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温泉チャンス!その17【亀川筋湯温泉】

電子レンジの中にいるみたいな酷暑のさ中、私は仕事をひと段落させて、少し遅めの昼休みを取る事にした。

軽く昼食を済ませて、私は前から行きたかった「亀川筋湯温泉」という温泉へ行った。

聞いた話によると、けっこう熱めだとのこと。しかし最近はそんじょそこらの熱さ、具体的に言うと45℃くらいであれば逆に丁度良いくらいに感じるようになってしまったので、私が入れないという事はまずない。

近くの商店街利用者駐車場に車を停めて歩く事2分。「亀川筋湯温泉」は道路にがっつり面している。

飾り気ゼロの外観


効能が詳しく書いてある

「杖をついて入湯に来た人が、数日間湯治をして、杖を置いて帰ったという話をよく聞く」というエピソードはすごい。私も何かしら不要なものを置いていきたい。

賽銭箱に気持ちばかりの入浴料を入れる。ありがとうございます。

管理人や番台らしき人は誰もいない無人の温泉。地元の方々に大事に管理されている。心ばかりのお賽銭を入れて私は中に入った。


綺麗な青

中に入ると、雑然としている。お世辞にも綺麗とは言えないが、汚らしさはない。きちんと掃除されている感じがする。

限りなく澄んだお湯


すぐそこに道路。一応カーテンはついている。


色々壊れている

 脱衣所、そして浴槽。それ以外何もない。体を洗うスペースもほぼなくて、かけ湯するので精一杯だ。無駄なものを一切削ぎ落している。そして特筆すべき点が、加水する事すらできない点だ。つまり源泉かけながしどころか、それを薄めて湯温を調整する事すらかなわず、生のままの源泉にそのまま浸かる以外に選択肢が存在しないのだ。

これ以上ないくらいに透き通っている

静かで住んだ水面。気温が高いからか、湯気すら上がっていない。

私はおそるおそる使い古された洗面器にお湯をついで、かけ湯した。

熱い事を表現するために既存のサイズでは追い付かず、画像をわざわざ作成してしまうほどに熱かった。何度だ?50℃くらいあるんじゃないのか?言ってもこれまで熱いと言われる温泉にはいくつも入ってきたが、これはちょっと尋常じゃない熱さだ。

全裸で一人お湯と対峙しながら、私はその静かな水面に狂気を感じていた。これほど熱い温泉がこの何気ない素朴な施設に普通に存在している事に現実感を覚えなかった。加えて外は36℃越えの狂ったような暑さ。私は突然フィクションの中に放り込まれたようだった。ここで一人お湯に浸かり、静かにその生涯を閉じてしまう可能性が頭をよぎる。案外この静かな水面が外宇宙に繋がっていて、ここに浸かる事でマルチバースへと到達できるのではないか。そんな事を考えてしまうくらいにもうとっくに頭の方が茹っている。

「でも一応浸かっておかなければ」

私は義務感とか使命感に駆られて、なんとかお湯に体を浸そうと努力した。何度も足だけ浸けては出てを繰り返し、体を慣らしていった。とてもお湯を楽しむなんてことは出来なかった。風情もへったくれもなかった。

そうしてようやくお湯に肩まで浸かったものの、ものの1分と耐える事が出来なかった。でも一応ちゃんと浸かったので大丈夫。私はしっかり入浴した。


人通りもほとんどない商店街

外に出る。「ああ、逆に外は涼しいな」と思いたかった。お湯がとんでもなく熱かったから。しかし外は外でしっかり暑かった。あとからあとから汗が噴き出してきた。日傘が欲しかった。今すぐ車に乗り込んでクーラーを全開にしたかった。一刻も早く水分を補給したかった。

しかし車が遠い。私はなるべく日陰の中を歩こうと努めたが、ちょうど太陽が天頂近くにあって、どこも暑かった。私はさながらゾンビのように歩きながら、「夏が終わったらまたここに来てみよう」と思っていた。

そして調べてみたら、どうも夏はここのお湯は熱くなるらしく、常連さんでも入れないことがあるらしい。逆に秋から冬にかけては適温で入りやすいらしいとのこと。

夏に来るべきじゃなかった。

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