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読書録:人権と国家

筒井清輝『人権と国家』(岩波新書)
人権とはなにかを考える機会は小中高を通して設けられていたが(公民と道徳の授業)、自分が受けてきた人権教育を振り返ると、肝心な「人権とはなにか」については教わらなかった気がする。
本書は人権と国家の関係を論じた本である。本書は4章構成で、3章を使って西欧諸国における普遍的人権の確立と保護の過程をたどり、最後の1章で日本における取り組みを評価する。内容的には普遍的人権の保護の歩みにページが費やされているわけだが、こうした歴史的な部分は今まで学んだことがないため興味深く読めた。普遍的人権が確立されるには紆余曲折があり、その後も二度の世界大戦や米ソ冷戦の中で他国における人権の保護(民族浄化の阻止など)が政治的に利用されることも多かった。
さて、意外と知られていないのが、本書第4章で触れられている、日本が国際連盟発足に際し、人種差別撤廃を唱えていたことだ。当時、主要国の中で唯一の有色人種国だった日本には、これを訴える正当な理由があり、賛同する国も多かったが、結果的に植民地を多く抱えるイギリスと多民族を有するアメリカがそれを潰してしまったのだった。
人権について議論する場合、まず最初に読んでおきたい本である。


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