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図鑑編集者が伝える、葉っぱから木の名前を調べる方法

山と溪谷社で図鑑を作っている編集者が、葉っぱの図鑑で落ち葉の名前を調べる方法をお伝えします。

先日、公園の砂場で子どもと砂遊びをしていると、フジ棚がすっかり落葉しているのを見た子どもが、
「葉っぱがなくなったねぇ」
と言って、一枚の落ち葉を手に取りました。

見ると、それはフジの葉ではなく、少し離れた木から飛んできたケヤキの落ち葉でした。
「風が運んできたんだねぇ」
と伝えると何やら目をぱちくりさせている様子(自然好き親フィルターあり)。

最近では落ち葉プールなどを設けている公園も見かけますが、子どもと一緒に落ち葉の名前を調べてみるのもおもしろいはず。というわけで、弊社刊行の『くらべてわかる木の葉っぱ』(林将之著)を使って、どのように調べていくか実践してみたいと思います。

気になる落ち葉発見!

今回、調べてみようと思うのは、こちらの落ち葉。手のひらくらいのサイズがありました。

さっそく、本で調べてみます。この本には巻頭に検索表があるので、そのページを開いて…

複雑っ! と思われたでしょうか。
でも、やってみると意外にかんたんに辿ることができると思います(後半でショートカットするやり方もお伝えします)。

まず左上の「START」からはじめます。最初の質問は「つる植物」か「自立する樹木」か。つる植物というのは、フジのように何かに巻きついて生える植物のことですね。この落ち葉は街路樹なので「自立する樹木」を選んで、進みます。

次の質問は、針葉樹から広葉樹か。マツのような針状の葉っぱか、平べったくて面状のいわゆる葉っぱらしい葉っぱか、という質問です。ここは後者なので、広葉樹を選びます。

次の質問は「複葉」か「単葉」か。聞きなれない言葉と感じた方もいるでしょうか。本書には「葉で見分ける樹木観察の基本10」というページがあって、そこで解説されています。

ひと口に葉っぱといっても、こんなに色々な形があるんですね。
複葉というのは左下の羽状複葉などのように、複数枚の葉(小葉)が1セットになった葉っぱのこと(複葉の場合、この1セットで一枚の葉っぱになります)。同じパターンの葉のセットがついている感じで、見慣れるとすぐにわかると思います(複葉の場合は、真ん中の軸が落ちてたり、軸に葉がついた状態で落ちていたりします)。

今回は明らかに1枚で構成されている葉っぱなので、単葉を選びます。

次の質問は、切れ込みが入るかどうか。もう一度、落ち葉の画像を見てみます。

切れ込み、ありますね。ということで、切れ込みありに進みます。

分裂葉p12に進んでください、と出ました。もう一息です。

これがp12の分裂葉の検索表です。
最初の質問は、「葉は対につく」か「葉は交互につく」か。
「葉で見分ける樹木観察の基本10」に説明があるので、見てみます。

葉のつき方は植物の名前を調べるときに、ほぼ必ずチェックしておきたいポイントです。シンプルに葉が対につくか、交互につくか、なのでわかりやすいと思います。落ち葉の場合は、下のほうにある枝をちょっと見てみて。

どの枝を見てもいいのですが、こんなふうに葉がついていたところには芽や跡があるので、葉っぱが落ちていても確認できます。高いところにあって見えなければ、落ちている枝で確認してもいいと思いますよ。もし、確認し損ねていたら、互生と対生の両方のページを見ても、たいした手間ではないはず。

次の質問は、葉の裂け方は特殊か、特殊でないか。下に特殊な葉っぱの具体例が示してあるので、こういう葉っぱでなければ「特殊でない」に進んでOK。

その次の質問が「葉は15cm以上」か「葉は15cm以下」か。
今回の葉は手のひらサイズくらいの大きな葉だったので、15cm以上を選びます。余談ですが、こういうときに自分の手の大きさが何センチくらいか覚えておくと役に立ちます。

