家を引き継ぐ

空き家が増え続けているという現状を憂慮している今日この頃。
もちろん、今に始まったことではなく、そして今日この頃になって思いを巡らせているという話でもない。
私は結婚して5年が経つが、1年目に新婚旅行でスペインに行った。
初めてのヨーロッパ、初めてのスペイン・・・、ガウディをはじめ素晴らしい建築の数々、パエリアをはじめ美味しい料理のオンパレード・・・、と最高の旅行だったわけだが、一番印象に残っているのが、実はバルセロナの街並みだったりする。
19世紀後半に計画的に作られたと言われる碁盤の目状に広がる圧巻の街並み。
街並みだけでなく、一般の住居もその当時の状態を保ち(当然補修は何度もしているだろうが)、今でも人々は住み続けている。
ということは、つまり100年以上もそれらの住居は機能しているということだ。
それは全体の景観を維持するために必要なことであるとは思うが、それにしても日本の住居事情を考えると、一般の住宅で100年以上とはすごいなと思ってしまう。
日本の住宅の寿命に比べると、欧米の住宅は100年前後は住める、という話は随分前から言われていることだ。
人口は減り続けている。
都内(都下)では、少し郊外のエリアで高層マンションや戸建てが建てられ、都心ではオフィスビルの建設計画が止まらない。
戦後の高度経済成長期にバンバン建てられたものが一斉に寿命を迎えているという事情があるにせよ、それにしても今現在の都心の建設ラッシュは異常だと言わざるを得ない。
しかし、日本でも寺院などはとても建築物の寿命が長く、そして美しい。
今一番見たい建物である福島会津のさざえ堂は18世紀後半に建てられたものだ。
今でも内側の螺旋構造部分を人が行き来しても耐えうる状態だ。
素晴らしい技術で素晴らしい建物を作れたなら、素晴らしく寿命が長くなることは各所で証明済だ。
つまるところ、戦後の建設ラッシュは、急ぐあまり雑になっていたということは否めないのではないか。
日本を一秒でも早く復興させることに全精力を注いでいた当時に、日本の建築物を一年といわず何十年も長持ちさせようとする構想は無かったに違いない。
古民家をリフォームではなく、リノベという形で引き継ぐことがだいぶ一般化してきたように思う。
それがオシャレで面白くて心地よい、そんな価値観の変化があるように思う。
企業はともかく人々は、まだ住める、若しくはまだ使える建物は『引き継げる』ということに、気づいたのだ。

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