写真家の私がセミナーでお金を取りたくない理由
こんにちは。山岳写真家の山写です。
登山と写真で仕事をしている人。の中の人です。
フォトグラファーが行うセミナーは現在ものすごい数がありますよね。体験談であったり、ファンミーティングであったり、ノウハウの共有であったり。
私も去年から山岳写真のセミナーをはじめ、すべて平日開催なのに毎回100人以上のキャンセル待ちの状態になってしまい、ありがたさ半分申し訳無さ半分という気持ちです。
CP+でもBenQとNiSiさんのブースで山岳写真についてお話させていただきました。
さて、私が行う写真のセミナーですが基本的に料金を頂いていません。撮影機材のプロショップの銀一さんで行ったセミナーに関しては予約システムの都合上ドタキャン防止のため1000円(そのかわり1000円のクーポンチケットになる)かかってしまいましたが、それ以外はすべて無料です。
それでもセミナー受講者のためにできる限り技術を会得していただきたいので教科書を自分でデザインし印刷してお配りしています。
ではなぜセミナーであまりお金を取りたくないのかというお話をしたいと思います。
セミナーは写真家が稼ぐ場ではなく、ユーザーを増やしたり業界を盛り上げる場
まず私達写真家は写真を愛する人達、写真を必要としている人たちおかげで生計を立てられています。
そして近年、写真の市場はどんどん小さくなっています。コンデジを含めるとカメラ全体の生産台数は10年で1/10になり、今後もカメラの売上は毎年10%ずつ落ちていくと予想されています。
カメラが売れなくなってしまえばメーカーは事業縮小するのも当然の流れ。広告予算も少なくなります。例えばそこで製品PRする写真家のお仕事がなくなります。
さらに写真のコンテンツがどんどん少なくなっていき写真の価格が下がっていき、写真家という職業の価値がなくなっていきます。
そうなると私達は写真を撮ることで生活することができなくなってしまいます。
よって私達写真家は自分のお仕事も大事なのですが、写真やカメラが好きな人も増やしていかなければいけません。
これは業界のためでもあり、自分たちのためでもあります。
そのためにカメラ初心者や、これから山で写真を撮ってみたい人たちでも気軽に参加でき写真の魅力を知ってほしいという考えからセミナーは現在無料で行っています。
高額にするとユーザーが限られていく
市場がシュリンク(縮小)するとユーザー数が減ってしまうため残ったユーザーにいかにお買い物をさせるかの戦略にシフトします。
よってセミナーで生計を立てようとすると少ない参加者でも運営できるようにしないといけないため、どんどん高額になっていきます。
受講者を獲得するために写真家が情報発信力のあるプラットフォームに登録することもあるでしょう。そうなると手数料が発生してより高額になっていく可能性だってあります。
私が行うセミナーは山岳写真や色彩学という特殊なものなので、もしかしたら1人5000円でもたくさんの受講者を獲得できるかもしれません。そうだと嬉しいな。
でもそれをやってしまうと、はじめてカメラを手にした人、これから一眼レフやミラーレス一眼を買って写真を楽しもうとしている人たちには届かないものになってしまいます。
繰り返しになりますが私達写真家は写真愛好家の方のおかげで生計を立てられています。
ですので愛好家を増やすために、写真の魅力を伝えるコンテンツに関しては初心者の方が気軽に参加できるものにし、多少身銭を切ってでもカメラ業界や登山業界が盛り上がってくような流れを作っていくべきだと考えています。
セミナーは写真家として勝負する場ではない
まず最初に私は写真を撮り、販売することで生計を立てています。日本では珍しいタイプなのかもしれません。
現役で最前線に立っていると2年前の技術はもう通用しないなんてことはよくありますし、基礎技術は昔から変わりませんし。誰かに教えたからといってすぐに習得できるわけでもありません。
ほとんどが調べればわかることであったり、数年のうちに過去の技術になってしまうものなんです。
なので技術をばら撒いてもまったく抵抗がないのです。赤字にならない限りいつでもどこでもお話していいものだと思っています。
セミナーは写真家が本腰を入れて取り組むようなものではない気がしています。受講者の人もセミナーばかりやってるフォトグラファーよりも現役で最前線にいる人のお話の方が聞きたいのではないかなと思います。
写真家は教えることの専門家ではない
これがあまりお金をいただいてはいけないなと感じている最大の理由。
私は人に技術を教える専門家ではありません。素人です。
経験やノウハウはありますがそれを多くの人に正確に伝え、その人の技術を向上させるような勉強をしていません。
本業は写真家と研究を複合したものであり大学で講義(主に研究者や事業者に対して)もしています。それもあって人に何かを教えることの難しさは痛感しています。
たとえばアカデミックのトップランナーである大学教授の授業の1コマは2000〜3000円で受けることができますし、私が個人的に写真の技術本で優れている思っているナショナルジオグラフィックの教本も3000円くらいです。
セミナーで手を抜くことはしませんが、それでもそれと同等の価値を提供できるかと考えたら、今の私には不可能です。
世の中には写真を教えることに特化したレッスンプロの方がいます。対して私はただ写真を撮っているだけ。写真家の多くは私と同じポジションだと思います。
受講者が支払う金額に見合う内容のものでなければビジネス的にもフェアではありません。
撮影技術をできるだけロジカルに解説し、誰にでも扱えるようしたいということもあり、セミナーのスライドや口頭でお伝えできないことをすべて教科書にしてお渡ししています。
赤字にならない程度に頑張るスタンス
そんなわけで私に関してはセミナーは写真の楽しさを伝えたかったり、もっとカメラを手に取る人が増えたらいいなという想いでやっているため特にマネタイズは考えていないのです。
とはいえあまりにも赤字続きになると先細りして継続性がなくなってしまうので、少しだけメーカーのプロモーションを組み込んだり、noteの収益をそこに当てがっています。
現在の教科書は46Pフルカラーで1冊1000円以上の印刷費がかかるため非常に助かっています。
noteで少しお賃金を頂いているのはすべてがテキストであり、セミナーのような口頭での説明ではないので、ある程度の品質が担保されているからです。
その上でこの価格ならお値段以上のベネフィットを提供できるという確信を持って販売しています。ご興味のある方はぜひご購読ください。
あまり頻繁にセミナーはできませんが、今後も山岳写真にご興味のある方を対象に継続していきたいと思っています。
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