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☆うちのバッチャ全文公開☆~一瞬、ボケました~

私が結婚する前に「結婚についてのアドバイス」をくれた御年60歳の先生が、こう言ったわけですよ。

「いい? スイッチさん。お嫁に行ったら絶対、『晩ご飯はアタシが作ります』なんて、言っちゃダメよ。いい?言ったらその先ずっと、晩ご飯を作り続けなきゃいけないのよ?言わなきゃ、作らなくてもいいんですもの。それに、女は台所を取られちゃおしまいなのよ。すぐにやることがなくなってお宅のおばあちゃん、ボケて死んでしまうわよ」

「そうなんですか!」
「お宅のおばあちゃんはずっと、主婦をやって来られたんですもの。そうよ!」

そうか……!
 
バッチャは義母が会社勤めをしていたので、嫁が来たときに主婦を引退せずに、ずっと現役を続けておりました。なので、料理の腕が鈍るということもなく、ケンさんが育ち盛りだったこともあって、何故か私が遊びに行くと、お年寄りが作るとは思えないような「ビフテキ」とか、「トンカツ」とかを出してくれていたのでした。

「何故、ビフテキ……?」と驚いたのですが、バッチャの買ってくれる肉は脂が乗っていて美味しいのです。

バッチャが未だに現役で続けていることは無数にあります。朝晩のご飯支度、植木の手入れ、ひ孫と遊ぶことと畑仕事、漬け物作り、裁縫、そして雪かき……。
80歳まで現役で続けていたら、確かにボケる暇がなさそうですね。

同じ一日をほとんど、「新聞を読むか寝るか」で過ごしているうちのジッチャは。私が嫁に来る前に一瞬、ボケましたから。


ジッチャがボケずに済んでいるのは、ひとえに私のおかげなのです。

突然、せわしない嫁が乱入するようにやって来て、
ブラジルに行くだのメキシコに行くだの言い出して、孫のケンさんを連れて海外にサンマを売りに行き、帰ってきたら今度は妊娠していて、10ヶ月後にジッチャのひ孫を産み落としたので。ジッチャは今、ひ孫が可愛くて、ボケてる暇がないのです。

この嫁は……大人しくしていると思えばうっかり、居間からボヤを出してしまったり。事故に遭ったりしているので。

そういった死の恐怖と隣り合わせにされると、ひょっとすると。長く生きたおじいちゃんであっても、生きてることを実感できるのではないでしょうか。


「生きていてよかった……!」


こう思えるのは、やはり、

死に直面した時に感じるものなんじゃないかと。


それはさておき、最近我が家ではめっきりビフテキを食べる機会がなくなりました。どうやら嫁入り前のあのごちそうは、バッチャが私を嫁にするための、エサだったみたいなのです。

ドグドグ。

毎日、楽しい楽しい言ってると、暗示にかかって本当に楽しくなるから!!あなたのサポートのおかげで、世界はしあわせになるドグ~~~!!