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読書録:社会主義前夜

中嶋洋平『社会主義前夜』(ちくま新書)
資本主義と対立する概念として取り上げられる社会主義。このあたりはワイの守備範囲外で詳しくは知らないのだが、私有財産の否定が社会主義の特徴と言える(社会主義と共産主義は同一概念なのか別の概念なのか……)
社会主義を唱えたのはマルクスとエンゲルスが有名だが、その原型となる思想はフランス革命直後の19世紀初頭に存在した。その、社会主義の原型(仮に初期社会主義と呼ぼう)を唱えた3人の思想家、サン・シモン、フーリエ、オーウェンについてまとめているのが本書である。
サン・シモンとフーリエはフランス人、オーウェンはイギリス人である。このうち、オーウェンとフーリエに僅かな接点がある程度で、3人に交友関係はない。にも関わらず、同時期に3人もの人物がよく似た思想を唱えたのは驚きである。共通点を挙げるとすれば、3人とも裕福であった点だが、世襲貴族だったサン・シモンだけ境遇が異なる(あとの2人は実業家)。ともあれ、注目したいのは、3人ともフランス革命の荒波を基にして、初期社会主義の理論を打ち立てたところだ(オーウェンの場合は伝聞だが)。
この3人の思想は、後にエンゲルスによって「空想的社会主義」と呼ばれるようになる。おそらく、3人の理論が理想主義的すぎることがそう名付けられた所以だろう。マルクスとエンゲルスは自分たちの理論を「科学的社会主義」と読んで先の「空想的社会主義」と区別しているが、この2つはそれぞれ独立しているわけではなく地続きなのである。
本書は社会主義について勉強するのに有益な手引書といえよう。


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