「エレクトリックボルタ!」第1話

あらすじ
特撮ヒーロー「エレクトリックボルタ」が好きな少年、浅原一真。そんな彼の前に地球の破壊を目論む多次元人ジェナスが現れる。命の危機に晒された時、奇跡が起こる。本物のボルタ=五十嵐准が現れたのだ。だが、准はジェナスにやられてしまう。ボルタの変身ベルトを巻いて戦う浅原。
何とか撤退させることに成功する。再び現れるジェナス。
准は何故か変身せずにジェナスに立ち向かう。
浅原も辿り着き、何とか変身し、ジェナスを撃破する浅原。ボルタのベルトは一子相伝で誰かが変身するともう元の変身者は変身できなくなると言う事である。そんな中ブラックホールが発生し、浅原と准は異世界へと旅立つのであった。

本編
〇屋上(夜)
   多次元人ジェナスが異次元の空間を破って現れる。
ジェナス「ここがR次元の地球か。破壊しがいがありそうだね」
エレクトリックボルタの声「待て!」
   エレクトリックボルタが異次元空間から現れる。
ジェナス「君もしつこいね。さっさと消えてくれればいいのに」
エレクトリックボルタ「そうはいかない。貴様らの様な悪党がいる限り俺は
 何度でも蘇る!」
ジェナス「君は本当にめんどくさいやつだなぁ!」
    軽く戦闘を繰り広げる両者。
ジェナス「今日はそんな気分じゃないんだよね、じゃ」
   消えるジェナス。
エレクトリックボルタ「待て!」
   そこにはエレクトリックボルタしかいない。
   ピーピーと音が鳴り、エレクトリックボルタ、変身解除し、五十嵐 
   准(34)になる。
五十嵐「こいつはまずいことになった」
 
〇夢の中
   エレクトリックボルタとジェナスが戦っている。
   ジェナスにボコボコにやられるエレクトリックボルタ。
 
〇浅原家・一真の部屋(朝)
   布団で寝ている一真。部屋の周りにはエレクトリックボルタのグッズ
   がずらりと並んでいる。
   苦悶の表情で寝ている浅原一真(17)。
   がばっと目が覚める浅原。
浅原「なんだったんだ今の」
 
〇浅原家・外観(朝)
   古門小梅(17)が待っている。
小梅「遅い!」
   一真が出てくる。
浅原「行ってきまーす」
小梅「遅い!遅いよ!一真!」
浅原「ちょっと待たせただけだろ小梅、カリカリすんなよ、小梅だけに
 な!」
   はははと笑う浅原。
小梅「10分42秒は少しじゃない!」
浅原「早く行かないと遅刻するぞ!」
小梅「こいつは1人にさせたら最悪な事になりそうね」
 
〇道(朝)
エレクトリックボルタの動画を見ながら歩いている浅原。
   鞄を持って歩く小梅。
小梅「また何とかボルタ?」
浅原「エレクトリックボルタ!」
小梅「好きだねぇ」
浅原「多分ずっと好きだと思うエレクトリックボルタの事」
   スマホを見る小梅。
   そこには空が割れる動画が映し出される。
小梅「一真!これ見て!」
浅原「なんだよ」
   空が割れる動画を浅原に見せる小梅。
浅原「なんだこれ」
小梅「今話題の動画」
浅原「どうせ合成だろ?」
小梅「どうも違うみたいなの」
浅原「いや、合成だね。そうに決まってる」
小梅「そういうなんとかボルタだって合成でフィクションじゃん」
浅原「いいや、いるね、ヒーローはいる。そしてエレクトリックボルタも存
 在する」
小梅「高校生にもなってそんな事言うの一真だけだよ」
浅原「いるったらいるの!」
 
〇エレクトリックボルタ部・外観(夕)
 
〇エレクトリックボルタ部・内(夕)
   浅原がポテチ片手にエレクトリックボルタの映像を見ている。
   周りはエレクトリックボルタのグッズが多数置いてある。
   小梅が入ってくる。
小梅「委員会の事、いい?」
   教室を出る二人。
   夢の中の出来事を思い出す浅原。
浅原「あの怪人、見たこと無かった、でも負けた。なんだったんだ?」

〇廊下(夕)
   歩いている浅原と小梅。
浅原「お前エレクトリックボルタ部の部員だろ。掃除とかしてくれよ」
小梅「あんた1人しかいないのに部を名乗らない!非公認だし!」
浅原「いつか公認になれるその日を夢見てエレクトリックボルタ部は頑張る
 んだよ!」
小梅「というか私は本来生徒会役員!」
 
