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月経をめぐる雑感

NHKスペシャルの『ジェンダーサイエンス』第2週「月経」を録画で観た。月経そのものは別として、それに伴う生理痛などは女性が不当に背負わされたスティグマのような気もするが、男の私には理解できても実感が湧かない。以下、いくつか思ったことを書いていく。

 1
月経にはライフサイクルも大きく関係しているようで、栄養状態が大きく改善した先進国では成長が早まっているのか初潮が早くなっているらしい。一方で、晩婚化や経済状況による出産回数の低下で月経の回数が増え、それに伴う生理痛その他の悩みも増えているようだ(妊娠・授乳中は月経が止まったり緩やかになったりする)。

 2
月経についての相談をしづらいという意見がある。女性同士でも個人差がある中で、男性に相談しづらいのはわかる。一方で、男性の方は思いやろうとしても知識の欠如のほか、下手をするとセクハラ認定されかねず、慎重にならざるを得ない現状がある。これはけっこう由々しき問題で、女性の働き方に大きく関わってくるのだが、性にまつわる現象をタブー視して日常会話から覆い隠してしまった近代以降の価値観(性教育にも影響を与えている)、セクハラ認定の緩さが影響している気がする。前者は男女を問わず適切な配慮の妨げになり、後者は一部の声高い女性のせいであるが、男性側が自衛を重ねて、女性に対して無関心でいざるを得ない状況を作り出している。それに加えて同性間でも無理解があり、そんな状況では月経・生理に関する社会の理解は進みそうにない。

 3
『古事記』の倭建命の段に生理の話題が出ていて、上代には月経や生理の話題がタブー視されていなかったことがわかる。その後、平安時代に入るとケガレ忌避観念の肥大化の過程で女性の月経=流血がケガレとされ、神事の場から女性が排除されていく。これが霊山における女人禁制の理論づけにもなり、民間では忌小屋を建てて月経期間中の女性を隔離するようになる(ケガレは火によって伝染するとされ、ケガレを持つ者は調理の火を分ける必要があった)。
好意的に解釈すれば、霊山の女人禁制は異性が修行の妨げになるゆえの排除、忌小屋は生理中の女性へのいたわりとなるが、先に述べたケガレ理論に覆われてしまい、実態が見えなくなってしまっている。

以上は番組を見た一人の男の所感である。誤解もあると思うが、ご容赦を。

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