青色気分なお嬢さん。
「青色なの。」
ある日、お嬢さんは青色に沈んでしまいました。それもそのはず、その日お嬢さんは誤って紅茶(お嬢さんのお気に入りはアールグレイティーでした)ではなく、コーヒーでもなく(お嬢さんはコーヒーの中に角砂糖を落とし、それが溶けていくところを見るのが好きでした)、緑茶でもなく(お嬢さんは茶柱を立てるのが得意です)、ブルーティーを飲んでしまったのです。
ブルーティーは見た目はとても美しく青く透ける氷のような花のお茶です。香りは天気の良い日の爽やかな風のようでした。
しかし、飲むとびっくり。どんな幸せな気分な人でも、たちまちどんよりブルーな気分になってしまうのです。
もちろんお嬢さんはそんなことは知らずになんて綺麗なお茶なんだろうと興味津々でブルーティーを飲みました。
「ブルーもブルーさらにブルー。」
お嬢さんの気分はどんどん深い青色になっていきました。
その様子をキッチンの戸棚から見ていたお嬢さんのアールグレイとコーヒー豆そして緑茶は、お嬢さんの気分をなんとか晴れにしようと、お砂糖瓶に相談しました。
「彼女、間違えてブルーティーを飲んでしまったんだ。」アールグレイが言いました。
それに続いてコーヒー豆がふてくされた調子で、
「だから僕を選べば良かったのに。」とふてくされながら言いました。
冷静な緑茶は、
「まあまあ、コーヒー豆さん落ち着いて下さい。誰だってたまには冒険したくなるものですよ。特にあのお嬢さんは好奇心旺盛ですから。」
と言って、コーヒー豆をなだめました。
「困りましたね。しかし、みなさん揃って何故私のところに相談に来たのですか?」お砂糖瓶は首を傾げました。
すると、アールグレイが
「お砂糖瓶さんの中の角砂糖をいくつかあのブルーティーの中に落として欲しいんです。お嬢さんは角砂糖が溶けるのを見るのが好きですから、それを見ればきっと気分も晴れると思うんです。」と、説明をしました。
「なるほどなるほど…。」お砂糖瓶は頷きながらアールグレイの話に耳を傾けました。
「最初から砂糖やミルクと相性の良い僕を選べば良かったんだ。僕ならミルクと一緒に色だって変えられるのに。」
コーヒー豆は文句を言いましたが、みんな放っておきました。コーヒー豆が小言を言うのは、いつものことなので、みんなすっかり慣れてしまっていたのです。
「どうか私からもお願いします。このままだとお嬢さんはブルーティーの青に沈んでしまうかもしれません。」
緑茶とアールグレイはお砂糖瓶にお願いをしました。すると、お砂糖瓶は
「わかりました。やってみましょう。私がブルーティーの前でわざと転びます。その時に私の中の角砂糖をいくつかブルーティーに落とせるでしょう。」と言い、協力してくれることになりました。
早速みんなはテーブルにいるブルーティーとテーブルの前で座りながら、青に沈みかかっているお嬢さんのところへ行きました。
「私が合図をしたら、みなさんで私を転ばせて下さい。でも、本当に転んでしまうと大変なので、ちゃんと受け止めて下さいね。」
そう言うとお砂糖瓶はブルーティーの入ったカップに近づいていき、みんなに合図をしました。
お砂糖瓶の合図で、アールグレイ、コーヒー豆、そして緑茶はお砂糖瓶を後ろからブルーティーめがけて押しました。
その勢いでお砂糖瓶は中に入っていた角砂糖をいくつかブルーティーの中に落とすことに成功しました。もちろん本当に転びそうになる前にみんなが倒れかけたお砂糖瓶をすかさず倒れないように支えました。
ブルーティーの中でゆっくりと溶ける角砂糖は、少しずつその形を変えながら、お嬢さんの気分の色も変えていきました。
さらに角砂糖が溶けるにつれてブルーティーの青が少しずつ透明になっていきました。お嬢さんの気分も少しずつ青色から透明に移り変わっていきました。
気がつくとお嬢さんはテーブルに突っ伏して寝てしまい、やがて目を覚ますとカップの中の透明な液体に映る自分の微笑みに溢れた顔を見つけました。
Y△MiY△Mi
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