〇講堂(夕)
   椅子に座っている浅原と小梅。
   コーラを飲む浅原。夕空を眺める浅原。手に持ったエレクトリックボ
   ルタのソフビを眺めながら
浅原「何も起きないな」
小梅「それが平和ってもんでしょ」
浅原「平和、か。何か刺激が起きれば楽 
しい生活になるのにな」
   次元の壁が割れてジェナスが登場する。
   にやつくジェナス。
浅原「さっきのは!」
   見せて貰った動画を思い出す浅原。
   周りの生徒は写真を撮っている。
ジェナス「ここを拠点にするのも悪くないね」
小梅「何あれ?コスプレ部のイベント?」
浅原「なんだかまずい予感がするぞ」
小梅「それにしてはすごく出来がよくない?」
浅原「多分そんな事言ってる場合じゃない!」
ジェナス「少しばかり邪魔だねぇ」
   竜巻を起こすジェナス。
   周りの建物が壊れる。
   建物の一部が浅原と小梅にも襲い掛かる。
浅原「危ねぇ!」
   小梅を庇う浅原。エレクトリックボルタのソフビが光り輝き始める。
五十嵐の声「電キック!」
   建物が木っ端みじんになる。
   五十嵐が現れる。
五十嵐「多次元人ジェナス!これ以上好き勝手させるわけにはいかない!」
ジェナス「五十嵐准か、懲りないねぇ」
五十嵐「ここで貴様を倒す!」
浅原「本物の五十嵐准……?」
   五十嵐、エレクトリックボルタに変身するためのベルト、ボルタドラ
   イバーを取り出す。
浅原「本物のボルタドライバー?」
   ボルタドライバーを腰に巻く五十嵐。
五十嵐「チェンジ!ボルタ!」
   五十嵐、エレクトリックボルタに変身する。中央のベルト部分(ボル
   タサークル)には5本の乾電池が表示されている。
浅原「本物のエレクトリックボルタ!充電完了してる!」
ボルタ「君の勇気、ビンビンに感じた。下がってて。ここからはヒーローの 
 時間だ!」
   下がる浅原と小梅。
   ボルタ、ジェナスに立ち向かう。
ボルタ「いくぞ!ジェナス!」
ジェナス「僕は平和主義なんだがねぇ」
   戦闘に入るジェナスとボルタ。
小梅「あのお腹の5本の電池は何?」
浅原「あれはボルタエネルギーって言って5本の乾電池が表示されんの。1
 本1分。要はボルタは5分しか戦えない。しかもダメージを受けるともっ
 と減っていく」
小梅「ちょっと!それ大丈夫なの!」
浅原「だから俺たちはハラハラしながら見てるんだ。負けるな!って応援す
 るんだ!」
小梅「そう言ってる間に1本減ったわよ!」
   ボルタサークルの電池が4本になる。
浅原「小梅、正義の味方が負けたとこ見た事あるか?」
小梅「え?」
浅原「負けることもある、例え負けても立ち上がる、それが正義の味方だ!」
   浅原、身を乗り出す。
浅原「頑張れ!ボルタ!」
   浅原の声援のせいかジェナスを圧倒するボルタ。
ボルタ「電撃拳!はぁ!」
   雷のパンチを食らわせるボルタ。
ジェナス「このままだとまずいねぇ、さてどうしたものか」
   腕を伸ばし、小梅を人質にするジェナス。
浅原「小梅!」
ボルタ「卑怯な!」
ジェナス「大人しくしないとこの子がどうなると思うか」
ボルタ「よせ!」
   笑うジェナス。
浅原「何がおかしい!」
ジェナス「正義の味方ってのは大変だなぁ!こんな弱者まで守らねえといけ
 ねえんだからなぁ!」 
   散々な攻撃を受けてマスク割れするボルタ。倒れるボルタ。
ジェナス「まぁこんなものか」
   人質を解放するジェナス。
   強制変身解除されるボルタ。
   ボルタドライバーが飛んでいく。
五十嵐「くっ、ここまでか」
浅原「ボルター!」
ジェナス「このベルトは回収させて貰おうか」
   ボルタドライバーを回収しようとするジェナス。
浅原「させるか!」
   ベルトを持ち去る浅原。
ジェナス「何のつもりだい?クソガキ」
五十嵐「このベルトは渡さない!」
ジェナス「1分猶予をやる。その間に渡せ」
浅原「五十嵐准、あんたが戦えないなら俺が戦う!」
五十嵐「ダメだ!危険すぎる!」
   ボルタドライバーを巻く浅原。
   浅原に電気ショックが走り、吐血する。
浅原「覚悟決まり、ガンギマリって奴か」
ジェナス「ほう、本気で戦うってことかい」
五十嵐「よせ!まだ引き返せる!」
浅原「チェンジ!ボルタ!」
   エレクトリックボルタに変身する浅原。
ボルタ「俺がボルタに!」
   電池残量が1になり、赤いランプが点灯し始める。
小梅「電池が1に!あと1分しか戦えな
 い!」
ボルタ「大丈夫だ小梅、これはピンチのマークじゃない!」
小梅「え?」
   右親指を勢いよく挙げるボルタ。
ボルタ「これは1分って意味じゃねえ。今からの時間、一方的にお前をボコ
 ボコにするって合図だ!ここからは俺様の時間だ!」
ジェナス「言ってくれるねぇ」
   笑うジェナス。
   殴りかかるボルタ。
   だが、効いていない。
ボルタ「あれ?」
   ジェナスの顔面を思い切り殴るボルタ。
   だが、効いていない。
ボルタ「嘘だろ?」
ジェナス「さっきまでの威勢はどこに行ったのかな?」
  ジェナスに殴られ、壁に激突するボルタ。
小梅「一真!」
ボルタN「なんでだ?なんで効かない?」
ジェナス「そろそろ終わりの時間かな?」
    ボルタに近づくジェナス。
ボルタ「このままじゃやられる!」
   最後の力を振り絞り、ジェナスを殴るボルタ。
   何度もパンチするボルタ。
ジェナス「ぐっ!」
   今度は苦悶の表情を浮かべる。
ジェナス「いきなりなんだってんだい!」
ジェナスN「いきなり力が上がった?」
   息を切らすジェナス。
五十嵐N「適合したというのか?この短時間のうちに?」
ジェナス「まぁいい。本丸はこれじゃない。お暇させて頂こう」
  痛がりながら撤退するジェナス。
  シューという音と共にボルタの周りに水蒸気が発生し、浅原に戻る。
浅原「もう限界時間か」
   担架で運ばれる生徒を見ながら拳を握りしめる浅原。
   五十嵐が頭から血を流し、倒れている。
 
