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#10:サッカークラブの財務構造上の問題

二度目の登場となります。「山田塾」塾生の深谷興士です。
ゆる〜く参加している山田塾ですが、再度note執筆の機会をいただきましたので、真面目に纏めました。読んでいただけると嬉しいです。そして「スキ」や「フォロー」をお願いします!

それでは本題に入っていきます。
今回は、ライバルクラブ財務比較の総括と、欧州5大リーグの全体像について、熱い議論が繰り広げられました。

1.ライバルクラブ比較(おさらい)


過去3回にわたって、ライバルクラブの比較をしてきました。過去のゼミを振り返りながら、改めて、それぞれの特徴を比較していきます。

■マンチェスターユナイテッド(欧州4位)vsマンチェスターシティ(欧州6位)


同じマンチェスター(50万人都市)を拠点にしている両チーム。ホームスタジアムの距離は東京ドームと神宮球場と同じくらいという近さです。
売上規模は600億円〜900億円を推移しており、直近ではマンCがマンUを抜いたとのことです。(J1リーグの平均は50億円)
マンUのスタジアムは、歴史を感じられ、まさに街に溶け込んでいる感じ。チケット代も高く、シーズンチケットは子どもや孫に受け継がれるほどバリューがあります。
マンCは、2008年に中東UAEの投資グループに買収されて以降、豊富な資金力を活かして強豪になったクラブ。財務状況を見ると、実は財務コントロールに長けていて、売上と支出がキレイに連動しています。
ちなみに、外資マネーと言えば、マンUもアメリカの実業家マルコム・グレーザーに買収されていますし、チェルシーはロシアの富豪アブラモヴィッチに買収されています。
外資マネーは、プレミアリーグの1つの特徴と言えます。

■バイエルンミュンヘン(欧州3位)vsボルシアドルトムント(欧州12位)


ドイツブンデスリーガのライバルクラブですが、売上規模としては少し差があります。
バイエルンは事業収益が高く安定し、最近はスタジアム収益を伸ばしているのが特徴的です。
一方のドルトムントは、移籍金収入が高く、今も伸びています。ドルトムントの戦略は、チケット代を高くせず、若手育成から移籍金収入を得ることであり、バイエルンとは対照的です。
放映権収入の伸びや人件費コントロールが上手という点は両クラブ共通です。人件費コントロールについては、ブンデスリーガの特徴の1つと言えます。人件費については、後ほど深掘りして取り上げます。

■レアル・マドリード(欧州2位)vsFCバルセロナ(欧州1位)


スペインはラ・リーガのライバルクラブです。売上でも抜きつ抜かれつの両クラブですが、2019-2020シーズンはコロナで苦戦しました。
内訳を見ると興行収入で差が出ていますが、こちらはシーズンチケット払い戻しのタイミングの問題となります。
問題は利益部分で、バルサは大赤字となっております。理由は選手権利金の減損です。バルサは選手移籍に伴い、BSの資産として計上していた選手権利金を、PLの費用として計上する処理をしたことで、大赤字になったということです。
そして、この大赤字で債務超過の中、まだ、銀行からお金を借りるという、バルサの“凄さ”で盛り上がりました。良い面・悪い面含めて、ソシオ制度の特徴が出ているのかもしれません。

2.欧州5大リーグの全体像


ここからは、欧州5大リーグの全体像を、デロイトの資料を見ながら紐解いていきます。

https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/uk/Documents/sports-business-group/deloitte-uk-annual-review-of-football-finance-2021.pdf


全体像ということで、まず売上規模ですが、数ある欧州サッカーリーグの中で、5大リーグの売上は欧州全体の6割を占めます。その5大リーグの中でも、トップのプレミアリーグと5番目のフランスリーグアンでは、3.2倍の差があるのが現状です。売上規模という意味では、イングランドのプレミアリーグが圧倒的となります。


■営業利益

営業利益を見ると、黒字のプレミア、ブンデス、ラ・リーガに対して、赤字のセリエA、リーグアンという構図になります。
特に、フランスのリーグアンは、13年連続の赤字ということで、利益が出ていません。
人件費比率が高く、スタジアム満員率が低いというのがデータから読み取れますが、リーグアンの対策としては、23-24シーズンから所属クラブを削減することに決めています。
消化試合が減って、スタジアム満員率が上がる効果は見込めますが、売上規模縮小のリスクや過剰な選手獲得で人件費が上がるリスクもありそうです。
プレミア、ブンデス、ラ・リーガは、優秀な利益率(5%〜10%)で推移しています。直近のプレミアはコロナの影響を受けて大きく利益を落としましたが、黒字をキープしています。
つまり、この3つのリーグは、高い付加価値を出せていることが、数字から読み取れます。

