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ちゃんとした案件

よく担当の方から「すみません、こんなちゃんとしてない案件で…」「次は、もっとちゃんとした案件をお願いできるように頑張ります」というコメントをいただく。私のような一介のフリーランサーを相手にお気遣いを頂き、たいへん恐縮です。ホントありがとうございます。…でも、そもそも『ちゃんとした案件』って何だろう?と、時々考える。

今までの自分自身の体験や、記事等でよく目にする理想形を集約して、そこから想像するに、『ちゃんとした案件』の条件を列挙すると、こんな感じだろうか。

・クライアントの趣向やプロジェクトゴールが明文化されている。
・ブランドコンセプトが明確に存在している。
・ターゲットユーザーやユーザーニーズを的確に掴んでいる。
・要件定義されたものが最後までブレない。
・クライアント側のプロジェクト責任者に、ほぼ全権が任されている。
・上申までの間に、クライアント社内の根回しが整っている。
・真の意味で「パートナー」であり、共創意識が高い。
・プロジェクトメンバーの大半が「デザイン思考」を心得ている。
・プロジェクトの価値がクライアント社内で正確に認識されている。
・情報設計の精度が高く、作り込まれている。
・インターフェースが煮詰められている。
・開発側と実現可能性についての確認が取れている。
・精緻なデザインガイドラインがある。
・スケジュールは余裕があり、所謂「オンスケ」で進行している。
・フィードバックが明瞭かつ的確。
・アジャイル開発の熟練者が揃っている。
・プロトタイプやベータ版でユーザーテストを繰り返すことができる。
・予算が潤沢。

条件を1/3ぐらいまで書き出した時点で既に『ちゃんとした案件』のように思えたけど、実際は上記の半分をクリアしていれば、この先のキャリアにも影響する、素晴らしい事例になるのではないかと思う。

自分もプロジェクトの初期から参加し、クリエイティブディレクターのように立ち振る舞う場合は、上記の条件を少しでもクリアできるように努力する。しかしその反面、プロジェクト途中からデザイン作成業務のみに参加した時に、"完璧" に近いほど環境が整備されていたとしたら、工夫の余地をほとんど見つけられずに、つまらない案件のように感じてしまうと思う。

結局の所、最初から『ちゃんとした案件』なんてものは存在しないんだと思う。例え最初は混沌としていたとしても、様々な専門家が入ることで、最終的に『ちゃんとした案件』になることを目指すしかない。むしろ、その方がキャリア的にもありがたいし、苦しいけど楽しい経験もできる。

そして、その『ちゃんとした案件』がユーザーに提供され、価値を感じてもらえれば、造り手としては嬉しい限りだ。

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