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地方自治体立博物館の実態

私の現在の勤務先は(休職中だが)博物館である。今回は、地方自治体立博物館の現状を、勤務先の実態を基に書いてみる。全国の地方自治体立博物館が同じではないだろうが、SNSでやり取りしていると、似た問題を抱える博物館は多いようだ。
地方自治体立博物館の多くは昭和後期に建てられていて、設備の大規模改修が必要な時期に差し掛かっている。私の勤務館も例外ではなかったが、昨今の財政難のなせる業か、なかなか設備改修の予算が通らなかった。結局は認められたようで、私の休職後に3ヶ月かけて設備改修を終わらせたようだが、資料に問題があっては遅いのに、なぜ設備改修費を出し惜しむのだろうか。

収蔵資料の適切な維持管理のため、
博物館・美術館は定期的なメンテナンスが必要。
京都市美術館もそのために長らく休館していた。

正直なところ、財政部局には不信感しかない。博物館は入館料や体験学習費など、ある程度収入があるが、それで運営を賄えるには程遠い。地方自治体立博物館では、国立博物館のような大型館と違って、大々的に人を呼べる展示を開催できない。これは学芸員の腕の問題ではなく、館の規模と予算、「地元と関係のあるテーマでないと開催できない」という暗黙の縛りのせいである。したがって、大河ドラマなどのムーヴに乗っからない限り、人を呼ぶのは難しく、特別展を開催しても来館者が増えない原因になっている。

博物館が開催できる展覧会は、
施設の規模と予算に左右される。
国立博物館級の展覧会を
地方自治体立博物館に求められても無理。

元々、公立博物館は営利を出してはいけないと博物館法に規定がある、入館料は原則無料、徴収する場合も必要最低限の額になる。地方自治体立博物館の多くが高くても500円程度で観覧できるのはそのためである。そのような状態では赤字になるのは必然で、運営費の多くは自治体予算からの持ち出しである。財政部局は「人を呼ぶ努力を」と言うが、人員削減、展覧会費削減が続く中でそんなことできるわけがない。人を呼ぶには広報担当職員の新規配置、ワークショップ等に対応できるよう学芸員を増やす、観光部局との連携強化、特別展開催予算の拡充が必要だ。
博物館と図書館は生涯学習の両輪とされる。しかし、両者で扱いの差が激しい。博物館は自助努力を求められ、図書館は全額公費で賄われる。どうも財政部局は博物館をイベント施設と思っているようである。このあたりの理解のなさにうんざりする今日この頃である。


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