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京都の本「京の離宮と御所」



JTBのムック本




まずはじめに

皆様は「ムック本」というのをご存知でしょうか。

雑誌と書籍を混ぜた和製英語でマガジンとブックを合わせて"ムック"という言葉が生まれました。

もちろんポンキッキからではありません。



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京都検定を勉強する際に『新版京都・観光文化検定試験 公式テキストブック』を利用するのですが、書籍という性質上写真が少ないのが一番の欠点。

京都へ訪れて観光地各所を巡るのが一番いい勉強方法なのですが、当然人はみな時間もお金も限られています。書籍の欠点を補う。それががムック本になります。



本の紹介

ムック本を決して舐めてはいけません。

雑誌と書籍の中間ということで中途半端だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらの本は雑誌と書籍のいいとこ取りの内容になっています。

なぜ人は桂離宮や修学院離宮に魅了されるのか。それらの奥深さをわかり易く解説してくれる本です。



第十一代小川治兵衛「植治」

TVerやNHKで京都特集番組をチェックしているのですが、庭がテーマの時にだいたいゲスト出演されているのが十一代目小川治兵衛こと小川雅史さん。

十一代目の明快な解説のおかげで七代目小川治兵衛の庭をちゃんと理解することが出来ました。



庭は施主の心を映す鏡。

自らデザインした庭を所有することは莫大な富を持つ権力者の特権です。ゆえにその庭は必然的にその人の理想すべてが詰まっているものになるんですよね。



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名庭は多くの人を惹きつけます。それは画家が自分の想いを一枚のキャンバスにぶつけるのときっと同じなんだと思います。

仏教の理想を表現したり、月を観るためだったり、心の安らぎを求めるためだったり。名画が2Dだとしたら名庭は"芸術の3D作品"といったところでしょうか。



絵と庭とでは大きく異なる点があります。

それは自然です。自然は成長し続けるので放置するとただの雑木林と化してしまいます。



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だからこそ維持管理することは作庭以上に重要な要素になるのです。

これも十一代目がテレビで解説されたことですが、名庭が名庭のままであり続けるのは今を生きる造園家や庭師たちが当時の心を学び、今の環境に合うよう調整し続けているからなんです。

天龍寺の曹源池庭園は毎日限られた庭師だけが道具を使わず素手で苔の手入れをしています。石組みの場所は住職でさえ入ることが禁じられているそうです。庭園は「生きた芸術」ということなんでしょうね。

《補足》



桂離宮と智仁としひと親王

歴史に詳しい人なら説明は不要だと思いますが、智仁親王を一言で表すなら晩年の豊臣秀吉に翻弄された人物のお一人です。



本に詳細が書いてあるのですが、桂離宮が親王の心を表していると考えると、すごくわかるというか切なくなるというか。

長い年月を経ても共感できる。だからこそ今もなお多くの人を魅了させる。桂離宮、素敵なお庭です。



京都仙洞御所と江戸幕府

仙洞御所といえば、小堀遠州の作庭と八ツ橋、そして一升石が見どころとなっていますが本の解説を読んで驚きました。



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江戸初期に起きた紫衣事件を一度は聞いたことがあると思います。実は八ツ橋の藤棚は幕府と朝廷の関係を示すものだと言われているのです。

藤を見ろ。紫衣事件を忘れさせないぞ。という幕府の圧力を物語る藤棚は当時の公家たちを相当怯えさせたのでしょうね。



一升石は枯山水庭園のように川をイメージさせる造りとなっていますが、同時に江戸幕府の権力を示しています。

小田原の湯河原海岸で採れた石一つが米一升分と交換されたのだとか。権力って恐ろしいですね。



修学院離宮の主役は空

庭園の主役といえば、枯山水だったり木々だったり川や池、滝などがありますが、修学院離宮の主役はなんと「空」。



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桂離宮とは正反対の性質を持っている修学院離宮。実は囲いが一切ありません。

すべてを受け入れすべてを包み込む。権力闘争に明け暮れた後水尾天皇にとって修学院離宮はきっと憩いの場所だったのでしょう。



さいごに

ここで紹介したのはほんのごく一部です。

美しい写真とともに庭園、建物、そして時代背景の説明が100ページ近くに亘って詳細かつわかりやすく書かれています。



芸術が好きな方、京都初心者及び中級者は絶対に楽しめる内容です。

スーツという観光系人気ユーチューバーの方も仰っていましたが、知らずに観るのと知って観るのとでは楽しさって段違いなんですよね。

「徒然草」第52段"仁和寺にある法師"がまさにそれです。



ノープラン旅はもちろん面白いです。でも新幹線使ってホテル泊まって数万円使うのであれば充実した観光をしたい。テストだって勉強をしっかりしてから挑んだほうがやっぱ楽しいんですよね。

以上、「京の離宮と御所」本の紹介と感想文でした。



追記

note公式マガジンに記事が掲載されました。ありがとうございます。



「読書感想文」「推薦図書」応募作品の二部門で、"スキ"の週間一位を獲得しました。皆様ありがとうございます。感謝です!!

2023.07.10


2023.07.10

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