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タイトル未定、そして未完成。

5年前に執筆途中の作品を目にし、ちょっと続きを書きたくなっています。
今後の展開、やんわり「こうしよう」はあります。この先、どうなるか…。
もしお読みになって「こういうのはどう?」みたいなことを思いつきましたら、メッセージくださると嬉しいです^^



オレの名前は内藤九太朗。自分で言うのもなんだけど、運動はできるし勉強も得意だし、文武両道の花も恥じらう一四歳だと思うわけ。ケンカだって弱くないと思うぜ。やったことないけど。好き嫌いもないし、人間関係も良好、全然まったく問題のない中学生ライフを送っていると思う。…うん、たったひとつをのぞけば…。
 
「なー、キュウ、オレまた聞いたぜ。」
「え?なにを?」
今話しかけてきたのは、オレのクラスメイト。今後そんなに出てくることはないと思うので、存在は気にしなくていい。あ、ちなみに“キュウ”って言うのはオレのあだ名ね。九太朗だから。
「ほら、この前言ってた町はずれの空家だよ。あそこにさ~…、出る!って話…。」
意気揚々と語るそいつの前で、オレは即座に呆れ顔を作った。
「なんだよ、またその話かよ。くっだんねぇ~。」
「あーもー、お前はな~、夢がねぇんだよ夢が。」
「幽霊話に夢もあるか。興味ないね、オレ、リアリストなの。悪ぃ、今日店の手伝いだから帰るわ。」
「…チェッ。お前、いつか絶対一緒に行ってもらうかんな~!」
「へいへ~い。」
そう言うと、オレは鞄を肩にかけ、小走りに教室を出て、急いで帰り道の商店街に出た。そして心の中で、今にも口に出してしまいそうな勢いでぶつぶつ不満をこぼす。
 …じょうっだんじゃない。ぜったい行くもんかよ。何を隠そう、オレは大大大大大の怖がりなんだ。でもそんなことがバレたら、連中はおもしろがって何が何でもオレを連れてくに違いないからな。ぜったい秘密なんだ。バレてたまるもんかよ。ぜったい隠し通すからな。
「お、キュウじゃん。」
「…あ?………ゲッ!」
急に話しかけられ、声の方向にオレが顔を向けると、そこにはまたまた、ただの脇役であるクラスメイトたちがいた。
「…お前らなにしてんだよ。家こっちじゃねぇだろ。…まさか、お前らもあの空家に行こうって企んでんじゃねぇだろうな。」
「ほー、話が早い。オレたち、今夜行こうぜって話してたんだ。せっかくなら夜の方が盛り上がんだろ~。だから今のうちに飯行くとこ。」
 ほーら…、オレの“ゲッ”は大当たりだろが。怖がりってのは妙にここら辺のアンテナが利くもんでね。
「おい、キュウ。お前も行こうぜ。もしさ~幽霊がいたらみんなでとっ捕まえてやろうぜ。」
…だから、じょうっだんじゃないっつってんだろ。
「…あ~悪ぃんだけどオレオヤジの手伝いがあんだよね~ざ~んねん行きたかったんだけどな~断るとうっせーからよ~なっはっはっはっはっは。てなワケでさよならああああああ…!!!!」
ひと言でまくしたてると、オレは商店街の脇道に入って全力疾走した。…あ、でもやべ、こっち帰り道じゃなかったな…。
脇道を抜けた先のじゅうぶんに安心を得られる距離まで来ると、オレは前かがみになって息切れした呼吸を整えた。
「……あーーー、疲れた………。…ったく…!どうしてどいつもオレを誘うんだよ!もう、ほんとに放っといてくれ…。」