〇エレクトリックボルタ部(夕)
   浅原と小梅がソファに倒れて、眠りにつき、体中包帯まみれの五十嵐
   を見守っている。
   浅原の口元に血の跡がある。
小梅「大変だったね」
浅原「もう俺変身しない」
小梅「あんなにボコボコにやられたもんね」
浅原「そうじゃないんだ」
小梅「え?」
浅原「ボルタになった瞬間、俺が俺でなくなるような気分になったんだ。う
 まく言えないけど」
   右手をさする浅原。
浅原「戦う時の拳で殴る感触も気持ち悪かったんだ。俺甘かったよ」
   俯く小梅。
浅原「ヒーローは遊びじゃないんだ。地球を守るって正義感は遊びじゃない
 んだよ」
小梅「一真……」
浅原「あんなの続けたら頭おかしくなってしまう」
   目覚める五十嵐。
五十嵐「(起き上がりながら)ここは?」
   五十嵐、頭を抱えながら
五十嵐「うっ!」
   体の傷が痛む五十嵐。
浅原「准さん!」
小梅「ここは部室です。絶対安静にしてて下さいね」
五十嵐「君が手当てを?」
小梅「医者の娘ですから」
五十嵐「そうか。ありがとう。ジェナスは!」
浅原「(申し訳なさそうに)取り逃がしてしまいました」
五十嵐「そうか。まぁ君たちに大した怪我が無くてよかったよ」
浅原「本当にボルタなんですよね?」
五十嵐「そうだな、申し遅れた、俺は五十嵐准、正真正銘のエレクトリック
 ボルタだ」
浅原「やっぱり本物なんだ……」
   涙を流す浅原。
五十嵐「どうしたんだ」
小梅「浅原、ファンなんです。ボルタの」
浅原「エレクトリックボルタ!」
五十嵐「そうか、ここは僕の活躍が放送されてる世界線か」
浅原「世界線?」
   五十嵐、やば!という顔をする。
五十嵐「ここだけの話にしてくれよ?」
浅原「はい?」
五十嵐「エレクトリックボルタは本当の出来事、ノンフィクションなんだ」
浅原・小梅「は?」
五十嵐「じゃないとさっきの出来事説明できないだろう」
浅原「でも監督とか助監督とかいるじゃないですか。クレジットに」
五十嵐「あれは全部嘘だ」
浅原「嘘ぉ?」
五十嵐「確かにカメラを持っている人間はおり、私も戦っているがそこに演
 出は存在しない、本当の悪と戦っているんだ。そのデータを映してるだけ
 なんだ」
浅原「嘘だろ……」
小梅「警察24時みたいなものって事か」
浅原「なんでお前そんな冷静なんだよ!」
小梅「あんたほど関心がある訳でもないから、かな?」
五十嵐「そして私はこの世界の人間ではない」
浅原「マジかよ……」
五十嵐「ジェナスを追ってやってきた。君たちとは違う地球からやってきた
 地球人だ。パラレルワールドと言えば伝わるかな?」
浅原「嘘だろ!」
五十嵐「まぁそう簡単には信じてもらえんだろうな」
浅原「でもボルタはジェナスなんて奴とは戦ってこなかったぞ!」
五十嵐「浅原くん、今は何月だい?」
浅原「7月ですけど?」
五十嵐「もうそろそろ私の放送、活躍が終わる。この地球での放送データも
 撮り終わってるはずだ。バイファス軍との激闘も終盤戦のはずだ」
   耳を塞ぐ浅原。
浅原「ネタバレ辞めて!ボルタが勝つと分かっててもそういうの敏感だか 
 ら!おもちゃの半額セールとか気を遣うから!」
五十嵐「まぁそういうことだ。だが、ヒーローは戦い続けなけなければなら
 ない。だから私はジェナスを追ってきた」
   浅原、頭を抱える。
浅原「とんでもない事を抱えちまった」
小梅「私もよ」
五十嵐「まぁ誰かに言っても信用せんだろうな異世界人の存在なぞ」
浅原「あ、そういやこれ返しとかなくちゃって」
   ボルタドライバーを返す浅原。
五十嵐「ありがとう。でももう二度と無茶をするんじゃないぞ」
浅原「ごめんなさい」
   頭を下げる浅原。
五十嵐N「この子が変身したって事は俺はもう……」
小梅「質問、いいですか?」
五十嵐「なんだい?」
小梅「あの怪人はなんなんです?何が目的でこの地球にやってきたんです
 か?」
五十嵐「奴の名はジェナス。惑星を滅ぼす事を趣味としているものだ。いく
 つもの惑星が幾度となく滅ぼされてきた」
小梅「滅ぼすってそんな……。漫画じゃあるまいし」
五十嵐「だが事実だ。俺はそれを止めるためにここにやってきた。この虹の
 降る星を守る為に」
浅原「あ、俺からも1つ聞きたいんですけど」
五十嵐「なんだい?」
浅原「ヒーローは戦い続けるって言ったけど俺がガキだった頃のヒーローも
 戦い続けてるんですか?例えばアマゾンズファイブとか?」
五十嵐「ああ。もちろん」
浅原「やっぱりみんなあの感触と戦ってるんだ……」
小梅「一真……」
浅原「准さんもこのまま戦い続けるんですか?」
五十嵐「そうだね。命の尽きる限り」
浅原「戦い続けるなんてそんなの虚しいだけですよ!」
五十嵐「君の言いたい事もわかる。でも正義がある限り悪はなくならない。どちらかが潰れるまで戦いは続く、そう答えたヒーローもいる。だけど私はこの世界から悪が滅ぶと信じて戦い続けるよ」
   拳を握りしめる浅原。
   そう言い残し、去っていく五十嵐。
 
