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「女の子」だったわたしに会おう

そういえば、自分のことがあまり好きではなかった。

幼い頃、父はわたしのことをとてもよく可愛がってくれたのだが、ことあるごとに「男の子だったら良かった」と言っていた。そのことばに傷ついた記憶はないのだけど、自分はどこか不完全な存在という気がしていたように思う。

傷ついた記憶といえば、新聞集金のおじさんに「坊」と言われたこと。
一目見て、男の子と間違えられたことにとても傷ついた。


女の子らしくいたかった。
でも、女の子らしくしちゃいけないと思い込んでいた。
そして、その気持ちは誰にも言えなかった。

小学2年でメガネをかけることになったとき、ピンクよりえんじ色の、よりかわいらしくない色を選びとった。
友達がバレエを習い始めたとき、“そんな女の子らしいことをしたらキャラにあわなくてみっともない”と、自分の興味をおしやった。
洋服は姉のお下がりでボーイッシュなものばかり。もっとかわいい服が着たかったけど、我が家の家計を察し、紺色の服に身を包んでいた(そしてだんだん、紺色の服に馴染んで地味な色に安心するようになった)。


思えば、たくさん勝手に自制して、自分をおさえてきたもんだ。


40代後半になって、明るい色の服を着はじめた。
肌のくすみ対策ではじめたことなのだが

本当は、赤やピンクの明るい色の服が着たかったんだ!
本当は、ヒラヒラのスカートがはきたかったんだ! 

と気がついた。


夏にあった中学の同窓会で。
友人が、当時好きだった同級生にずっと言えなかった想いを告白してスッキリしたと話していた。「焼け木杭に火がついた?」と、からかったりもしたけど、自分の心の奥の奥に、長い間かくしていた真っ直ぐな思いを、解放してあげたのかな、と思った。


いまさらだっていい。
あの頃の自分をときほぐして。

もっと自由に、自分が望んだように、わたしを表現していこう。



子どものころ  工藤直子


ぼくが男の子だったころ
口をまるくあけて わらった
ぼくが男の子だったころ
カエルと身の上ばなしをした
はるなつあきふゆ
はるなるあきふゆ
あの日は どこへいったか

わたしが女の子だったころ
かべにむかって ないた
わたしが女の子だったころ
おおきな翼を もっていた
はるなるあきふゆ
はるなつあきふゆ
あの日は どこへいったか

あの日々に 会いに行こう
「男の子」だったぼくに会おう
「女の子」だったわたしに会おう

もういちど まっすぐ わらい
もういちど しっかり ないて
たくさんの ちいさい自分に会おう

『じぶんのための子守歌』より








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