感想記「光る君へ」第1回から第10回まで
観光記の枕話としてこれまでNHK大河ドラマ『光る君へ』の感想を書いてきました。今回は"一気見企画"ということで放送十回分をまとめてみました。ただまとめるだけとなるとさすがに"やっつけ感"が拭えないので、2024年6月時点の振り返りを追記しています。読み応えたっぷりの文章量となっています。風景画像を挟んでいますが特に深い意味はありません。
では、感想記「光る君へ」をご覧ください。
第1回「約束の月」
"光る君へ"第一話見ました。
大河ドラマをじっくり観るのは"西郷どん"以来です。京都検定を受験するくらい京都が大好きな私。平安時代の京都を舞台とするドラマを見逃すわけには参りません。
前作、前々作と立て続けに時代考証の人が炎上したという噂話を聞きました。寝殿造って上級貴族しか住んでいないと勝手に思い込んでいましたが、中級貴族も寝殿造の家に住んでいたんですね。少々驚きました。あとCGでしたが右京の湿地帯ちゃんと描写されていました。高校生レベルの知識しか持ち合わせていませんがまったく違和感なくて安心しました。
人物描写についてはうーん。全てを理解出来たのは歴史オタクくらいで、視聴者のほとんどはチンプンカンプンだったと思われます。藤原を姓に持つ貴族が一気に十人くらい登場してましたね。歴史を忠実に再現するとわかりにくくなり、歴史を改変してわかりやすくすると文句を言われる。あちらたてればこちらがたたぬ。ある程度の置いてけぼりはしゃーないのかなって思いました。
あと凄く個人的な事ですが、佐々木蔵之介さん演ずる藤原宣孝がお酒を持ってきたシーンが一番印象に残りました。きっと"佐々木酒造だけに"っていう小ネタなのでしょう。ドラマが始まる前に廬山寺に行っておけばよかったのですがもう"後の祭り"ですよね。なんだかんだ言いましたが一言でまとめるならば"大満足"。第二話以降も楽しみです。
爽秋の京都旅「京都市歴史資料館、京都市営バスで東寺道」より引用
第2回「めぐりあい」
NHK大河ドラマ"光る君へ"が始まったので、ずっと本棚に積んでいた源氏物語を取り出しました。第二話もSNS大盛況。私の読書熱も同時に湧き上がっているのですが、如何せん現代文と古文の中間に位置する与謝野晶子翻訳版なので読むのにかなり苦労しています。桐壺から全然先に進めません。探せばもっと平易な翻訳版があるのでしょうけれど、原文に近いほうが当時の機微を感じられるのでもうちょっとがんばってみようと思います。
第3回「謎の男」
"光る君へ"面白いですね。
視聴率は10%ちょっと。どうする家康の同じ回より低いそうですがこれはまぁ仕方ないことです。だって登場人物の半数以上が藤原なんですもの。ネタバレって基本好まれない行為ですが、今回の大河に限って言えばウィキペディアやら人物相関図やらを事前に予習をする必要があります。それをしないと誰が何しているんだかサッパリワケワカメ。一方、戦国時代は非常に優れたコンテンツで大名だけでなく家臣や姫までキャラクターが周知されています。鎌倉殿の13人同様ずっと厳しい状況が続くのかなって。
そんな中、私が今回の大河ドラマで注目しているのが平安京の地名です。謎の男が散楽をやっていた場所は四条万里小路。主人公まひろが代筆業をしていた絵師のお店は高辻富小路。通りの名前が放送で流れるたびスマホでチェックしてます。いつか京都市内の通り名全てを網羅できるようになりたいんですよね。京都も地理も大好きな私です。
第4回「五節の舞姫」
大河ドラマ"光る君へ"第四話「五節の舞姫」見ました。
『私の想い人は母を殺した殺人者の弟でした。』これまでの話を一言で表すとこんな感じ。斬新さはないけれど心躍るストーリーですよね。謎のイケメン男が二人の間を引っ掻き回し、ユーモアも随所に散りばめられていて、さすが著名な脚本家さんといったところでしょうか。
第四話では花山天皇が即位しましたが、実は今回の大河ドラマで一番注目している人物なんです。西国三十三所観音巡礼で初めて花山天皇の存在を知りました。中山寺は母が安産祈願したお寺で父と三人でお礼参りに行ったことがあったんです。癌が発覚してやり残したこと全部消化したかったんでしょうね。観音信仰中興の祖ということで花山天皇は敬虔な仏教信者で庶民に慕われている人格者だとずっと思っていました。母が亡くなって数年後、京都検定対策のために元慶寺を勉強していた時のことです。『何この逸話。おもしろ。』寛和の変が放送されましたらまた感想を書きますね。
第23回京都検定の一日「いざ受験会場新町キャンパスへ」より引用
第5回「告白」
NHK大河ドラマ"光る君へ"第五話『告白』。