〇公園(夜)
    ベンチに座る浅原と小梅。
浅原「とんでもない事聞いちゃったな」
小梅「あの怪人どうなるんだろ?」
浅原「きっとボルタが倒してくれるさ」
小梅「なんでそう言い切れるのよ。あんなにやられてたのに」
浅原「ボルタだから!」
小梅「はぁ?」
浅原「ボルタはボロボロになったかもしれないけど絶対リベンジする」
小梅「ヒーローは負けない、か」
 
〇浅原家・浴室(夜)
   風呂に入っている一真。
   右手をずっと見ている。
一真N「俺、戦っちまったんだよな。ボ 
ルタとして」
一真「もうやだな、戦うの」
 
〇浅原家・一真の部屋(夜)
   そっとボルタのソフビ人形をなで  
   る浅原。
 
〇森林公園(夜)
   ベンチに座り、ボルタドライバーを見つめる五十嵐。
五十嵐N「ボルタドライバーが彼に反応したという事は俺はもう……」
   五十嵐、ボルタドライバーを装着するがボルタドライバーは反応し  
   ない。
五十嵐「やはりか」
   ボルタドライバーをベンチに置く五十嵐。
五十嵐「このベルトはもう彼にしか反応しない……!」
 
〇100mはある上空(夜)
   ジェナスが街を見つめる。
ジェナス「最後の一撃は一体何だったんだい……」
   殴られた箇所をさするジェナス。
ジェナス「まぁいい。あのガキが変身したって事はそういう事だろうからね
 ぇ」
   さするのを辞めるジェナス。
ジェナス「そろそろ滅ぼしてもいい頃合いかねぇ」
 
〇浅原家・外観(朝)
   小梅が立っている。
   すぐに眠そうに浅原が出てくる。
浅原「おはよう」
小梅「寝てないの?」
浅原「そりゃ昨日あんなことがあったからな」
小梅「奇遇ね、私もよ」
浅原「こんな時でも学校があるってのも災害慣れした国らしいよ」
   街の方を見て何かに気づく小梅。
小梅「あれ何?」
浅原「ん?」
   そこにはジェナスが街を燃やす姿があった。
浅原「まずいぞ!」
   浅原、駆け出していく。
小梅「どこ行くの!」
浅原「街の方に決まってるだろ!」
 
