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姿勢 寝姿勢

ヒトは、二本足で直立して歩くために、カラダを進化させてきた動物ですが、地球重力の強い力の上に立っていると、どうしても疲れが溜まっていきます。
カラダの中身の約60%を占める水分が、下へ下へと引っ張られているため、それを重力に逆らって上昇させようと、絶えずポンプを動かして仕事をしている必要があるからです。
全身にある37兆個もの細胞一つひとつに対して、カラダのポンプシステムは、血管ネットワークを通して酸素や栄養を供給しています。
そしてヒトのカラダのテッペンには、体重の2%程度の重さしかないにもかかわらず、全身の20~25%もの酸素やカロリーを消費する、大飯食らいの器官=“脳”が鎮座ましましており、下々のものたちはそこにせっせと血液を上納し続けていかなければなりません。

そのためカラダは時折、その丸ごとを重力に無抵抗な形にして、水資源を各所に配給しやすくするため、寝姿勢をとることを欲します。
接地面から水分を持ち上げる高さが150cm~180cmもある立ち姿勢と、せいぜい20~30cmの寝姿勢では、ポンプに必要な仕事量が6~7倍も変わってきます。
また寝姿勢のままゴロゴロと転がれば、体内の水分は自然にあちこち移動します。
以前姿勢の章の最初に書いた通り、「姿勢は重力に対するカラダの応答行為」なのだということが、このことからもわかると思います。

ヒトの寝姿勢を大まかに分類すると、
1. 仰向け
2. うつ伏せ
3. 横向き
の3つの形があります。
これは、夜の睡眠時でも、昼寝をする時でも、一時的に横になって休む時でも同じです。

ではこの3つの寝姿勢のうち、どれが良い姿勢なのか?
立ち姿勢や座り姿勢と同様、様々な方々がそれぞれの寝姿勢論を述べていますが、整体的に言えばここでも「特定の正しい寝姿勢はない」というのが正解だと思います。
ヒトのカラダは動くことで、血液などの体液が隅々まで循環する仕組みになっており、逆に一つの姿勢でじっとしていては、循環システムがうまく機能しないのです。
長時間同じ姿勢で寝ていると、体液の分配機能が妨げられてしまう上、床や布団に接している面の皮膚が、圧迫による障害(床ずれ・褥瘡)を起こす原因にもなります。

睡眠時には意識的にカラダを動かすことはできませんが、無意識的に寝返りを打つことで、血液や体液をカラダ中に行き渡らせる働きが起きています。
体内の特定の場所に体液がたまりすぎると、水位センサーが働いて、その部分を上側に持っていき、重力の力でカラダの中に混ぜ合わせます。
まるでコンクリートミキサーのような水分攪拌機能と、オートセンサーで現在の状態を察知し適切な状態に調節する機能をカラダは備えているのです。

この体内生コンを、固まらせないようにかき混ぜ続けること。
そして損傷しリフォームが必要な各器官や組織に対して、修復材料を提供すること。
その他にも、寝ている間の体温の偏りを均一化させたり、疲労で硬くなった筋肉のストレッチをしたり、背骨の歪んだ椎骨の並びを整えたり、睡眠サイクルの切り替え役をしたり、寝返りはカラダの調整・治癒システムにおいて、とても大切な役割を担っています。

朝すっきりと目覚めるためには、睡眠中の適切な寝返りが必須です。
そして寝返りが上手に打てるカラダを保つためには、日中覚醒時の姿勢が重要です。
立っている時、座っている時、カラダに負担をかける姿勢でいる時間が長過ぎると、筋肉が固まりすぎて骨格関節の歪みを固定させ、せっかくの寝返り機能が上手に働かなくなってしまいます。

カラダとは一生のお付き合いです。
そしてカラダの機能は、その形態で決まります。
カラダの働きは日頃の姿勢次第で、良くも悪くも決定していくものです。
一瞬一刻移り変わっていく、姿勢の変化を少しだけ意識して、楽な方向に調整してみるだけで、カラダとの関係はより親密なものになっていくはずです。

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