ということで、ようやくたどり着きました!
これをみると、スズカケノキ類の葉っぱに似ていますが、本文を見て確認してみましょう。

互生で大型の分裂葉のページは全部で3ページ。前の1ページは明らかに違う葉だったので、こちらのページを見てみます。

この中だったら、モミジバスズカケノキがよく似ている気がします。もう一度、写真を確認。

落ち葉なので色はちがいますが、ほぼ間違いないのではないでしょうか。念のため、解説文も読んでみますが、特徴もぴったりです。

この本は身近に見られる樹木はだいたい網羅しているので、身近で見つけた葉っぱであれば、たいてい載っていると思います。

ということで、名前調べ完了!

検索表たいへん!という方のためのショートカット

ここまで検索表でたどってきて、けっこうたいへん!と思われた方もいるでしょうか。慣れればスラスラ進めるとは思うのですが、ここで、もう少しかんたんに目当てのページにたどり着く方法をお伝えします。

それはシンプルに「目次から調べる」です。葉っぱの特徴ごとにカテゴリーわけされているので、先ほどお伝えした「単葉・複葉」「分裂葉・不分裂葉(切れ込みが入るかどうか)」「対生・互生(対に生えるか、互い違いに生えるか)」などが理解できれば、ここから目当てのカテゴリーを見つけることができます。

大きなカテゴリーが「不分裂葉・落葉樹」「不分裂葉・常緑樹」「分裂葉」(ここまではいずれも単葉)「掌状複葉・3出複葉」「羽状複葉」「つる植物」「針葉樹」の7個。

今回の葉っぱは「分裂葉」なので、そこを見ると…

まず対生か互生で大きく分かれて、今回は互生なので右側のどこか。
これのどれかに該当するかは判断が難しいかもしれませんが、全部見たとしても5見開きなので、たいした労力ではないのではないでしょうか。(今回の葉は5つに分裂する=5裂なので、3裂のページを除外することもできます)
ページごとに似た種類の葉っぱを並べているので、一見してこのページは違うな、と判断できると思います。

ということで、興味のある方はぜひチェックしてみてください。


好評3刷!
日本国内で見られるおもな葉っぱ約550種類をくらべて紹介。
似ているもの同士を見くらべられて、ちがいが一目瞭然!

写真・文 林将之
定価  2035円(本体1850円+税10%) 
B5版 160ページ

内容紹介


公園や野山で「これは何の葉っぱだろう?」と思った事はありませんか?
本書は、「三角形の葉っぱ」「丸い葉っぱ」など直感的に分かりやすい切り口で、似ている葉っぱをひとつのページにまとめ、その違いを紹介。
一見開きによく似た8種類前後の葉っぱを紹介しているので、見つけた葉っぱと本書を見比べながら調べることができます。

葉っぱはできる限り実物大で掲載、縮小掲載の場合は倍率を示しているので、絵合わせもカンタンです。冒頭には検索表も用意しているので、葉っぱのつき方や鋸歯の有無などから調べることもできます。


掲載種数は約550種類で、身近な種類はほぼ網羅。樹木を覚え始めの方にもぴったりです。

著者紹介

林将之
1976年、山口県田布施町生まれ。沖縄県恩納村在住。千葉大学園芸学部卒業。造園設計を専攻中に樹木の見分け方を独学。葉をスキャナで撮影する方法を考案し、植物調査をしながら国内外の森を巡る。出版社勤務後に独立し、初心者にも分かりやすく伝えることをテーマに、20冊以上の図鑑を制作。主な著書に『葉で見わける樹木』(小学館)、『樹木の葉』(山と溪谷社)、『琉球の樹木』(文一総合出版/共著)、『葉っぱはなぜこんな形なのか?』(講談社)『沖縄の身近な植物図鑑』(ボーダーインク)など。樹木鑑定webサイト「このきなんのき」管理人。趣味はスノーケリング、スポーツ。


★『ファンベース』の著者、さとなおさんにも『くらべてわかる木の葉っぱ』をご紹介いただいております。