〇街(朝)
   ジェナスが街をどんどん焼いている。
ジェナス「いやぁ気持ちいいねぇ」
五十嵐の声「待て!」
   五十嵐がやってくる。
ジェナス「ほう、今更」
五十嵐「これ以上お前の好きにさせる訳にはいかない!」
ジェナス「今の君には何も出来んだろうが!」
   攻撃を受ける五十嵐。
五十嵐「それでも俺はエレクトリックボルタだ!変身出来なくても心はエレ
 クトリックボルタなんだ!」
ジェナス「何をほざくか!変身出来ん貴様など一般人とそう変わらんだろう
 に!」
五十嵐「例えそれでも立ち上がる!誰かが助けを求める限り!」
ジェナス「そういう暑苦しいのは苦手なんだよねぇ!」
   五十嵐に攻撃を加えるジェナス。
五十嵐N「やられる!」
   ジェナスの攻撃を庇う浅原。
浅原「いてててて。やっぱり正義の味方って楽なもんじゃないな」
五十嵐「君は!」
浅原「准さん、俺、来ちゃった」
五十嵐「なんでやってきた!」
浅原「あんたが言ったんだ!」
五十嵐「俺が?」
浅原「誰かがやらないからって自分がやらない理由にはならないって准さん
 が言ったんだ」
五十嵐「そんなことを俺は」
浅原「俺は准さんの言葉に従う事にするよ」
五十嵐「浅原くん……」
浅原「あと、この街、好きだし。この街を泣かす奴は誰であれ許さない!」
五十嵐N「この子にもう一度賭けてみるか」
五十嵐「浅原くん!」
   浅原にボルタドライバーを渡す五十嵐。
五十嵐「今の君なら十分に奴と渡り合えるはずだ。この世界を救う為に、頼
 む」
浅原「分かりました、准さん。俺、戦います!こんな奴の為に誰かの犠牲を
 見たくない!」
   ボルタドライバーを装着する浅原。
浅原「俺がやるしかない!」
ジェナス「本命のご登場って所かい」
浅原「チェンジ!ボルタ!」
   エレクトリックボルタに変身する浅原。
   攻撃が通用しなかったことを思い出すボルタ。
ボルタ「やれるか?いや、やるしか!」
   ジェナスに立ち向かっていくボルタ。
ジェナス「攻撃が効かなかったのを覚えていないのかい?」
ボルタ「それでもやるしかない!」
   ジェナスを攻撃するボルタ。
ジェナス「ぐっ!」
   攻撃が命中し、たじろぐジェナス。
ジェナス「一体何が起こったというのだ!」
ボルタ「行ける!行けてるぞ!」
五十嵐N「やはりボルタドライバーは彼を選んだか!」
   ボルタ、攻撃を重ねる。
ジェナス「調子に乗るなー!」
   ジェナスが反撃に繰り出す。
   ジェナスの攻撃を受け、大ダメージを追うボルタ。ボルタサークル 
   も3つほど減っている。
ボルタ「ぐわっ!」
ジェナス「素人が調子に乗るからこうなるんだよ!」
   ボコボコにやられて壁に激突するボルタ。
ボルタ「俺は素人なんかじゃない!こうして変身した以上、俺はプロのヒー
 ローだ!誰かを救う為に戦う正義の味方なんだ!」
ジェナス「力のない奴ほどよく吠えるものだよ!」
   ジェナスが攻撃するもそれを受け止めるボルタ。
ボルタ「もうそんなちゃちな攻撃効かねえぞ」
ジェナス「な、なんだと言うのだ!」
ボルタ「お前には分かるまい!」
   ジェナスを攻撃するボルタ。
ボルタ「俺のこの拳にはこの地球に生きとし生けるすべての魂がこもってる
 んだ!」
ジェナス「黙れ!黙れ!黙れ!」
