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東京と曲

相変わらず僕は大丈夫です

くるり/東京

君が素敵だった事
ちょっと思い出してみようかな

くるり/東京

くるりの岸田さんは、『忘れてた君に電話をしようか?』という状況を歌う。

あい変わらず。という歌詞の存在が岸田さんの京都での過去を想像させる。

実際にバンドメンバーに起きた思い出も重ねて、リアルに、エモーショナルに、上京を歌う。そこに東京での生活の葛藤や不安、現在と過去の狭間で揺れ、故郷の恋人を想う心が映しだされている。

ノスタルジーに回想する東京。


住んだことはないが、きっと東京は自分の嫌な部分も、何にもかもを受けてれてくれると思っている。

高田馬場に住む、アーティスト仲間の家に足を運んだ日。彼女が言っていた。

「ここは、地元でうまくやれなかった人が沢山いると思うよ」

夢を持って上京した者。仕事の都合上来ざるを得なかった者。そこに行きたい大学があった者。

はみ出し者。

どんな者も東京は受け入れてくれる。

個性も、人間性も、価値観も全て受けいれてもらって。ゆくゆく皆、東京の一部に。

こうして今日も、私は東京に溶けてゆく。

もしも東京

浅野いにお先生の溶けていくという表現は、すごく秀逸だ。


テーマは東京

これまで群馬で生まれ育っているが、東京という町は、あまりにも異質で不思議な存在だと常日頃感じる。

それは物価や収入や人口移動、密度的な側面からの異質ではなく、もう少し感覚的なもので。

スピリチュアルな話には持っていきたくありませんが、東京が纏っているオーラというか、東京内にその瞬間、存在する人間たち(全体を集合体としてみた時の)空気感が、他の都市や都道府県と比べても異質だ。

だからこそ、『東京』をテーマにした作品はどんなものなのか、とても気になって、手を出さずにはいられなかった。

世に存在する多くのアーティストは、『東京』をどう捉え、どのように表現するのか気になった。


重く切ない東京


10分を超える東京での失恋ソングは珍しい。

僕と別れて君は仕事を辞めて
新幹線に乗って郡山へ帰った

銀杏BOYS /東京

冒頭、彼女と別れて自暴自棄な主人公が描写される。
2人で過ごしていた東京から彼女は、郡山へと帰ってしまう。

僕は僕以上に君を愛せていたのかな
僕はそんな君以上に君を愛せていたのかな

銀杏BOYS /東京

東京で想った愛を歌う。何度も何度も君と僕の、ふたりの、愛について歌う。

銀杏BOYZの重く切ない東京。

どちらの人も聴ける東京

『花束みたいな恋をした』で、クロノスタシスが流れた。

『明け方の若者たち』では、ヤングアダルトやエイリアンズと並んで、東京が流れた。

きのこ帝国のセカンドアルバムの一曲目。佐藤さんの力強くもどこか寂しそうな声から始まるこの曲は、大切な人との出会いを歌う。

現代ビジネス編集部の記事に、この曲に対して佐藤さんにインタビューしているものがあったので引用させていただこう。

既存の「東京」という曲へのカウンターソングみたいなものを作ろうという考えがあったんです。

佐藤千亜妃

plentyやくるりとは違った東京を、カウンターソングを作ろうとしていたという衝撃的な事実が判明した。

《日々あなたの帰りを待つただそれだけでいいと思えた》って歌い出しも平和な描写じゃないですか。

佐藤千亜妃

シティ感でも寂しさでもない、今まで歌われてこなかった東京の側面を、自分の体験した感情としてアウトプットできました。

佐藤千亜妃

先ほどの2アーティストも含め、他のバンドとは異なる視点。今までの『東京』という曲にはなかった『東京の見つめ方』を佐藤さんは模索し、曲として完成させた。

田舎者が聴く「東京」もしくはシティーボーイが聴く「東京」しかなかったので、どちらの人も聴けたらいいなと思って作りました。

佐藤千亜妃


そうじゃないと、「東京」という歌が、みんなのものにならないなと。

佐藤千亜妃

佐藤さんの東京への視点は独特な捉え方だが、そこに彼女の優しさが込められていると感じる。

きのこ帝国の誰にでも当てはまる、ごく普通の日常のような東京。

みんなの東京

見慣れた街 見慣れない人だらけなのに
僕らお互いを知ってる 良いところも 逆も

SUPER BEAVER 東京

渋谷龍太さんは、人が集まる東京だからこそ。

愛されていて欲しい人がいる
なんて贅沢な人生だ

SUPER BEAVER 東京


誰にでも心にある愛を歌う。

東京を象徴しているロボットみたいなビルの街
目一杯 精一杯の
働く人で今日もごった返してる
信号待ち。足を止めて誰かが口笛を吹いてる
とぎれとぎれの旋律だけど
なぜかしら 少しだけ癒されてる

Mr.Children 東京

櫻井さんは東京らしさを、これでもかと思うほど歌詞に表現しつつ、

描いた夢、理想を追い続けたって 多分
ものにできるのはひとにぎりの人だけど
あと少し頑張ってみようかな

Mr.Children 東京

人が多いからこそ、厳しい現実を捉えながら挑戦していく姿勢を歌う。

それでもいつか可能性が消える日が来ても
大切な人はいる

Mr.Children 東京

この街に大切な場所がある
この街に大切な人がいる

Mr.Children 東京

そして、東京でもし自らの挑戦が思うような結果を迎えなくても、可能性が消えたとしても、できた大切な人や生まれた大切な場所が存在すると、そう前向きに昇華している。



誰かが夢を追って向かい。
誰かが地元と重ねながら過ごし。
誰かが故郷に帰り、誰がか別れを悲しむ。

そして、誰かの故郷でもある。

人が多いからこそ、人生のストーリーも膨大にある場所。そこで、感じたものを「東京」と名付け、表現するアーティストたちの作品。

同じ題名なのに十人十色だった。

これからも東京という場所で生まれる音楽。そして、東京と名付けられた音楽に注目して見てみたい。

そこには、誰かの人生が鮮明に描写されているかもしれないので。

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