見出し画像

ジョブ・クラフティングがシニアの職務適合性を改善する

こんにちは。今回は高齢社員によるジョブ・クラフティングの効果について解説します。
これまで何度か触れたジョブ・クラフティングは高齢従業員のパフォーマンス向上に効果があるとする論文です。

今日の一言サマリ

ジョブ・クラフティングは高齢社員の職務適合性を高める


参考にした論文と書籍

Moghimi, D., S. Scheibe, and N. Yperen. 2017. “Job Crafting in Aging Employees.” In Encyclopedia of Geropsychology, edited by Nancy A. Pachana.
高尾義明、2024、『50代からの幸せな働き方ー働きがいを自ら高める「ジョブ・クラフティング」という技法』、ダイヤモンド社



おさらい:ジョブ・クラフティングとは

ジョブ・クラフティングとは、従業員が自発的に自らの仕事を再設計し、より自分のニーズや能力に合った形に調整することを指します。

Person-Job Fitとは

P-J Fit(Person-Job Fit)は、個人の能力と仕事の要求とが(Demand-Ability Fit)、また個人のニーズと仕事が提供するリソースとが(Needs-Supply Fit)、それぞれどれだけ一致しているかを示す概念です。
P-J Fitが高いほど、従業員は自分が仕事に適していると感じ、仕事に対する満足度やパフォーマンスが向上するとされています。
Moghimiらは、ジョブ・クラフティングの成果として、P-J Fitが高まると主張しました。

高齢社員がジョブ・クラフティングを行う意義

高齢になると、従業員の仕事に対するニーズや能力に変化が生じることがあります。
例えば、若年時にはキャリアの発展や昇進に重きを置いていた従業員が、加齢とともに安定性や仕事の意味をより重視するようになることがあります。こうした価値観やニーズの変化も、従来のP-J Fitを再考する必要性を生じさせます。

ジョブ・クラフティングによって従業員自身が仕事のタスクやリソースを再調整することで、年齢に伴う能力やニーズの変化に柔軟に対応し、再びP-J Fitを高めることが可能です。Moghimiらによれば、高齢従業員がジョブ・クラフティングを行うことで、ワーク・エンゲージメントの向上が確認され、職務パフォーマンスを維持・向上させる効果も期待されています。


実践への示唆

ビジネスの現場では、今回の知見をどのように活用できるでしょうか。

高尾(2024)によれば、高齢社員がジョブ・クラフティングを実践するためには、社員自身が人の能力は年齢に関係なく成長する、そして自分の仕事はジョブ・クラフティングを通じて変えることができるというマインドセットを持つ必要があるそうです。
さらに、自分の好きな仕事や仕事で大切にしている価値観などの自己認識を高めることもジョブ・クラフティングを実践する上で重要です。
そして行動の小さな変化からジョブ・クラフティングを実践しその結果を振り返ることでジョブ・クラフティングの習慣を定着できると言います。

高齢社員を部下に持つマネージャーは、次の3つの心がけが重要です(高尾2024)。

  1. 高齢社員が変わる可能性があると思う(マインドセット)

  2. 対象の社員の立場を考慮し個人に合った対応を取る

  3. マネージャー自身がジョブ・クラフティングをしている姿を見せる

今回は高齢社員にとってジョブ・クラフティングが必要となる背景と、ジョブ・クラフティングによって高齢社員のP-J Fitを高められる可能性を見てきました。
ジョブ・クラフティングによって活躍するシニアが増えることを願っています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?