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「サクラ革命」にガッカリしたのはVtuberを「声優起用」したことではなく、「エサ」にしたこと

セガとデイライトワークスが準備中の期待のゲーム「サクラ革命」が、ちょっと騒ぎになった。これ。

『サクラ革命』事前登録30万人突破で、VTuber白上フブキと宝鐘マリンを声優に起用
https://news.mynavi.jp/article/20201104-1452604/

これについて今回は触れていきます。


・僕にとっての、ホロライブとサクラ大戦

前回のアツギの記事と同じっぽくて申し訳ない限りなんだけど、僕は結構ホロライブ好きだ。
熱心に追っかけてるわけではないですが、マリン船長なんかは楽曲も聴き込んでるくらいには好きな部類のVさん。

同じく「サクラ大戦」についても、恐縮ながら「1」「2」はリアルタイム世代ではありませんでしたが、小学校の時にドリームキャストを所有していた友人の家で「3」はやり込んで、巴里を楽しんだ。
(当時、PS・64はみんな持っていても、「ドリームキャスト」を持っていたのは1人だけだった)

っていうくらいどっちも好きではあるのよ。
なので、「サクラ革命」も熱心に追いかけているわけではないですが、注目はしてるんですよ。
(11月12日追記:コメントにて、「友達の家でプレイしてサクラ大戦に1円も出してないじゃん!」と突っ込まれまして。本当にその通りに見える書き方で自分もやってしまったと思いました。
「4」、「V」は自分で買ってプレイ済みです。あとスーパー歌謡ショウも何度か行きました)

そんな僕なんだけど、今回の事前登録キャンペーン。これはね。

ガッカリだよ、セガとデイライトワークス……
こんなこと出来ちゃうんだ?

って思ったわ。いや、ある意味すごい企画だよ、これ。

誤解のないように先に書いておくと、Vtuberが声優起用されること、そのものに関しては、そこまでの違和感はない。
(全くないかと言われると嘘になる。後述する)

あと、これも誤解のないように言っておくと、フブキちゃんや船長本人も悪くない。発注した人がどうかと思うし、仕事を受けたホロライブも止めてあげなよ、と言う案件だ。

そういう意味では、僕のガッカリポイントは世間の違和感とちょっと違うかもしれない。

そういったことよりも制作や運営のスタンスの「作品に対する軽薄さ」が透けて見えてしまっていることにガッカリするのだ。
人によっては素晴らしいアイディアという人もいるだろう。
実際ビジネスだとこんなにバサっと切り捨てられる発想力は、僕もすごいと思っている。
でも、オタクとしては本当にこれでいいの? って思ってしまうんだよね。

・Vtuberを声優起用することのメリットは大きい

トレンドワード「声優起用」。これはわかるんだ。
ホロライブ人気に乗って、一気に事前登録者増やしたいってことは。
正直、もともとの「サクラ大戦」のファンも生き残ってるけど、ソシャゲ界隈で生き残れるほどの数はいないと思うのよね。
「ドラゴンボール」「キャプテン翼」「キン肉マン」ほど確実にお金を落とす作品信者も多くはないだろう。

「サクラ革命」が生き残るには、このゲームから新規ファンを掴むしかないと思う。「FGO」が「Fate」のファンを広げたように、ファンを広げることしか正解が無いんだから。

もちろん批判する人がいるのもわかる。
今、声優を目指している人達は多いし、みんな一生懸命演技の努力をしていく中で数少ないキャラクターの席を、ポッと出の人気者に奪われていくのである。
それでいいのか! と、思う人も当然いるだろう。
(アニメ映画に出演する芸能人に似てるよね)

でもね、ソシャゲ界隈も苦しいのよ。
製作者と話す機会も多いけど、1年前後でサービス終わってしまう作品なんて、いくらでもあるのよ。
ゲームの本数が競争が激化していく中で、事前登録者数をいかに伸ばすかが重要なの。
スタートダッシュで、いかにお客さんを増やせるかで、その後の広告宣伝費も全然違ってくるし、増やせるキャラクターの上限も全然変わってくるんだよね。

で、いまのホロライブの勢いは、こういうソシャゲ戦争の戦局を大きく変えられるだけの力は間違いなくあるんだよね。
そして配信を見ている視聴者たちは、ソシャゲに親しみもある。すぐにユーザーとして取り込めるから、投げ込むターゲットが違う「場違い感」もない。
そういう意味では、「アニメ映画に出てくる芸能人」よりも、運営にとって質の良いお客さん。もっと率直に言うと、課金することに対して積極的で強力なお客さんを呼び込むことができるだろう。
(課金コンテンツ自体の是非はここでは語らない)

逆に、ここで事前登録が伸びて、サービスが続くとどうなるか。
広告宣伝費はいっぱい投下される。それを呼び水にまた人が増える。
結果としてキャラは追加されて、本来の声優起用は増える。

つまり、誰も損をしない世界になるわけです。
だから、これについては広告宣伝の施策としては明らかに正解だし、上手いと思う。

以前、似たような例で人気ゲーム「ボーダーランズ3」の声優に、電脳少女シロちゃんが起用されるなんて例もあったけど。
https://www.moguravr.com/borderlands3-siro-voice-cast/

これは現在進行系で人気のある作品、重要なキャラをVtuberが演じることに強い批判があったのだ。
あれに比べりゃ今回の件は完全に「新規IP」だし、まだどんなポジションのキャラクターを演じるか発表されてないから、そこまで抵抗は無いんだよね。

ただ、「全く違和感は無い」とも思わんけどね。
理由としては、ホロライブのVtuberって「設定」がキチンと決まっているからさ。

たとえば船長が、これから「サクラ革命」でキャラを演じる場合、言わば「キャラ」が「キャラ」を演じるわけで。
その構造に対して、見てて気持ち悪さというか、混乱が発生しないのかな?とは思っちゃうね。
だって、中の人がミエミエになってしまうのだから。

それでもまだ、「どういうキャラ」に声を当てるか発表されてないから、なんとも言えないだろう。さすがにそんな安易じゃないと思いたい。
「マリン船長が『声優』になります!」って宣伝してるんだから、まさかそれを踏まえないキャラを作るとも思えないんだ。
普通ならね!

