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【表現辞典】霊石典/名作家の文章〈2〉渡辺温『アンドロギュノスの裔』

霊石典

〈おしらせ・索引〉

 この記事は、私が編集している『霊石典』の派生記事です。名作家の作品の中から、『霊石典』収録の言葉が使われた印象的な文章を紹介します。言葉に興味を持つきっかけとして、あるいは、言葉をさらに深く理解する参考として、ぜひ本編の記事とあわせてお読みください。

渡辺温『アンドロギュノスのちすじ』(青空文庫

彼女は自分が男に想いを懸けた時には、その男の髪の毛を或る草と一緒に、何か呪文を唱えながら、三脚台の上で焼くことに依って、どんな男をでも、自分の寝床に誘い込むことが出来た。

 魔法を使う女が、男を誘うための儀式を行う場面です。呪文という、魔力を秘めた言葉を口に出す動作に、[唱える]が使われています。文章全体に、昔話やファンタジーのような、ミステリアスな雰囲気が充満しています。ところで、先日紹介した、夏目漱石『私の個人主義』では、西洋文明について主張する行為に[唱える]が使われていました。呪文と文明論というおよそかけ離れた内容を、ともに[唱える]が受け持つのがおもしろいですが、どちらも「その言葉を熱心に口にする」姿を思い浮かべます。

 この記事では、[となえる(唱える)]が使われた文章を紹介しました。

 ぜひ、本編の記事もお読みください。


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