■売上高人件費比率


5大リーグを比較して、それぞれの特徴が出ているのが売上高人件費比率となります。
まず、最も堅実で人件費比率を抑えているのがドイツのブンデスリーガで56%。
逆に最も人件費比率が高いのはフランスのリーグアンで89%となります。
プレミアリーグとラ・リーガは、人件費の絶対値は高いですが、売上高も高いので、人件費比率という意味ではバランスが取れています。(73%、67%)
イタリアのセリエAは、フランスほどではないですが、人件費比率78%と高くなっています。

そもそも、欧州サッカークラブの人件費は、何故こんなに高いのか。
1つ考えられるのは、昇降格制度やCLやELの出場権というインセンティブの影響です。
つまり、補強しないと降格してしまう…良い選手を取ればCLやELに出場できるかもしれない…という形で投資が進み、負のスパイラルに陥っている可能性があります。
実際、リーグ内の各クラブの人件費高を見ると、CL出場クラブ以外は、クラブ間でほとんど差がありません。
少し頑張れば上に行けそうな気がしてしまう部分と、少しでも気を抜けば降格してしまう部分の両方が見えてきます。

ディスカッションでは、プレミアリーグの各クラブの売上高と人件費のグラフで、熱く盛り上がりました。
プレミアリーグの人件費比率の平均は73%ですが、各クラブの数字を見ると少し違った見え方となります。
下位グループは、降格したくないので、人件費をギリギリまで掛けていて、ボーンマスのように人件費比率100%超え、つまり売上高よりも人件費の方が高いクラブもあります。
上位6クラブは、他よりも人件費の絶対額は高いですが、それ以上に売上高が高いので、売上高人件費比率としては50%〜70%に抑えられています。器が大きいということですが、CLやELに出場することのメリットがここにあります。
逆に言えば、上位6クラブ以外の、CLやELに出場していないクラブの売上高は横一線です。
少し頑張れば上位6クラブに入れるという夢と少し気を抜くと降格してしまうというリスクが紙一重であることが、グラフから見て取れます。


売上のほとんどを人件費に当てて、良い選手を獲得し、勝てるチームにする。勝てれば売上が上がり、良い選手を取れる。というサイクルを目指すのはスポーツクラブとして自然な姿かと思いますが、そんな中、ブンデスリーガは売上高人件費比率を56%に抑えています。
ブンデスリーガのクラブは、非営利法人のような公益性の高い団体であるフェラインによって成り立っており、「50+1ルール」によりフェラインが過半数の議決権を持っています。
このことでお金の使い方、財務の統制が取れているのかもしれません。リーグ全体で統制を取るドイツの堅実さは、まさにドイツらしいと思いました。
【↓↓ブンデスリーガの財務データ↓↓】

人件費と言えば選手の話が中心になりがちですが、さすが山田塾!スタッフの人件費をちゃんと出せているのか?という話でも盛り上がりました。
金額の割合としては大きくないスタッフの人件費ですが、人件費カットの対象になっているという悲しい現状も見え隠れします。
この辺りを深掘りすると各クラブへの印象も変わりそうです。スポーツビジネスを志す者としては、とても気になる論点です。

コロナ禍で売上高が下がった時にどこにお金を掛けるか、という議論もありました。
スタッフの人件費を確保するクラブや育成にお金を確保するクラブが増えてくれると嬉しいですね。
ちなみに、ドイツブンデスリーガは、コロナ禍でも、ユース関連支出を増やしており、中長期の視点で、将来への投資をしていることがうかがえます。

■資金調達


どこからお金を手に入れるのか…。資金調達は経営する側にとって、とても重要なテーマです。
資料を見ると、マンU、マンC、チェルシー、トットナムの資金調達先が見事にバラバラで、興味深い内容でした。
無利子で貸しちゃうアブラモヴィッチ氏…noteで色々書きたい気持ちはあるのですが、資金調達は次回のメインテーマなので、今回はこのくらいに留めておきます。笑
気になる方は、ぜひ入塾して、アーカイブよりご視聴ください。

偶然にも、この講義の後に、アブラモヴィッチ氏によるチェルシー管理権譲渡問題が、まさにタイムリーなニュースとして話題に上がってきました。山田塾がリアルタイムな議論をしていることを改めて実感します。

山田塾は、アーカイブ視聴もできるので、仕事が忙しくて、なかなかリアルタイムで視聴できない自分でも、楽しむことが可能です。
私の執筆がモタモタしている間に、山田塾のseason1は終わりましたが、なんと、大好評により、山田塾はseason2へ突入することになりました。ということで、ぜひぜひ一緒に学びましょう!

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2021年5月開催のシーズン1初回講義を公開します!
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下記まとめnote有料部分に全て掲載してありますので、是非アクセスのほどお願い致します。

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別途学生証の提出が必要ですので、その点のみご了承下さい。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

(執筆:深谷興士)


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