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厚労省はケアマネジメントの有料化には反対⁉

このページをご覧いただきありがとうございます。
山田方式ケアプラン構造こと、山田準一です。

 2021年現在、ケアマネジャーの仕事ケアマネジメント(居宅介護支援費)は利用者負担がなくご利用者は無料で受けられます(全額公費)。
 3年ごとの公的介護保険制度改正でケアマネジメントの利用者負担導入について検討されていますが、毎回見送られています。

今回はそのことについて私見を書きます(新説)。

ギリシャのようにならないため

 ギリシャは2011年に財政危機を起こしています。2009年の政権交代を機に、ギリシャの財政赤字が公表数字よりも大幅に多かったことが解りました。
 財政危機の大きな原因は、偏った公務員システムと年金制度です。

参考文献:マネスク

 2009年日本も政権交代がありました。日本も財政赤字が公表数字より多くて、財政破綻するのではないかという空気になりました。
 そうした中で始まった2010年社会保障審議会介護保険部会。メインの検討は、給付と負担のバランス。

その1つが「ケアマネジメントの利用者負担導入」

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出典:社会保障審議会介護保険部会意見取りまとめ

財務省の主張

 2021年・令和3年度早々に財務省はケアマネジメントの利用者負担導入をあらためて主張
「ケアマネジャーに公正中立性の問題が存在」と指摘

理由は「ご利用者が自己負担を通じてケアプランに関心を持つ仕組みとすることにより、ケアマネジャーのサービスのチェックと質の向上にも資する」

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出典:財政制度分科会(令和3年4月15日開催)資料一覧

 国家予算の約3分の1を占める医療や介護、年金などの社会保障費

なので財務省は主張します

参考:財務省・これからの日本のために財政を考える

利用者負担導入は賛否両論

賛成派の意見
○ 保険料の高騰により企業や現役世代の負担は限界に達している。制度の持続可能性を確保するために見直すべき。
○ 能力のある人には負担して頂くことも重要。
○ 利用者負担を導入すれば給付費の適正化につながる。低所得者への対応は高額介護サービス費で対処すべき。
○ ケアマネの処遇改善を図るのであれば、財源確保のために利用者負担を導入すべき
○ ケアマネの専門性を評価する意味で利用者負担を求めるべき。家族・利用者にケアマネジメントへのコスト意識を持ってもらうため、一定の負担は必要。
○ 利用者の意向を反映するべきとの圧力については、ケアマネの専門性の向上やケアマネジメントの標準化などで対応すべき。各サービスには定率の利用者負担があるので、給付費の増加には直結しない。
○ 施設給付にはケアマネジメントが包含されており、均衡を図るべき。
○ 制度創設から20年が経ち、サービス利用も定着するなかで、他のサービスでは利用者負担があることを踏まえ、見直しを実施すべき。
●制度創設から10年を経過し、ケアマネジメント制度がすでに普及・定着している
●小規模多機能サービスや施設サービスなど、ケアマネジメントが料金に含まれているサービスでは、既に利用者が必要な負担をしている
●利用者自身のケアプランの内容に対する関心を高め、自立支援型のケアマネジメントが推進されるのではないか
●実際に利用者がそのサービスを受けているので、それに応じた負担をしてもらうのはやむを得ない

反対派の意見
○ あらゆる利用者が公平にケアマネジメントを活用し、自立した日常生活の実現につながる支援が受けられるよう現行制度を堅持すべき。
○ 利用する側が受ける不利益について十分に議論すべき。気兼ねなく相談できる環境を確保すべき。
○ 介護保険制度を初めて利用する人にとっては、ケアマネジャーのサポートがないとサービス利用につながりにくい。利用者負担を導入すれば、サービスの利用抑制が生じる危険性がある。
○ 有料だからとサービス利用をやめてしまう人が出る。
○ ケアマネジメントにより自立支援の調整が図られてきており、今後、単身世帯の増加や年金水準の低下も懸念されるなかでは、相談支援でインフォーマルサービスにつなげることも重要となる。
○ ケアマネは保険者の代理人、市町村の代わりを担う立場とも言え、利用者負担を求めることになじむのか疑問。
○ ケアマネジメントは過剰サービスを抑制する役割を担うが、利用者負担を導入すると、利用者の意向を反映すべきとの圧力が高まり、給付費の増加につながる。
○ 利用者や家族の言いなりにならないか、セルフケアプランが増加し自立につながらないケアプランとならないか、などの課題がある。
●ケアマネジャーによるケアプランの作成等のサービスは介護保険制度の根幹。利用者負担の導入は制度の基本を揺るがしかねない
●ケアマネジメントは介護保険の入口。ここに利用抑制がかからないようにすべき
●必要なサービス利用の抑制により、要介護の重度化につながりかねない
●自己負担が導入されたらケアマネジャーが利用されず、適切なサービス利用ができなくなる
●セルフケアプランやサービス事業者によるケアプラン代行業務が多くなり、自立支援を抜きにした生活を楽にするサービス利用に流れ、かえって介護費用が増大する
●セルフケアプランが増加すれば、市町村の事務処理負担が増大する
●低所得者ほど専門職によるケアマネジメントが必要。自己負担を導入するとその機会が奪われる

