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歴史の小箱

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自作記事のうち、歴史に関わるもので特に読み応えのありそうなものをまとめました。
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2023年7月の記事一覧

即身仏と土中入定

即身仏と土中入定

大学生の頃、それについて書かれた本を偶然読んで、即身仏に関心を持った。死体を保存する文化がない日本で、なぜ生身の肉体を崇める信仰が発生したのか。そしてまた、なぜ死を目的としたとも言える苦行の末に自らの肉体をこの世に留める選択をしたのか。いろいろ興味は尽きないが、今回は土中入定に焦点を絞りたい。

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吉野ヶ里遺跡の石棺墓についての雑感

吉野ヶ里遺跡の石棺墓についての雑感

吉野ヶ里遺跡の石棺墓が話題である。
吉野ヶ里遺跡は佐賀県にある弥生時代を代表する集落遺跡で、「クニ」の中心的な集落の全貌や、弥生時代700年間の移り変わりを知ることができ、日本の古代の歴史を解き明かす上で極めて貴重な資料や情報が集まっている。そのことから国の特別史跡にも指定されている。
吉野ヶ里遺跡では、遺跡内にあった神社が移転したことを契機に、昨年から旧境内地の発掘調査を実施している。令和5年度

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藤原鎌足と多武峰と阿武山古墳

藤原鎌足と多武峰と阿武山古墳

藤原氏の祖、中臣鎌足は669年、56歳で薨去した。墓所は定かでないが、『日本三代実録』天安2年(858年)条には「藤原鎌足の墓である『多武峰墓』を十陵四墓の例に入れる」という記述があり、平安時代中頃の成立と見られる『多武峯略記』などに「最初は摂津国安威(現在の大阪府茨木市大織冠神社か)に葬られたが、後に大和国の多武峯に改葬された」との説が見える。一方、『藤氏家伝』の記述に基づき、鎌足の墓は京都市山

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