蜻蛉日記でお馴染み藤原道綱母とその息子通綱がフィーチャーされていましたね。藤原道綱母は中流階級の出でありながら本朝三大美人の一人に数えられ、中古三十六歌仙に選ばれるほどの聡明さも持っていた平安時代屈指の女性です。今で例えるならミス日本でしょうか。彼女は右大臣となる藤原兼家の妻になります。幸せ絶頂の彼女でしたが長くは続きませんでした。ドラマで描かれたように正室には選ばれず二番目として母子ともに夫から冷たい仕打ちを受けます。一説には女子を産めなかったからだと言われています。自分の娘を中宮にして天皇に子を産ませ外戚の座に就く。そうして天皇よりも巨大な権力を手に入れるのが藤原北家九条流の悲願でした。
兼家に愛されなかった理由はもう一つあると私は考えています。それは日記から滲み出る高いプライドと強い嫉妬心。恋愛依存体質の女性を好きになる男性はそうそういません。紫式部や清少納言に大きな影響を与えたと言われる蜻蛉日記。"源氏物語"雨夜の品定めはもしかしたら藤原道綱母の恋愛観に、紫式部が作品を通して異を唱えたかったのかもしれません。美人聡明であるがゆえに男心の理解を疎かにした藤原道綱母。もがけばもがくほど幸せが逃げていく。彼女にとって恋愛とはまさに蜻蛉だったのでしょうね。
第23回京都検定の一日「鴨川デルタと二つの出町柳駅」より引用
第6回「二人の才女」
NHK大河ドラマ"光る君へ"第六話「二人の才女」観ました。
正史では出会わなかった紫式部と清少納言初対面シーン。とても見応えのあるものでしたね。まひろの台詞の中に白楽天という人物が出てきました。祇園祭の山鉾にもなっている唐代中期の偉大な漢詩人のことです。私達は漢文を中学から習いますが、平安時代の頃から教養の一つとして上流階級の人たちの間で嗜まれてきた学問なんですよね。清少納言役にファーストサマーウイカさんが抜擢されずっと注目していましたが演技を見て納得。気が強くまひろのいいライバルになりそうで今後も目が離せません。
先日ある方のドラマ感想文を拝見。共感したことがありました。それは登場人物名です。平仮名黎明期だからなのか、登場人物のほとんどがキラキラネーム以上の難読人名ばかり。ロバート秋山さんが演じられている藤原実資。一ヶ月経ってようやく覚えることが出来ましたよ。さねすけ難しすぎ。一時期、テレビの字幕は過剰だお節介だという批判が挙がったことがありました。藤原姓が多い今回の大河ドラマ。初登場くらいは人物名と軽い紹介文を付けてほしいなって思います。dボタン押せばいいやんっていう反論わかりますよ。でもそれをするくらいだったらスマホで調べますし、その一手間が世界観没入を大きく阻害させるんですよね。面白いからこそああだこうだと文句を言ってしまいがち。その辺はご容赦下さいね。
第7回「おかしきことこそ」
NHK大河ドラマ"光る君へ"第七回「おかしきことこそ」観ました。
最後のほうでイケメン男性たちのサービスカットがありましたね。女性視聴者に向けたものかどうかは不明ですが、YouTubeと同じようにいずれは日本でも男性の上半身裸がNGになる日が来ることでしょう。昨今の過剰過ぎるポリコレに正直うんざりしていますが、源氏物語のように暗喩的な文学表現が増えていくような気がしていて、そういう風潮になれば面白いかなって思っております。
そういえば、ポロに似た球技"打毬"で藤原四人衆の一人の藤原行成が欠場していました。私ずっと引っかかっていたんです。行成って名前どこかで聞いたことがあったような。ウィキペディアの経歴や著作の項目を眺めてみたところピンと来ず。諦めかけていたその時でした。真跡という項目にこう書かれていたんです。
本能寺切
本能寺が所有する国宝の人だ。そうです。本能寺切ほんのうじぎれは藤原行成が書いたものとされている書巻です。京都検定二級対策で寺社仏閣の国宝を勉強したから記憶に残っていたんでしょうね。藤原道長と大変縁のある人物だったとは全く知りませんでした。
"おかしきことこそ"が第七回の副題になっていますが、実は全体のストーリーがおかしきことこそになっているんですよね。ロバート秋山さんはずっとコント調だし矢部太郎さんの気絶っぷりは実にお見事でした。権力闘争や身分格差という暗いテーマをユーモアで包み込んでいて、"おかしきことこそ"が今回の大河ドラマ最大の魅力だと私は感じています。お笑い芸人繋がりではありますが、藤原四人衆のもう一人、藤原斉信を演じるはんにゃ金田さん。存在感抜群で場数をたくさん踏んでいるのかと思いきや、思ったほど演劇経験がないことに少々驚いています。目がぱっちりされている方なので本格的に俳優に転身していいんじゃないのかなと思うのですがどうでしょう。
第8回「招かざる者」
『光る君へ』第8回”招かざる者”を観ました。
道兼が殺人を犯すほど傍若無人だったのは父の暴力が原因の家庭環境によるものだったのね。両腕のあざを見た時の第一印象です。最後まで見終わったあとふと一つの疑問が浮かび上がりました。
なんで道兼は為時に近づいたの?