○の出典:JOINT介護のニュースサイト(2021.4.17居宅介護支援、自己負担を導入すべき? 賛成・反対意見のまとめ)

●の出典:介護求人ナビ(2015.9.24「ケアプラン作成の有料化」が、ついに現実に? 賛成の声・反対の声)


ケアマネジャーのアンケートでは

反対71%、賛成14%、どちらでもない15%

出典:みんなの介護(第709回 ケアマネ協会と財務省の間で揺れるケアプラン有料化! 自立支援とケアプランの質向上…どちらをとれば?)

ケアマネジメントの利用者負担導入については、公的介護保険制度に携わっていない方と公的介護保険制度に携わっている方、介護保険料を未だ納めていない方と介護保険料を納めている方、公的介護保険を未だ受けていない方と公的介護保険を受けている方で、それぞれ考え方が違うと思います。

最強省庁・財務省が連敗

 財務省は中央省庁最強。各省庁の予算を決める権限も持つ組織で、国民からお金を取れる権利がある省庁です。その最強省庁・財務省がケアマネジメントの利用者負担導入を繰り返し主張しているのに、なぜ見送られるのか。
財務省の主張はメディアで報じられますが、公的介護保険担当省である厚生労働省はどう思っているのか。

ずる賢い厚生労働省

 厚生労働省は、財務省から「社会保障費使い過ぎ。削るよ。」と言われ、他省庁からも「厚労で使い過ぎだから、おれらの所に回ってこないんだよ。削れよ。」と言われていると思います。
厚生労働省も社会保障費を抑えたい
 しかし、厚生労働省は財務省のような解りやすいコストカットではなく、
従事者の善意にたより社会保障費を抑えるやり方です。
 財務省の指摘理由「ご利用者が自己負担を通じてケアプランに関心を持つ仕組みとすることにより、ケアマネジャーのサービスのチェックと質の向上にも資する」。利用者負担になるとご利用者のチェックが厳しくなります。ケアマネジャーは何をする人かと問われます。ケアマネジャーの仕事内容とケアプランの中身をご利用者・ご家族に解るように説明できる力が必要になります。
 ケアマネジャーは、ただで何でもやってくれる人。無料だから安易にお願いできる。ケアマネジメント以上のサービスを無料で行ってくれるケアマネジャー、厚生労働省からすれば都合がよいです。
厚生労働省は、ケアマネジャーの善意を都合よくコントロールしたい
制度改正・報酬改定するたびにケアマネジャーがやること増えていませんか。

決着は

 ケアマネジメントの利用者負担導入は、見送りのまま続くのでしょうか。利用者負担導入されるのでしょうか。いつ決着するのでしょうか。
 利用者負担導入されるとすれば、厚生労働省がケアマネジャーの善意をコントロールできなくなった時だと思います。

後記

 この記事を書くにあたり、2010年の介護保険部会資料や議事録、私が持っている当時の資料を読み直しました。2009年から2011年に当時の介護保険部会長や協会会長と懇談したことを思い出しました。
 ケアマネジメントの利用者負担導入は最初に各団体から提言された。2010年4月ケアマネジャー団体からも利用者負担導入の提言が出された。途中から財務省が利用者負担導入に加勢した。政治も絡みだした。
現場のケアマネジャーが見えないところで綱引きしているようです。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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