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温泉チャンス!その16【大分市】あたみ温泉(2024.07.09)
時間というやつは放っておくと平気で伸び縮みして、私たちはその奔放さに日々翻弄されている。
しかしその動きを注視して楔を打つ事で、時間の動きをある程度意識的に操る事が出来るし、そうして作り上げた時間のエアポケットを利用して私は温泉という身近で非日常的な空間に身を浸して束の間、心身を解放している。
今回やってきたのは大分市のど真ん中、駅近も駅近の「あたみ温泉」。再開発が進む街中に、まるで時間の経過から置き去りにされたみたいにその建物は佇んでいる。
狙ってそうなったわけではない。普通に古い。普通にレトロ。昔ながらの銭湯がまんまそこに残っている。
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ここではまだ番台さんという、代表的銭湯文化が残っており、男湯と女湯の境界に年輩の女性がニコニコして座っておられる。大きく数字が書かれたロッカーや、多分もう動かないであろう電気コードが抜かれたマッサージ機。浴場に大きく開かれたサッシ、お湯をドボドボと浴槽に注いでいる魚とライオンを模した湯口。
あらゆる物が無作為に古いまま残っている。けれど大事に使われてきたに違いない。古さと清潔感が同居した空間。脱衣所の床も浴場のタイルもピカピカに磨かれている。
お湯は茶褐色。一応「あついお湯」と「ややぬるめのお湯」と分かれているが、入ってみるとどちらも「とても熱いお湯」だった。容赦ない。
妙な時間だったため、私の入る男湯は一時貸し切りとなっていた。浴槽から見上げた窓の外には建設中の高層マンション。遥かな高みにあるクレーンと眩く青い空。
熱い熱い湯の中、背筋がひやりとする。底が抜けるような、時間の隙間から奈落に落ちてしまうような感覚。
そこには何十年も繰り返される日常と生活があって、これから先も続くであろう温泉側とお客さんの固い約束があるようだった。
着衣して番台さんに挨拶して外に出ると、そこは令和ど真ん中。コインパーキングで100円払って車を出庫し、汗が後から後から落ちるのをタオルで拭いながら、私は日常に戻って行った。
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