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考えるべきは、売り方じゃなく”買い方”という話

2019年の仕事が収まりました。

今年を振り返りながら、当たり前のことを忘れないように雑記として残しておきたいなと、noteをとった次第です。

よくマーケティングとセールスが企画会議に入ると、「どう売るか」というサプライヤーサイドの発想から議論がなされて、「結局あれか、ローラーでリードを当たらないといけないってことね」「結局あれか、リードの山を作ってパスすりゃいいのね」と、近眼的でその場しのぎな結論になりがちです。

ここに足りないものはそうですね、”買い手”の存在を前提とする議論です。

では、何が欠けているのか。何に基づいて企画すべきなのか。営業企画として川上から川下まで日々の業務に携わる私なりの雑記です。

* * * * *

1.顧客の購買の5W1Hを可視化せよ

What...何を買うのか。

Who...誰が買うのか。

Why...なぜ買うのか。

When...いつ買うのか。

Where...どこで買うのか。

How...どうやって買うのか。

例えば。

「経営/技術情報など、網羅性のある情報が詰まっており、UIもシンプルで使いやすく、顧客自身が簡単にカスタマイズすることで、関心のある情報をサマライズできるデータベースサービス」。
そんな製品があったとして。
ブレイクダウンしてみます。


What...上記のようなデータベースサービスを、
Who...経営企画部やR&Dに属するリサーチャーが、
Why...通常7日はかかっていた開発テーマの市場規模を見定めるための調査活動の工数を1日にしたくて、
Where...ネットからトライアルを申し込み、その後は担当者に自社へきてもらいつつデモ画面を触りながら、
When...2週間のトライアル期間が終わる頃に、
How...月に1回の経営会議に稟議を挙げてもらい、正式に発注する。

...ということになるのかなと思います。
これは「購買」に関する5W1Hですが、本来的には「誰が/何を/いつ/どこで/どのように/なぜ使うのか?」から考える必要があります。
その商品・サービスを、顧客はいつどのように使う?
買う理由を突き止めましょう、という話。


2.顧客のジョブをつきとめろ

当然ですが、その商品/サービスを買いたいと思う顧客(ユーザー/バイヤーの双方)のジョブを満たせる投資であることに納得してもらう必要があります。

そのためには、想像し、仮説を立て、時には調査/取材を行い、解像度の高い”顧客の行動”を、自分たちにとって都合の良い姿ではなく、可能な限りのリアルな姿を描き出し、理解しておく必要があります。

もう一つ、「上手に買ったあと」、顧客の成功をどう導き出すかが近年では特に重要となっています。

先ほどのデータベースサービスを例とすると、ユーザーやバイヤーの姿とは、こんな働き方をしている人かもしれません。

ユーザー:Aさんの場合。朝8:30に出社して、始業前の30分、雑誌や新聞、ネットニュースなどをざっと眺め、必要な情報をざっとメモ。始業後、リサーチテーマと進捗をシェアしてから作業スタート。18時頃、上司のBさんに進捗を報告して退社。
バイヤー:Bさんの場合。毎朝始業前にトピックスをまとめて渡してくれるAさんに非常に助けられている。本部長への報告資料作成の手間が省けているからだ。逆にいえば、Aさんがいなくなったとしたら、簡単に替わりは見つからない。それは仕事の質も含めてだ。

あくまで例ですが、こういった2人(ユーザーとバイヤー)がいる場合、ユーザーにとって魅力的に映るジョブと、バイヤーにとって魅力的に映るジョブは異なるのではないでしょうか。
とすれば、刺さるオファーも変わりますよね。

ユーザーへは、「今まで7日かかっていた作業が1日で済みます!」かもしれないし、「ダッシュボード画面はカスタマイズ可能!だから状況報告も手間いらず!」かもしれない。

バイヤーへは、費用対効果や「使うことが浸透したらこんな世界が待っている」という、共感を生むストーリーかもしれない。

顧客が満たしたいジョブを突き止め、そこにマッチする提案が勝ちパターンと改めて心得ることが重要。


3.顧客が”上手に買える値段”か?

まず前提情報として、提案先である顧客企業の簡単な分析は欠かせません。
例えばこの3軸。

①儲かってるか ②何がしたいのか ③やってるか

というのは、非常に重要な要素です。

「儲かってるか」は有価証券報告書。非上場の場合は官報から情報を。

「何がしたいのか」は未来のありたい姿を経営メッセージから推察するため、中計やR&D情報などから情報を。

「やってるか」は、中計や有報、最近だと統合報告書などにも表現されていることが多いです。テーマに沿いつつ経営の本気度をチェックします。どれくらいインベストの幅がありそうか測るんですね。

儲かっていて、何を目指しているかがはっきりしており、事業ビジョンが十分浸透している。そんな顧客企業であれば多少ビジョナリーな提案をしてもハマりそう。有報見ると○%/○万円が利益幅だから、△万円くらいが適度な提案のラインかもしれない。なるほど、スコアリングを見ると、競合X社のページもアクセスしたみたいだ。ウチのWPもDLしてる。じゃあ、提案はこういった方向性だな...

...と、事実と印象を整理しながら仮説を立てると、顧客の姿が見えてきませんか。
もちろん、競合の分析や比較も欠かせません。

ヒラメ筋営業スタイルを否定するものでは一切ありませんが、適切なメッセージを、適切な時間に、適切な手法で、顧客の懐事情や社内政治事情もよくわかっている人間からの提案の方が、一般論的に考えて”よし、買おう”となるのではないでしょうか。

「売り方」から着想すると、「じゃあどのリストを」「どのチャネルで」となりがちですが、顧客視点に立って「どうやって買うんだっけ?」「なんで買うんだっけ?」を整理すると、見逃していたチャネルの存在や、売り方起点では思い浮かばなかったオファーなどもアイデアが出ると思います。

「売り方じゃなくて買い方」から着想すると、「当たり前だけど、『顧客が商品/サービスを買って終わり』じゃないよね?」と気づきます。じゃあ顧客のジョブを満たすための組織って、どんな姿があるだろう?と妄想しながら今日は眠りたいと思います。

現場からは以上です。

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