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【寝かしつけ】ねずみ色(2024.05.15)

放っておけばいつまでも布団の上で眠ろうとしない次男(3歳)。「怖い話するよ~」と言っても、もはやあまり怖がらなくなってしまった。長男(8歳)に至っては「怖い話してよ」とリクエストすらするようになってしまった。趣旨が違いすぎる。

それにのっかるわけではないけど、「じゃぁお題ちょうだい」と私が言うと、「ねずみ」と答える長男。「ねずみの話は何回かしたよ」と言うと、「そういえばそうだった」と思い出したような長男。

でも別にいいかと思って「ねずみ」で話を考える。でもねずみで考えても以前のように家がねずみに囲まれる話になりがちなので、「ねずみ色」に逃げた。

「ねずみ色」

空がどんよりねずみ色をしている。
全然変わらない。動かない。風も吹かない。

分厚いゴムみたいにのっぺりしたねずみ色の空。朝からずっとそんな感じ。
「つまらないなぁ」と思ってテレビを点けると、画面がねずみ色で何も映らない。仕方ないので出かけようとすると、車が動かない。困った。

だから歩いて近くの公園に行くが、ちょうど工事をしていて遊べない。別の公園に行くけどそこも同じで工事中。あららどうしたことか。

家へ帰る。あいかわらずねずみ色の空。ちっとも変わらない。世界が丸ごと大きな部屋に入れられたみたいに、朝からずっと同じ。太陽系が止まっているんじゃないかと思う。

時間だけが過ぎて行く。時計は動いているので、きっとそう。お腹も空いてくる。だけど外の景色はずっと貼り付いたように同じまま。

不思議な事に時刻が夕方の5時を回って、6時になり、7時を過ぎても外は同じようにねずみ色だった。

そのうちママの顔がねずみ色である事に気づく。あれ?
ママだけじゃなくて、みんなの顔がねずみ色をしている。みんなどうしたの?

少しずつ見えるものがじわじわとねずみ色に変わっているのに気づく。「だるまさんが転んだ」をしているみたいに、目をはなした隙に、冷蔵庫が、本棚が、壁が、みんなねずみ色に変わっている。

空のねずみ色が地上に降りてきたみたいで、いつの間にか外の景色もみんな同じねずみ色で、みんながねずみ色だから、輪郭が溶けて全部がいっしょくたになってしまったみたいに見えてきた。

「ママ」と呼び掛けてみる。声は返ってくるけど、どこからどこまでがママなのかわからない。みんなねずみ色だから。ねずみ色に満たされて、何も分からなくなっていく。でも怖くない。なんだか気持ちがいい。ぬるくて、ふわふわしている感じ。

そうして、ねずみ色の中でみんな溶けていく。

おやすみなさい。

今日は完璧に決まって、全員スパッと寝た。

我ながら良い仕事をしたと思う。

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