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作文指導は書き方を教える

1 はじめに
 作文指導は「作文の書き方(技術)」を身に付けさせる指導だと考えています。
 大半の子にとって、美しい文章を書くことは重要ではありません。作家になるような子はほんの一握りで(教師人生の中で一人いるかいないかレベル)、大多数の子は実生活の中でのみ書くことを使うからです。
 ゆえに、自分の考えや経験したことを正しく相手に伝える。そんな実用的な文章の書き方が必要です。

2 型を指導する
 教室で作文を指導するとき、「型の指導」と「多作主義」を基本としています。
 型の指導では、文章構成の基本として、どの学年でも次のことを指導します。
「はじめ(序論)」=作文の導入としてこれから述べることを端的に書く
「なか1(本論)」=伝えたい内容の一つ目について
「なか2(本論)」=伝えたい内容の二つ目について
「まとめ(結論)」=何が言いたいかを端的にまとめる。+αで自身の感想や将来の展望など

 これらの指導にあっては、具体例を示すことが大切です。導入では例文を黒板に書き、書けない子にはそれを真似ることを推奨します(ここまですることが必要な子どもを多く見てきました)。
 型を指導するとき、例えば、次のようなことを基本として全員に指導します。

 例)運動会
《はじめ》2、3文
 〇月〇日運動会がありました。運動会で心に残ったことが2つあります。
《なか1》3,4文
 1つ目は〇〇のことです。ーーーーー(何がどうなったのか具体例)。だから、ーーーーー(そのことについて自分が感じたことや考えたこと、気づいたこと)。
《なか2》3,4文
 2つ目は△△のことです。ーーーーー(何がどうなったのか具体例)。だから、ーーーーー(そのことについて自分が感じたことや考えたこと、気づいたこと)。
(まとめ)1,2文
 この2つのことから、運動会はーーー(伝えたい内容のまとめ・感想)。来年の運動会はーーー(将来の展望・今後の自分への生かし方)。

 構成、段落ごとの文の数、何をどのように書くとよいかなど具体例を示しながら教えます。これらに時機をみて、「比喩」「擬音語・擬態語」「接続詞」「数字の使い方」など、焦点を絞ってプラスアルファします。

 行事作文を例にしましたが、基本形を指導しておくことでどんな場面でも応用が利きます。理科の実験結果の考察に当てはめると、こんな感じになります。

例)もののとけ方(ミョウバンをとかす実験)
《はじめ》2、3文
 今日は、ミョウバンを水の量を変えてとけ方の違いを調べる実験をしました。
《なか1》3,4文
 50mLでは1ぱい、100mLでは2はいのミョウバンがとけました。水の量を増やすととける量もふえることがわかりました。
《なか2》3,4文
 しかし、塩のときよりもとけた量は少なかったです。とかすものによってとけかたが違うのかなと思いました。
(まとめ)1,2文
 水の量を増やすとたくさんとけることがわかったので、次は温度を変えたときのとけ方の違いを調べてみたいです。

3 多作主義
 
次に、作文は多作主義で書かせるのがよいと思います。一つの大作を時間をかけて丁寧に書かせるような作文指導ではなく(年に1度くらいならいいと思います)、量で質を担保するという考え方で、とにかくやたらと書かせます。

 作文を嫌がる子が多いクラスでは、こんなことを話します。
「呼吸するのをいちいち面倒だとか、今日はしたくないとか考えないよね。このクラスでは作文も一緒です。呼吸をするように作文を書くから、いちいち面倒だとか、今日はしたくないとか言わないでね。その代わり、書き方はきちんと教えるから、気づいたときには作文を書くことが当たり前になってるよ。」

 全教科を一人の担任が受け持つ小学校はあらゆるところに、作文を書くチャンスが転がっています。これを生かさない手はありません。実際に多作主義で作文指導を行うときの気を付けるポイントを説明します。

 まず、書かせる作文は小品に限ります。2,3文くらいで書くことから始めて、200字程度の作文を5分程度で書くことを目標にします。文の数や文字数、時間を示すことがポイントです。ゴールがわからない活動ほど不安と苦痛を伴うものはありません。どれくらいできたらよいかを示すことで、「まあ、それくらいなら」を感じさせることが書くことを持続的に指導していく最大のコツです。

 次に、書く機会はあらゆる場面を利用します。各教科の終わりの5分、ゲストティーチャーが来た授業後、帰りの会などのタイミングで必ず一度は書かせます。教師自身が「必ず書く。そのための時間を確保する」と覚悟を決めることが重要です。書くことが大事だからと時間をオーバーしているようならどこかにムリやムダがあります。そこを削りましょう。子どもたちが書くことに慣れてきたら、回数を増やします。このあたりの調整は目の前の児童の実態によって変わります。書くことが当たり前になった子たちは、こちらが止めても書き続けます。そうなればしめたものです。

 そして、いつでも書くための環境整備も重要です。私は教室に200字の原稿用紙を裏紙に印刷して常時、100枚以上、常備していました。200という短い文字数、A4の半分というやる気を絶妙にそがない程度のサイズ感が重要です。「まあ、これくらいなら、、、」と子どもに思わせることを考えました。また、日付を書く場所やクラスを書く場所があらかじめわかるようにしてあります。迷わずに書き出せるような工夫もポイントです。

 原稿用紙は横書きで使います。実際に社会に出ると横書きで文章を書くことが多いです。ゆえに、単作文も横書きを基本にしていました。ちなみに、この原稿用紙は縦書きでも使えます。

4 終わりに
 子どもたちはたいてい作文が嫌いです。なぜ嫌いなのか理由を尋ねると、大体、次の3つがあがってきます。
「何を書けばいいかわからない。」
「たくさん書くのが嫌だ。」
「めんどくさい。」


 同業者に反感を持たれるのが怖いので小声になりますが、責任は担任にあると思っています。
書き方の指導をしてこなかった
・やたら長く書くことや何度も書き直させてきた
・計画的に書く経験を積ませてこなかった

 
 担任の作文指導が適切になされなかったことが作文嫌いの原因です。自分のことを振り返ってみても、小・中・高で作文の書き方を指導された記憶がありません。きっと何か教えてもらったのだろうと思いますが、これが現実です。

 多くの子どもたちは作家になるわけではありません。
 だから、考えを伝えたり、説明したり、当たり前の日常で使うような「技術としての作文」を指導しています。それくらいしかできないという話もありますけど(苦笑)。
 もちろん、このような指導について、「そんなのつまらない」と感じる方もいるでしょう。
 しかし、大半の子たちはそんなことすら指導されず作文嫌い、国語嫌いになっていきます。公教育に携わる人間として、かかわった子たちが自分の人生を自分自身で歩むために必要な技術の一つとして、子どもたちに書く力を付けたいと考えています。

 嫌われたくないので声には出しませんが、ろくな指導もせずに子どもたちの作文や書く力を批判している人に対して、「そんなことすら指導しない人が、やっている人間に何を言えるって言うんだ。」心の中で思っています。ここだけの話です(笑)。


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