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定性調査を実効性高く楽しくやるために(5)

実はいま、本業でも定性調査が立て込んでおりまして、このような振り返りは私自身の業務精度を上げることにも役立っております。

1)背景や目的を定める
2)誰を呼んで/どんな話を/どういう形態で聞くのかの概要をまとめる
3)スクリーニング調査をかけて対象者を集める
4)インタビューフローを決める
5)日程やオペレーションを定め、見学者を集める
6)実査を行う
7)実査と同時に解釈のすり合わせを行う
8)報告書をまとめる

今回は5)の日程・見学者のパートですね。

さて、調査は意思決定支援のために行うものですが、特にインタビュー調査は(少なくともインタビューの場での)消費者のナマの意見や様子が実際に見えるという特徴があります。

簡単に言いますと、同じように満足度を聞いたとして、定量調査では「非常に不満」◯%としてアウトプットされるものが、定性調査では生の声として聞ける、ということが特徴です。

よく考えたら不思議なことではありますが(笑)、これは、意思決定者の意見を決定的に左右できる機会です。数多の定性調査企画者の中には、ほとんどこの効果のためだけに定性調査を企画する人がいるくらいです。
つまり、どうにもこうにも顧客像について明後日の理解をしている意思決定者に消費者の実態を見せるとか、誰がどう考えてもイケてないプランを推し進めている責任者に、そのプランが徹底的に悪口を言われている様子を見せるとか。

調査は答えを教えてはくれませんが高精度で間違いは教えてくれますので、要するにそういう方向に進んでいたら翻意させよう、という使い方ですね。

「そんな調査の使い方はフェアではないのではないか?」という声が聞こえてきそうですが、もちろん意図的に意思決定者に都合の悪い参加者を集めるのはアウトです。
ただ、そもそもの顧客理解をきちんと進めていれば、フェアに集めた対象者がどういう反応をするのかは概ね予測がつくものである、とご理解いただければと思います。

これは確かに極端な例ではあります。しかし、定性調査のでブリーフィングで今後の方向性はほぼ決まってしまうのは確かですし、そのように定性調査を活用できなければ意思決定がいつまでもできないものですので、意思決定者に定性調査を見学してもらうのは、もはやマストと言って過言ではありません。これは意思決定者が部長だろうが専務だろうが社長だろうが同じです。

デブリーフィングの重要性については後日に7)で述べますが、リサーチャーの口から企画者、意思決定者に「お前の企画は全然ダメだ」と言ったところで相手は意固地になって聞く耳を持ちません(実体験あり)。しかし消費者に語ってもらえれば大なり小なり届きますし、良いものであれば自信となり企画の推進力を、悪いものであれば方針転換するに足る心のダメージとなり企画の見直しを導くことができます。

(とは言っても、結果に目を閉じ耳を塞ぐ意思決定者がいるケースがあることは否定いたしません。私自身も意思決定者に腰巾着が忖度することでそのような結果となる定性調査を何度か見てきましたが、そういう人たちが実権を握る組織に所属することはまあ、働き方としてあまり幸せじゃないのではないのですかね、とだけ申し上げておきます)

そういうわけで、定性調査は実査を意思決定者が見学することを前提に組み立てております。そして、日程もそれを踏まえて決めていくことになります。

定性調査の日程は、リクルートの実務にかかる日数やインタビュアーが参加できる日にち、そしてインタビュー参加者の参加可能日から選んでいくことになりますが、この「意思決定者の参加可能日」というのも負けず劣らず大事な要素、ということです。

ただ、当然ながら意思決定者の日程に合わせてひたすら後ろ倒しするわけにもいきませんから、ある程度の日程が決まったのちに、意思決定者に参加を促すような腕力が求められるところでもあります。
ちなみに私はこういった腕力にあまり長けた方ではありませんが、昔の同僚に非常に腕力が強い人がいまして、非常に頼りにさせていただいていた記憶があります。

余談ですが、調査会社の人から聞いて驚いたのですが、定性調査において実査に参加するのが調査会社の人のみというケースがあるそうですね。
少なくとも私はリサーチャーとしての責任は実査を見ないと絶対に果たせないと思っておりますし、実査に参加せずに「結果を適当にまとめておいて」などという企画者に協力する気は一切ありません。お客様から頂戴したお金、営業のメンバーが血と汗と涙で稼いだお金を、そんなしょうもないことに使うのはあり得ないと思っております。

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