そう思いたいが、正直今回の企画を見ると、

マジで「数」しか見て無くて、そのあたりの整合性とか全く考えて無いのでは……?

と思わざるを得ないところがある。
で、それが僕のガッカリしてることに繋がる。

・え、仮に30万人事前登録達成しなかったら、『はい、このキャスティング無し!』ってやる気なの?

これなのよ。
今回の企画、もっかい読んでみると

「白上フブキさんと宝鐘マリンさんが『事前登録30万達成で』声優として出演」

え、なんで条件つけたの!?
キャスティングって、本来は「そのキャラにとって一番合う、もしくは作品にとってプラスになる」ためにやるもんじゃん?
というか、純粋にユーザーなら、それを期待するよ。

それを、なんで、
「この子たち。宣伝のためにキャスティングされてます! ファンのみんなも見たかったら事前登録してね。ダメだったら、普通に別の人にしちゃうから!」

って、声高に言えるんだろうか? そんなもので撤回できるほど、該当キャラクターって軽いもんなん?

軽薄すぎるよ。 
僕はちょっと「キャラクターボイス」っていうものを、流石に舐めすぎだと思う。
「新規IP案件」だから許されてるけど、原作付きだったら関係者の誰かがブチ切れ必至だし、仮にこれ達成されて出てきたとしても、そんなスタンスで作られたキャラ好きになれますかね?

って思っちゃう。

これって、Vtuberを声優起用してるんじゃないんだよ。
Vtuberを事前登録のための「エサ」にして、ユーザーを釣ってるんだよ。

それが、僕は一番ガッカリした。

だったら、普通にフブキと船長が声優として出演! でいいじゃない。
仮にそれが上で書いたような、数を狙ったものだとしても、それを言わなきゃまだ、キャラクターにとって一番良いキャスティングなんだろう。
って、思えるじゃない。

いや、僕もピュアピュアじゃないから、さすがにわかりますよ。
これ出した時点で、事前登録30万人突破は見えてるはずなんだ。
「突破できる勢いがある」から、さらなる上積みを狙って出しただけだと思う。
ここで、「達成しなかったから無しです!」なんてしたら、みんなの怒りしか買わないんだから。

だから、決まってて出したのは間違いないろうけど、問題はそれじゃないんだ。
そういう態度をユーザーの前で堂々と曝け出せることが問題なんだ。

言ってみれば、これって作品クオリティを『人質』にして、宣伝してるんですよ。
参加するキャラクターのいくつかは、「売れるか」「売れないか」で、リリース前からクオリティが左右されるの。
そりゃあホロライブのファンは声優起用に喜ぶ人もいるだろうけど、一方で「こんなスタンスで作ってる人たちなんだ」っていう浅さを僕は感じちゃうね。

「SIROBAKO」ってアニメがあって。
編集者になってから、あのアニメの内容、ファンタジーだらけやんけ!
って思ったから、あれがリアルとは思わんけど、そのなかでも「これはそのとおりだな」って思ったセリフあって。

「政治的なキャスティングは必ず露呈し、作品にプラスになることは無い」

これは、いまになっても結構いいとこ突いてるなーって思ったんだよね。
まさに今回の件がこれ。

あまりに大人の事情が見え透いてしまう。気持ち悪い。
事前登録によって、キャスティング変わるんだって。
僕はこれ100%オタクの立場として言うけど、キャラクター作り舐めてそうで嫌だ。

しかも、そんなフワフワした立場のキャラクターが「重要なポジション」になることあるだろうか?
「決まろうが決まらなかろうが、客寄せ」なんだから、どうしても軽くなっちゃうんじゃないの? って思うよね。
それって船長やフブキにとっても不幸だよ。

いや、普通はこれ思いつかないよ。
こんな作品にとっても、キャラクターにとっても、演者にとっても残酷すぎる企画。

思いつかないから凄いよね。
人気者をエサにして、事前登録を伸ばす企画。発明だと思うよ。
作品を見ずに、「数」だけを見て割り切らないと出ない発想だと思う。
これ事前登録伸ばすと思うよ。
だから、これはビジネスとしては凄い発想だと思う。
(これについては、皮肉じゃなく、100%すごいと思ってます)

だから、編集者としては勉強になった発想だった。
ただ、1人のオタクとしてはガッカリしかないね。

・そう言いながら、僕が「サクラ革命」を事前登録した理由

そう思いながら、僕は事前登録しました。
なぜならね。セガもデイライトワークスもね。
こんな批判でることはわかってると思うんだ。

「作品愛があるし、やりたくない! やりたくないが、ここでスタートダッシュ決めることが、後々の作品のためになるんや!」
って思ってる可能性だって高い。ってか、そうであってほしい。

わかってやってるんだろうから、きっと今回の「ガッカリ」を上回る「納得」を与える努力をしてくれているだろう。
それを見てみたい。

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