THE青森暮らし190

☆うちのバッチャ全文公開☆ 羽毛布団を家で洗うとこうなる。

 先日、自分がダニアレルギーであることを知った私は、心の底から湧き上がる「羽毛布団の洗濯したさ」にとらわれました。


 しかし、羽毛布団のクリーニングにはけっこうなお金がかかります。


 なので、私は湧き上がる力のままに羽毛布団を風呂桶に投入し、ズボンの裾をまくり、ぬるめのお湯を羽毛布団にぶっかけて中性洗剤でわっしわっしと。気付けば足で踏みながら、巨大な羽毛布団をもみ洗いしていたのでした。


 何かに取り憑かれたように無心に羽毛布団を洗い、「布団に棲むダニよ、いなくなれ!」と、足で踏みまくっていると……まるで、新手のスポーツに参加でもしたかのような心地よい疲労感を感じ、汗が額から流れてきました。


 「こんな、羽毛布団を風呂場で洗っているような現場をバッチャに見られたら大変だわ……何せ、高価な羽毛布団ですもの。できることなら、バッチャが気付く前にこの作業は完了させなければ!」

 そう思って風呂桶から布団を引き上げようとすると、

水を吸った羽毛布団が並々ならぬ重さになっていることが判明。
「ば……馬鹿な!」


 馬鹿なのは自分の方なのに水を吸った布団を「あり得ない」と嘆きながら、どうにか引き上げて足で水分を揉み出し、手の力で絞れるだけ絞って洗濯機の脱水にかけました。


 すると、スタートボタンを押してすぐに洗濯機がガタガタと揺れ、洗濯槽の中身ではなく自らが回転しそうになったので慌てて停止ボタンを押すと、以前テレビで見た「水を通さない素材を洗濯機で洗った際の、洗濯機が壊れるシーン」が脳裏をよぎってきました。


 「たしかあの後、洗濯機は自らが回転しながら部屋中を転がり回っていたはず!」


 途端に身の危険を感じ、布団を風呂場に戻して、布団をまるでアフリカの女性のように風呂場の手すりに結わえ付けて、ギュウギュウと素手で絞る私。
 絞った羽毛布団を大型のビニール袋に入れ、誰にも見られないように二階の部屋に上がりました。気分はまるで犯罪者です。

 「昔は、布団は屋根の上で干していたはず!」


 そう思ってビシャビシャの羽毛布団を屋根の上に干すと、布団から出た水で足が滑って屋根から転げ落ちそうになりました。


「あぶない、あぶない!」
 窓につかまりふと気付くと、久しぶりに屋根から見た風景は昭和五十年代の、屋根の上に布団を干してその上でお昼寝をしていた幼い頃の光景と変わらず、なんともいえない安らぎに満ちていたのでした。

 羽毛布団が濡れていたのでお昼寝はしませんでしたが、そこではとても心地良い風が吹いていました。
 羽毛布団は結局乾かず、最後はコインランドリーでもう一度洗って、乾燥機にかけたのですが。布団のために滝のような汗をかいてその後に見た風景は、私にかけがえのない一日をプレゼントしてくれたのでした。

読売新聞青森県版にて、毎週土曜日山田スイッチの『THE・青森ぐらし』連載中! 連載12年目を迎えました☆

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