不安で気持ちが落ち着かない、そんなときもあった。
そんなときに元気をもらった食事。
真っ先に思い浮かぶのは豚汁だ。

県大会の朝。すぐにでも体が動くように、
まだ眠たい体の温度を上げるため
具沢山でおにぎりとともにかきこんだ。

勉強づけで疲れた夜。試験が近くなり、
不安と焦燥と冬の外気で冷え込んだ体を
いつもより七味が効いたスープが励ましてくれた。

入試の朝。「いつも通りやること」の難しさを
起きた瞬間から感じていた。緊張でいつもより早く
目覚めたとき、待っていてくれたのは
「いつも通り」の安心をくれる味だった。

仕事でヘトヘトになった夜。脳も体も、
休む前から目覚めたときのことを心配するほど
疲弊し切っていた。そんな折れかけた心さえ、
一口飲んだその豚汁は、「明日もなんとかやれるさ」と
支えてくれた。そんな存在だった。

節目節目のタイミングで
下を向きかけた心を受け止め、
立ち昇る湯気のように
上昇気流に乗せてくれるような、
そんなメニューは決まって豚汁だった。

にんじん、玉ねぎ、ごぼう、豆腐、こんにゃく、ネギ、そして豚肉。
みそと出汁にそれらの旨みが溶け合い、
肉から出た脂が優しく包み込むようにまとめた料理。
温かく、優しいその料理は食材だけでなく、
落ち込んだ気持ちに合わせるように萎んだ胃袋にも、
じんわりと寄り添うように沁み込んでくれる。

この4月はスタートから怒涛の2週間だった。
年度はじめでやることが多いのは毎年のことだが、
今年は特に日程が厳しかった。
4月の3日に年度が始まり、
4月7日には始業式で子どもたちがやってくる。
「オープン準備を始めてから5日で客を入れる店がどこにあんだよ!」
と思わず口を荒らしそうになったが、
いくらそんなことを喚いたところで現実は変わるわけもなく。
前年度に比べて任される仕事も増え、
毎日仕事に追いたてられながら、
この2週間を過ごしたのだった。
身も心も疲れ果てた、そんなときに、
ふと「あー豚汁食べたい」と思った。
それだけ、自分にとって求めている食事なのだろう。


食事が好きだ。温まる食事が好きだ。
気心知れた人たちと囲む食卓が好きだ。
どんな食事でも、日々を生き抜く力となる。

そんな身近過ぎて、かつ、偉大過ぎる食事の力を
最も自分に教えてくれたのは、疲れた体が求めている
あの温もりと包容力に溢れた豚汁に違いない。




ハードな年度がスタートしました。
投稿ペースが落ちてきていてまずいなぁと思いつつ
追われる日々から抜け出せない自分がいます。

この余裕のなさは絶対に目の前の子どもたちに
よくないと重々わかっているので、
早く美味しいものでも食べて元気になりたいなぁと
考えていたところ、

お題を発見しまして参加させていただきました。

不思議な力のある料理だと思います。豚汁。
大好きで、自分でも作ってみたことがあるんですが、
どうも違うんですよね。人に作ってもらった豚汁と。
多分人からパワーを込めてもらえないとダメなのかな。
炊き出しの定番なのはそのためか。

近々奥さんに豚汁のリクエストをしてみよう。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
やっぱり書くのは楽しいなぁ。
ではまた。


#元気をもらったあの食事

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?