   再びジェナスの激しい攻撃を受けるボルタ。
ボルタ「まずい!このままじゃ!」
   ボルタサークルも1になり、点滅を始める。
ジェナス「もう終わりだねぇ!エレクトリックボルタ!」
   笑い始めるボルタ。
ジェナス「何がおかしい!」
ボルタ「言ったはずだ!これは1分って意味じゃねえ。今からの時間、一方的にお前をボコボコにするって合図だ!ここからは俺様の時間だ!」
ジェナス「まだ減らず口を!」
   ジェナスの攻撃に耐えるボルタ。
ボルタN「奴の懐に何としても!」
   攻撃に耐えながらジェナスの懐へと近づいていくボルタ。ボルタサ  
   ークルも点滅が早くなっていく。
ボルタ「おりゃあああああああ!」
   懐へと近づき、何度も攻撃を食らわせるボルタ。
ジェナス「ぐわあああああああ!」
   食らった場所からひび割れていくジェナス。
ボルタ「だから言ったんだ、ここからはボコボコにする時間だって」
ジェナス「貴様の様なガキに私が!私がぁ!」
   爆発するジェナス。
   シューという音と共にボルタの周りに水蒸気が発生し、浅原に戻る。
浅原「もう限界時間か!」
五十嵐「大丈夫か!」
   五十嵐が近寄ってくる。
浅原「ええ、まぁ、なんとか」
五十嵐「よかった、無事で何よりだ」
   小梅がやってくる。
小梅「(少し怒りながら)なんでもう変身しないって言ったのに変身した
 の?」
浅原「ごめん、でもああするしか方法は無くて」
小梅「私がどれだけ心配したか!」
浅原「それは本当にごめん。でも俺、こうやって元気だからさ。これからも
 大丈夫」
小梅「これからってどういう意味よ!」
五十嵐「ボルタドライバーは一子相伝なんだ。次の適合者を見つけるともう
 前の人物は変身できない」
小梅「じゃあ浅原はずっと戦うって事?」
五十嵐「そう言う事になるな」
浅原「俺なら大丈夫だよ、小梅」
小梅「絶対なんて保障どこにもないじゃない!」
浅原「俺は死なない。そういう風になってる」
   上空にブラックホールが発生し始める。
五十嵐「いけない!時空が歪み始めた!」
浅原「どういう事ですか!」
五十嵐「このままだとこの地球にジェナスのような怪物が流入してくるかもしれない!」
浅原「何とかしないと!」
五十嵐「しばらく帰ってこれないぞ!覚悟はできてるか!」
浅原「構いません!誰かの為に戦えるなら俺は!」
小梅「絶対、帰ってきて!それだけは!それだけは約束して!」
   笑顔になる浅原。
浅原「盆と正月くらいは帰ってくる、約束する」
五十嵐「突入するぞ!」
浅原「はい!」
   ブラックホールに突入する浅原と五十嵐。
小梅「絶対生きて帰ってきてね」
 
〇どこかの惑星のジャングル
   ジャングルの中を悪党に追われるエルフの娘。こけるエルフの娘。
   もうダメだ!と目を瞑るエルフの娘。
   浅原と五十嵐が上空から落ちてくる。
   五十嵐がエルフの娘を保護する。
浅原「行きます!」
悪党「何者だ!」
浅原「そうだな、俺はエレクトリックボルタ、か弱き者の涙に熱き電流を流
 す男ってところかな」

2話

3話


#創作大賞2024
#漫画原作部門


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