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竹内栖鳳 破壊と創生のエネルギー展 京都市京セラ美術館2023/10/7〜12/3

 竹内栖鳳(1864〜1942) の初期から晩年まで、代表作を選りすぐって絵画作品が89点(前期展示)、写生帖が25点、絵葉書や愛用の品など参考資料が8点展示されていました。

 どの作品も印刷物やモニター画面からは伝わらない迫力と上品な雰囲気に満ちていて、実物が見られて良かった、と思いました。

展示は前期(11/6まで)と後期(11/7〜)で入れ替えがあり、目録を見ると11/21から展示のものが数点あるようです。

 骸骨が扇子をかざして空を仰ぎ見る「観花」1897(明治32)年は、後期の展示です。私が訪れたのは11/5だったので、見られませんでした。
機会を作って再訪したいです。

 初期の山水画や、渡欧後に描いた風景画、動物を描いた作品、どれも名品ばかりなのですが、
私が最も印象に残って見惚れてしまったのは、
二羽の軍鶏(シャモ)が闘う様子を描いた「蹴合(けあい)」1925(大正15)年でした。
 軍鶏の長く伸びた首、相手に蹴りを入れようと捻った体と、バネのように弾む脚、鋭い鍵爪は写実的ですが、体を覆う羽毛は、細密というよりはボワッとした柔らかい筆使いで、「城址」1924(大正14)年などの風景画に見られる「湿潤な大気」の描き方と同じように見えます。
生き物のからだが持っている「ツヤ」が表現されていました。

 文鳥やインコもそうなのですが、鶏って無表情なのですが、喧嘩する時は、短時間に結構激しくやり合います。その獰猛な感じや、素早く飛び跳ねる様子、バサバサいう羽ばたきの音、甲高い鳴き声などが画面から感じられました。

 最後の展示室にあった「夏鹿」1936(昭和11年) と「雄風」1940(昭和15) 年(虎と棕櫚の木が描かれている) の2点は、省略されてのびのびとした曲線で描かれる鹿や虎の輪郭線と鮮やかな明るい色合いが、画集で見たときは一歩間違うとマンガチックで通俗的な絵になりそうだ、と思っていたものが、本物を見ると、全く印象が違いました。

 アニメーションのように生き物の動きが感じられると同時に、瀟洒な雰囲気が漂う作品でした。

 下絵と並列して展示してある作品が数点あり、「絵になる最初」1913(大正2)年、「惜春」1933( 昭和8)年など、対比が面白かったです。
後から本展覧会の公式図録P104「日本画ができるまで 画材とプロセス」の記事を読み、なるほどという感じでした。

 公式図録の記事によると、竹内栖鳳は幕末の京都に、料亭を営む家に跡取りとして誕生。持って生まれた画才に加えて家族の理解や師に恵まれ、画塾で修行を始めると早い時期から画壇で注目を集める存在になったそうです。

 日本画の様々な流派の技術を融合させたような画風が、「鵺派(ぬえは)」という批判を浴びたこともあったそうですが、むしろそれは、古来の画法に学びながら新しい日本画の表現を目指した栖鳳にとって、自分の進む道を照らした言葉だったようです。
常に日本画壇の中心にあり続け、後進の指導にも熱心であった竹内栖鳳。
 図録巻末の年表を読むと、地位も名誉も得た後も創作意欲は衰えず、晩年までそのエネルギーが保たれていたことがわかります。

 展示作品の一覧表は、スマホでQRコードを読みとり、ダウンロードする方式でした。場内は撮影禁止。
 作品は、お軸や屏風、大型の額が多く、よく鑑賞できますが、生き物の絵はとくに、体毛を描いた線の強弱と、密な所と疎な所の描き分けが見事で、観賞用の双眼鏡などお持ちの方は持参されると良いと思います。

 音声ガイドは600円、LE VELVETS(ルベルベッツ)のテノール佐賀龍彦さんとピアニスト石井琢磨さん。(2022年泉屋博古館、2023年泉屋博古館東京で開催の「木島櫻谷-山水夢中-」の紹介動画と同じコンビ)

 図録は2,970円、青幻社。記事が充実していました。
大きさ257 × 190 × 19 mm,、重さ約780g。図録としては標準的でそれほど大型ではないです。青幻社のホームページを見ると、オンラインショップで購入可でした(2023/11/12現在)。

美術館内にあったバナー
「絵になる最初」の一部
コインロッカーのあるスペース
天井や扉のレリーフが素敵でした

 館内に返却式のコインロッカーがありましたが、あまり数は多くなかったです。

天井が高く贅沢な空間
2023/11/05撮影
京都市京セラ美術館
2023/11/05撮影
夜はライトアップされていました

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