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思い出のモノは自分にだけ価値がある【短編エッセイ】


ガザガサと部屋を片付けていると、ゲームボーイやDSのゲームカセットがたくさんでてきた。

昔のものを見つけた時は、懐かしいな!と1人でテンションが1段階あがってしまう。そして数々のことを思い出すのだ。

このゲームをやってた時に、友達とケンカしたなぁ…
これはお母さんにねだり散らかして買ってもらったなぁ…

大切に、そして大事に扱っていた昔のものを見ると思い出が蘇ってくる。もう20年前のことだろうか。

確かに自分は小さい頃から存在をしていて、ここまで成長をしてきたのだと、推定3センチくらいの電子機器からでる情報を指先から読み取って、満遍なくしみじみとしている。

忘れられない想いが程よく詰まっているが、もうこのゲームをやることはないし、僕には必要がないだろう。

ちょうど、鑑定団に行く予定があったので、まとめて売ることにした。

箱に詰めた僕の思い出たち。成長した証。支えてくれてありがとう。僕は君たちを忘れない。そして君も僕を忘れないでくれよ。いつまでも、いつまでも。


「ゲームカセット35点で、500円ですね」

鑑定団のスタッフが淡々と答える。

「え?500円…ですか?」

「はい、まとめてそのお値段です」

どこにでもありふれたものは、何も価値はない。鑑定団のスタッフは、早く決めてくれよと言わんばかりに指先をトントンと一定のリズムで打っている。

思い出は500円に変わった。

なんとなく心はモヤっと曇り空だが、僕の家の物は少しだけスッキリしたのであった。

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