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____とおぼえ

              
おれは柵を飛び越えた。そこまでは勢いよくできるものだ。そして、そこ知れぬ不安と、微妙な期待が襲ってくる。
                            
現実世界に何かを望んだおれが馬鹿だった。誰も彼もがおれに劣等感を植え付ける。その劣等感は自分を勝手に蝕んで、精神に反吐を突きつけ、心臓に針を突き立てた。
最高だった思い出はない。おれはだからこそここに来ることができた。ここに来てそして、最後の一歩というところまでやってきた。
                                                                
                                                        
何だか自分の心の中にもう一人の自分がいるようだ。足元のコンクリートが歪んでいる。急に我に返った。おれは何をしている。おれはどうしてここにいる。どうしてこんなことをしようとしている。
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おれは自分のことを考えた。自分の生き様を考えた。苦しいほど考えた。寝る間を惜しんで考えた。その結論がこれだ。もう二度とあんなところには戻りたくない。
                        
おれに話しかけているのは誰なのか。おれには分からない。ただ分かるのは、彼はおれのことをよく知っている。
                  
目の前が霞んだ。おれは赤ん坊のように声をあげて泣いた。助けて、と今までは暗示することしかできなかった。今おれは叫んでいる。遠吠えのように。仲間がきっとこの先に、いると信じている。
                                   
            
涙のレンズに映った夕焼けがおれだけを見ている。やっとおれはここに存在したんだ。おれはやっと見てもらえたんだ。
                   
おれは  最期の空を翔んだ、        

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