【夏休み特別企画】捕った魚を調べてみよう!【名前調べ編】
後編の【名前調べ編】では、前編で採集した魚を『タモ網1本ではじめられる魚とり』を使って名前を調べてみます。
⇒【採集編】はこちら
今回、種類を調べるのはこの2匹。
まずは、1匹めの銀色の小魚から。
まずは26ページの「よく似た小魚の見分け方」ページを見てみよう。
このページは、この書籍の大きな特徴でもあり、こだわった部分だ。
市販されている図鑑では、「コイ科」「ハゼ科」など分類別に魚が並んでいることが多い。魚の知識のある人であればすぐに目的の種類にたどり着けるが、そうでない場合、どこを見ればいいのかわからないことも多いだろう。
このページでは、そんなことにならないよう、捕れた魚の外見から目的の魚にたどり着けるように作っている。
さて、1匹めの特徴を「パッと見た印象・目につく特徴」のどれに近いか見ていくと…当てはまりそうなのは「体は細長く銀白色」だろうか?
ということで、該当ページである27ページを見てみる。
ぱっと見で似てそうなのは、「オイカワ」か「ウグイ」だろうか。
ただ、よく特徴を見るとそれぞれの特徴である「オイカワ:口先の両側に赤みがさす」「ウグイ:うろこは細かい」が一致しない。
もう一度1匹めをよく見ると、体の中央に黒っぽい線があるように見える。
同じページの下に掲載されている「体は細長くて褐色・体側に明瞭な縦帯がある」のほうに見た目が近いような気がするので、特徴を確認してみる。
ただ、「ウグイ:うろこは細かい」「カワムツ:背びれ前縁が赤い」「ヌマムツ:胸びれや腹びれ前縁がやや朱色」と、特徴が一致しない部分がある。
ページをめくってみる。
このページで見た目が似てそうなのは「タモロコ」だろうか。
確認のために特徴を見よう。
・尾びれ付け根に黒点がある →黒点がある!
・口先は丸い →口を開いているので分かりづらい…
・口ひげがある →体に重なってしまって見えにくいが、口ひげはある
・体は比較的ずんぐりしている →ややずんぐり?細長くはないかも
・ひれに色はなく、斑もない →ヒレは透明
この特徴から行くと1匹めは「タモロコ」で間違いなさそうだ!
念のため、同じページで似たような見た目の他の種類も見てみると、それぞれ一致しない特徴がある。
イトモロコ:背側に黒点が散在 →背中に黒点はない
モツゴ・ムギツク:口先から尾びれ付け根まで縦帯が貫く →縦帯はエラの後ろから始まっている
ヒガイ類:背びれに黒斑がある →背びれは透明で黒斑はない
これを見ると、やはり「タモロコ」で間違いないだろう。
そして、2匹め。
この記事を書いているヤマノが一番苦手なハゼっぽい見た目の魚…。
いずれもかなり姿が似ているので、どれも同じ種類に見えてしまう…
「小魚比べ」ページを見ていくと、「体は筒状で、背びれが2枚」に当てはまりそうだ。
ぱっと見の印象では、「ムサシノジュズカケハゼ」「ヨシノボリ類(トウヨシノボリ)」「ヨシノボリ類(カワヨシノボリ)」「ウキゴリ」あたりに似ているだろうか。
今回も、それぞれ4種の特徴と見比べていく。
一番最初の「ムサシノジュズカケハゼ」の特徴を見ていくと、ほとんどの特徴が一致して、完全に一致していない特徴はない。
① ムサシノジュズカケハゼ:体は太短い。受け口。眼から口にかけて暗色帯。体側に大きい暗色横帯が並ぶ。背びれに縞模様。尾びれに暗色小斑が点在。
これは「ムサシノジュズカケハゼ」で間違いないなさそう!と思うが、念のため他の種類の特徴も確認してみよう。
すると、残りの3種は全く一致しない特徴がある。
② ヨシノボリ類(トウヨシノボリ):眼から口先にかけて正面から見るとV字の濃赤帯 →濃赤帯はない
③ ヨシノボリ類(カワヨシノボリ):眼から口先にかけて正面から見るとV字の濃赤帯 →濃赤帯はない
④ ウキゴリ:頭部が縦扁。大きく避けた口。体側に斑紋が並ぶ。尾びれ付け根に円い黒斑。尾びれに細い弧状横帯。 →どれも一致していない
こうやって特徴を見てみると、パッと見で「似ているかな?」と感じた④のウキゴリは全然似ていないことがよくわかる。
この2匹めは「ムサシノジュズカケハゼ」のようだが、念のため詳細な解説ページも確認してみよう。
1枚めのきれいな写真とは似ていないが、2枚め、3枚めの写真と比べるとそっくり!
分布や生息場所などの他の情報を確認しても、今回出かけた川で捕れた場所と一致するので、「ムサシノジュズカケハゼ」で間違いなさそうだ。
ちなみに、この図鑑の写真部分もこだわりポイントがいくつもある!
①「観察ケース入りの写真」を使用
市販の図鑑は「標本写真」や「水中写真・水槽写真」を使っていることが多いが、この図鑑で使っている写真はほとんどが「観察ケース入り写真」になっている。つまり、実際に魚を捕って観察している状況と同じ状態で比べることができる。
標本では生きている状態から色が変わっていたり、屋外の自然な光の下と水中や室内の光では、同じ魚でもだいぶ見え方が違うこともあるので、より観察している状況に近い写真を使っている。
②「様々な状態の写真」を使用
市販の図鑑では、1種類に使われている写真は1枚か2枚で、見栄えのする「婚姻色のオス」が使われていることが多い。ところが、実際に魚捕りで数多く捕れるのは、そういった婚姻色がはっきりと出た雄ではなく、未成魚だったり雌だったり、婚姻色ではない雄だったりする。魚の状態で見た目が異なる場合も多いため、この図鑑ではできるだけ様々な状態の写真を使った。
このため、「ムサシノジュズカケハゼ」のケースのように、「1枚目の写真と見た目が違うから別の種類!」と判断するのではなく、他の写真とも比べてみてほしい。
今回のように、できるだけ見た目から名前が分かるように作っているので、ぜひ近くの水辺で観察ケースとこの本を見比べて、魚の種類を調べてみよう。
もちろん、最近はスマートフォンなどで気軽に撮影もできるので、捕れた魚を撮影し、家に帰ってからこの本を片手に種類を調べることも可能だ!