勢いよくそうひとりごちていると、整いかけていたオレの心拍数が、再び一気に上昇した。
 …こともあろうにオレは、先ほど教室で話題になったあの、“空家”の前に辿り着いていたのである。
…ああ、ちくしょう、ふだんならこんなミス絶対しないのに。あいつが空家の話なんかするからだ。ったく、明日覚えてろよ…。いや、それよりもさっさとこんなところずらかった方がいい。…とは言え、商店街には戻りたくないしな…。…よし、少し気が引けるけど、この家の裏手に回ってそこから回り道して帰るか…。
本来ならすぐにでも来た脇道に戻りたかったオレだが、意を決して空家の前に恐る恐る足を踏み出した。
…な、な~に、大丈夫だ、あんなのただの噂だ。噂って言うモンは昔から噂で終わるって言うしな…。え?違う?…いや、今は国語の勉強をしてるヒマはないな…。
…ほうら、入口前まで来たけど何もないだろ?よしよし、いいぞいいぞ、もうすぐ裏手に出る。入口を越えた!あと少しだ、もうそこだ、ほうら、何にもなかっ…。
「ばあ!」
「うっうぎゃぎゃぎゃわあああああ…!!!!!」
世にも変なポーズと奇声を上げて、オレは何歩も飛び退いた。
「出たーーーーーっ!!!!嫌だ嫌だ幽霊怖いあっち行け悪霊退散もおおおおおお~~~~~っ!!!!!」
力強く目を瞑り、滝汗でピシャリと固まるオレ。
「…お兄ちゃん、何してんの?」
「………へっ?」
恐る恐る閉じていた目を開けると、飽きや入口の隣の窓から、小学生と思われる少年が顔を出していた。
「………お、おまえ、人間……?」
おっかなびっくり、オレがそう聞くと、少年は呆れ顔で、窓から大きなため息を吐いた。
「その質問、本気?」
「…まっ、まままさか!冗談に決まってんだろ。ちょっとおもしろかっただろーが。笑ってもいいんだぞ。」
ものすごく取り繕ってみたけど、少年はオレに冷ややかな目を向けるだけだった。
「…な、なんだよおまえ…。その家で何してんだよ、そこ、空家だろ?…おまえもアレか?幽霊がいるか冷やかしに来たのかよ。」
「そんな子供みたいなことしませんが。」
「いや、どう見ても子供だろ、おまえ。」
「お兄ちゃんめっちゃ怖がりなんだね。」
「ハッ!?…おおお、オレのどこが怖がりなんだよ!」
「いや、バレバレだから。」
そう言うと少年は、ニヤリと嫌な笑みを浮かべた。…うわ、いや~な予感…。
「ねぇ、ちょっと中に入らない?」
「誰が入るもんか。幽霊なんか怖くないけど、万一にでも祟られたりしたら嫌だからな。」
「何もいないよ。実証済み。」
「嫌だね。てかおまえそこで何してんだよ?」
「入って来たら教えるよ。」
「じゃ、いい。」
「来てくれないとお兄ちゃんが怖がりって言いふらすけど。」
「ぐぬっ…!!」
…なんてガキだ。オレが怖がり隠してることに勘づいてやがる。そんなことされたら、オレはクラスの連中に、ぜってー心霊スポットなんかをツアーのごとく巡らされるハメになる。それは困る。絶対困る。断固阻止せねば。…ここでいっかいガマンすればいいだけのことなら…。
オレはグッと唇を噛みしめてから、少年に言った。
「…そんなに言うならなぁ…、しっ…かたねぇなぁ…。いい…今行ってやるよ…ちょっと待ってろ…。」
そう言うと、オレは空家の入口の方に向かって、鉛のように重い足を踏み出した。少年に念を押してから。
「いいか、別に恐がりでも何でもないし、バレて困るようなことなんてひとつもないけど、あんまりにもおまえが言うから行くんだからな!」
「はいはい、わかったから、さっさとこっち来てくんない?」
…おかしい。完全にオレが下に見られている。非常に解せない。…ま、いいさ。今後のオレの明るい未来のために、今のオレよ、踏ん張れ!
 自動的に流れてくる滝汗を止められるはずもなく、オレは空家の入り口の扉に手を掛けた。ギギィ…と、いかにも「空家です」と言う音がして、扉が開く。

 中に入ると、薄暗い建物のあちこちには蜘蛛の巣がはっていて、けっこう年季の入った空家だと言うことがうかがえる。
「…あ~、も~嫌だこの雰囲気、すでに嫌だ…。てか、アイツどこにいんだよ…。来いって言ったヤツが迎えに来いよな~も~…。」
 ぶつぶつ言いながらも、オレは家の中へ足を踏み入れる。床は埃だらけで、靴を脱ぐ気にもなれなかったオレは、少しの申し訳ない気持ちとともに、土足で玄関をまたいだ。
 …この家、外からだとそんなに広く見えなかったけど、玄関から正面と左右に廊下が3つ伸びていて、けっこう広い造りになってるっぽい。お化け屋敷なんて当然のごとく入ったことがないオレだが、入ったらきっとこんな感じなんだろうな…。
「…おい、どこにいるんだよ、出て来い、少年!…お~い…!」
呼びかけたが手応えの無さを感じ、今にも引き返したい気持ちでいっぱいになった。
「…なんで来ねぇんだよ…。なんなんだよも~…!」
不満が募る中、オレは正面にある廊下を選んで、恐る恐る進むことにした。…アイツ、窓から帰ったりとかしてねぇだろうな…。てかほんと、何で出て来ねぇんだよふざけんなよ!ホラーゲームの探索じゃねぇっつーの…!
 怒りと恐怖が入り交ざった感情を抱えながら、廊下を奥へと進んで行く。左右にはそれぞれの部屋に続くふすまがあったが、到底開ける気になどなれるわけもなく、オレはただ、ひたすら暗い廊下を前に進むことしか出来なかった。…作りものじゃない分、お化け屋敷よりタチわりぃんじゃねーのこれ…。オレは数分前の自分の決断にひどく後悔を覚えた。
 
 

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