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全国学力学習状況調査における令和5年度と令和6年度のICTに関する質問項目比較と授業像の変化

全国学力学習状況調査の分析を担当する人間として、質問紙における質問項目の変化は、今後の教育動向を知る上で重要な情報源です。

質問紙の質問項目の進化は、教育現場における授業実践の現状を映し出し、新たな教育手法がどのように実践され、子どもたちの学習にどのような変化をもたらしているのかを具体的に把握するための重要な指標となっています。

今回の令和5年度から令和6年度への質問紙の質問項目の変化は、ICTが教育の主役となりつつあることを示唆しています。

1. 従来の授業像

令和5年度の質問項目は、ICT機器の授業での利用頻度とその有用性に関する一般的な認識を問うものでした。これらから推察されるのは、現場においてまだまだ以下のような授業が支配的だということです。

  • ICT機器の利用は限定的: 全ての授業で頻繁にICT機器が利用されているわけではなく、一部の授業で補助的に使用されているケースが多い。

  • ICT機器の有用性への認識は多様: 子どもたちの中には(教員も)、ICT機器の利用が学習に役立つと考える一方で、そう思わない者も一定数いる。

  • ICT機器の利用目的は単一: ICT機器は、主に情報検索や資料提示など、限られた目的で利用されている。

2. 今後の教育動向における求められる授業像

令和6年度の質問項目は、ICT機器の利用が学習活動に与える具体的な効果についてより詳細に尋ねるようになっています。この変化から、今後の教育動向における求められる授業像は、以下の通りです。

  • 一人ひとりの学習スタイルに合わせて個別最適化された学習: (1)自分のペースで理解しながら学習を進められる、(2)分からないことがあった時にすぐ調べられるといった項目から、子どもたち一人ひとりの学習状況に合わせて、学習の進度や内容を調整できるような学習環境が求められています。

  • 主体的・対話的で深い学びの実現: (4)画像や動画、音声等を活用することで学習内容がよく分かる、(5)自分の考えや意見を分かりやすく伝えられる、(6)友達と考えを共有したり比べたりしやすくなる、(7)友達と協力しながら学習を進められるといった項目から、ICT機器を活用して、子どもたちが自ら考え、表現し、協働するような深い学びが求められています。

  • 多様な教材・表現方法の活用: ICT機器を活用することで、従来の教科書やプリントだけでなく、画像、動画、音声など、多様な教材や表現方法を用いた学習が可能になります。これにより、子どもたちの興味関心を高め、より効果的な学習を実現できます。

まとめ

令和5年度から令和6年度にかけて、教育におけるICT活用の目的が、単なる情報検索や資料提示から、子どもたち一人ひとりの学びを深め、多様な能力を育成することへとシフトしていることが分かります。
今後は、ICTを学習の質を高めるための強力なツールとして捉え、以下のような授業作りが求められていると考えられます。

  • 子どもたちが主体的に学習に参加できる環境づくり: ICTを活用して、子どもたちが主体的に学習内容を探究し、自分の考えを表現できるような活動を取り入れる。

  • 多様な学習スタイルに対応できる柔軟な授業設計: ICTを活用して、子どもたち一人ひとりの学習スタイルやペースに合わせて、学習内容や方法を調整できるような授業設計を行う。

  • 教員と子ども、子ども同士の協働学習の促進: ICTを活用して、教員と子ども、子ども同士が互いに教え合い、学び合い、共に成長できるような学習環境を創出する。

これらの変化は、単にICT機器の導入を進めるだけでなく、教員のICT活用能力の向上や、学校全体のICT環境整備など、様々な取り組みが求められることを示しています。さらに、以下の点も考慮する必要があります。

  • デジタル・デバイドの解消: 全ての子どもたちがICT機器を平等に利用できる環境を整える。

  • 情報モラル教育の充実: ICT機器の利用に関するルールやマナーを丁寧に教育する。

  • 教員のICTに関する研修の充実: 教員がICTを効果的に活用できるよう、継続的な研修の機会を設ける。

このような取り組みを通じて、ICTは子どもたちの学習意欲を高め、学習効果を最大限に引き出すための強力なツールとなることが期待されます。

大きな変化は、小さな一歩から。明日の授業で、一つだけ新しい試みをしてみませんか!?子どもたちの反応を楽しみながら、少しずつ変わっていきましょう!!

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