"病気"も"折檻"も「兼家の演技だった」と仮定するならば…。道兼が為時の家へ赴き酒宴を開いたのはまひろの母を殺した贖罪のためでも、下位の身分に優しくなったからでもなく花山天皇側に寝返った為時の動向と真意を探るため。"両腕のあざ"は為時の後任となったスパイ道兼がわざとつけたもので、同情を誘い花山天皇の懐に飛び込むため。右大臣の謀略であったと仮定すると全ての辻褄が見事に合うんですよね。まぁ大河ドラマってミステリー小説ではなくエンターテインメントなので、副題に沿うように為時の家へ道兼を訪問させたかったという単純なご都合主義の可能性ももちろんあります。どちらにせよ考察捗る第8回でした。
まひろ『母を殺した道兼を許せない。でも自分の気持ちをあの男に振り回されるのはもう嫌。』
ちなみに私が一番印象に残ったのは道兼が帰った後の父娘シーンになります。復讐心って本当に厄介なもので憎めば憎むほど憎んでいる相手のことで心が一杯になってしまう。復讐ほど矛盾に満ちたものはありません。復讐を忘れて幸せの道を歩くことが死んだ人の望みでもあり真の復讐なのかなって。
第9回「遠くの国」
NHK大河ドラマ"光る君へ"第九回を観ました。
私が先週予想した「右大臣仮病説」は半分アタリで半分ハズレでしたね。安倍晴明が黒幕だったんですか。花山天皇&藤原義懐にずっと太刀打ち出来なかった関白以下の公家たち。確かにすべて道兼の策謀とするのは無理があります。安倍晴明が褒美と引き換えに策を授けた。納得の筋書きです。
第九回のタイトルはずっと紫式部越前編の伏線かと思っていました。「遠くの国=あの世」というダブルミーニングだったんですね。東の鳥辺野、西の化野、北の蓮台野。京の三大葬地は京都検定の頻出単語です。鳥辺野というワードが出てきた瞬間にピンと来ましたよ。ちなみに農作物が育たない地域のことを~野と呼びます。農作物が育ちにくい土壌なので、狩猟場になったり寺社仏閣が建てられました。紫野、大原野がそうですよね。
そういえば散楽(義賊)衆の一人が牢屋で女の名を口にしてました。あれって超典型的な"死亡フラグ"ですよ。検非違使長の様子もおかしかったですが、あのセリフで死は確定となってしまいました。流罪と聞くと「地元民の温かいもてなしに囲まれてスローライフを楽しむ安住の地」を思い浮かべる人が多いかと存じます。でも実際は毒物などで暗殺されたり、今回のように移送中に斬り捨てられるパターンも少なくありませんでした。西郷隆盛やナポレオン、宇喜多秀家などは例外中の例外。高貴な人であっても命の保証はありませんでした。
さて、寛和の変がいよいよ始まりますね。序盤最大の盛り上がりイベントといっていいでしょう。いろいろ話したいところでありますが来週までとっておくことに致します。
第10回「月夜の陰謀」
NHK大河ドラマ"光る君へ"第10話観ました。
"寛和の変"の緊張感とスピード感最高でしたね。文句の付け所一切ありません。花山天皇の出演はこれでおしまいなのでしょうかね。まだ院政の時代ではありませんし紫式部の物語に再登場させるのはさすがに難しいでしょうか。花山天皇を演じていた本郷奏多さん。ガンプラガチ勢ということで一気に好きになりました。今後の活躍にも注目していきたいです。
ラブロマンスに興味ないのでそこらへんの感想は割愛しますが二種類の涙のシーンはいろいろと考えさせられました。川端康成の小説『古都』でも愛の告白を断る場面があって恋愛って難しくて、だからこそ源氏物語は千年後も語り継がれていったのでしょうね。寛和の変が終わり私の関心事は越前編へと移りました。いよいよ明後日(3月16日)に北陸新幹線金沢~敦賀間が開業します。これまでにない注目を集めている福井県。どういう描き方をされるのかすごく楽しみ。
余寒の京都旅「ゆずけいらんうどん」京めん処 さくら庵より引用
以上です。ご精読ありがとうございました。
追記
『ドラマ感想文』応募作品の中で、スキの週間一位を獲得しました。皆様ありがとうございます。感謝!!
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