見出し画像

📕キッチン

吉本ばなな、著
キッチン

両親を失い、そのあと面倒を見てくれていた祖母を失い、みかげはひとりになった。彼女の居場所は、台所だけだった。

そんな彼女によりそってくれる雄一とえり子さん。3人の生活がはじまる。
かけがえのない、束の間の時間が過ぎてゆく…

読書をしたての頃、この小説を読んで、不思議な柔らかい物語だくらいにしか思っていなかったけれど、
10年の月日を経てから、改めて読んでみると、一文字一文字に込められた優しさが文章から伝わってくるではないか。胸のあたりが暖かくなるとは、こういうのとなのか。

自分のなかのなにかが喪失して、それを言葉にするまで途方もない時間がかかる。そういうとき、ひとは絶望しているものだ。そして、ギリギリになって気がつく。それを気づかせてくれるひとがいることは奇跡だろう。

私自身、これまでの人生、なんだかんだで生き延びてきて、運に活かされているなと思う、今日この頃である。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?