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雪に埋もれる記憶と足跡。猫とインク。

ある湖の辺りにひとりの女の子が住んでいました。

その湖の周りはまるで月面のようにデコボコしていました。さらにその土地は年中、雪が降る場所だったので、歩くたびに地面に足跡ができました。

しかし、その足跡は次々に降る雪に埋もれてしまい、すぐに消えてなくなってしまうのでした。

昨日つけた足跡が、次の日にはもう雪に埋もれて消えてしまう土地に住むその女の子の記憶も、それら足跡と同じようにすぐに埋もれて消えてしまいました。昨日読んだ本のタイトルも、天気も、食べたお菓子も、空の色も、聞こえてきた素敵な音の記憶も全て雪に埋もれてしまいました。

女の子にとって、毎日記憶の足跡をつけては、次の日には足跡が消える生活はごく当たり前のことで、困った事といったら友達である猫の名前が埋もれてしまうくらいのことでした。

猫にとっては、毎日自分の呼び名が変わるのは少し困った問題でしたから、猫は自分のしっぽにペールブラックのインクをつけて、背中に自分の名前を描き、毎日女の子の記憶に足跡をつけました。そのおかげで、猫は毎日女の子から違った名前で呼ばれることがなくなりました。

今日もその湖の辺りには雪が降っています。そして、地面にできた足跡も女の子の記憶も毎日埋もれていきます。自分の名前が水滴や寝転んだ時の摩擦で消えそうになると、猫はまたしっぽにインクをつけて、名前を書き直します。

今日はただの今日で、過去は雪に埋もれる。それだけのことです。
毎日埋もれる記憶と足跡の中で、女の子と猫は何も思い煩うことなく、今日をただ今日として過ごしています。

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Y△MiY△Mi

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