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「金利のない世界」で退職金専用定期を使い倒した件

令和6年3月に日銀はマイナス金利政策解除を決定し、財閥系メガバンクはそれを祝福するかのごとく直ぐに普通預金金利を0.001%から「20倍」の0.02%に引き上げると発表しました。

「金利のある世界」復活とマスコミも大騒ぎでしたが、現実的には日銀当座預金残高の三層構造、すなわち「基礎残高」「マクロ加算残高」「政策金利残高」を二層化に戻しただけであり、実態としては日本の金融政策が大転換を遂げたとは思えません。

とまあそんな難しいことは横に置いて、今回はデフレ下の「金利のない世界」で早期退職した私がいわゆる「退職金専用定期」なるものを当時使い倒し、1年半で累計50万円超の不労所得を稼いだ話をしたいと思います。

退職金専用定期とはその名の通り、普通の勤め人が一生に一度受け取るまとまった大金を、金融機関が通常の定期預金よりも高い利息で預かるという一見退職者に優しい金融商品に見えますがその実態は異なります。

多くの退職金専用定期は高額手数料型の投資信託とセット販売です。

定期預金の方は通常たった3ヶ月間だけに7%などの特別金利が適用となり、そこでの利息手取り額は同額の抱き合わせ販売の投資信託手数料と相殺されてしまう設計です。

これを選んではいけません。

選択すべきは直ぐには投資に踏み切れない顧客をとりあえず囲い込み、定期満期後に高額手数料商品を購入させてみせると設計された退職金定期単独型プランです。

さすがにこちらは最終的に金融機関側の思惑通りにことを運べるかが分かりませんので、同じく期間3か月の退職金定期預金でも適用金利は年率0.6%~1.2%程度でした。

これは2~3%程度の円安インフレが常態化しつつある現在の感覚では魅力的には見えませんが「金利がないデフレの世界」では利用価値がありました。

投資信託との抱き合わせではない退職金専用定期は、金融機関にとって顧客囲い込みのための「マグロ一本釣り用の餌のイカ」です。

よってマグロ(=退職金定期利用者)の立場からすれば、いかにイカだけを食いちぎって逃げるかが肝となりました。

投資信託とのセット型退職金定期プランは彼らに有利なので多くの金融機関が取り扱っていますが、単独型退職金専用定期を取り扱う金融機関は一部信託銀行と地銀・信用金庫系だけに限られているようです。

私は最終的に約1年半の間に合計6行を渡り歩きました。多くのプランには退職後2年以内という「縛り」が付いている中でもうあと1-2行の利用も可能でしたが、別途投資に資金を回したくて打ち止めにしました。

適用金利0.6~1.2%の単独型退職金専用定期の主な特徴は以下の4点です。

① 期間は3か月:

しょせんは退職者の興味を引いて一刻も早く高額手数料商品を売りつけるためのエサなので、不必要に長期な預金期間にはしません。

② 窓口販売のみ:

金融機関側からすれば退職者が呑み込みかけたエサもできれば口に手をねじ込んで取り戻したいところです。よって予約来店での契約を原則として最後まで高額手数料商品とのセット型押し売りに挑戦してきます。

③ 条件付きも存在:

金融機関によっては「資産運用相談」などを条件に付けてくるところもあります。訪問客を今後どの程度しゃぶり尽くす事ができそうか、本人保有資産と定性的なマネーリテラシー度を取り調べるためです。

④ 退職金の定義はバラバラ:

退職金専用定期なる商品は民間金融機関が独自に設定しているものですから、預け入れ限度額もまちまちです。退職金手取り金額を限度額にする正攻法のところもあれば、額面ベースもありました。大手信託銀行では「退職金が1円でも混じっていれば1億円までOK」と節操のないところもあります。

さて、いずれの金融機関も定期預金満期を迎える3ヶ月経過前後に投資信託並びに保険商品の購入をさせようと文字通り「手ぐすね引いて」攻勢をかけてきます。

しかし私は先方推奨商品に対し理路整然とダメ出しをして「新たなイカ」を求め次の金融機関に淡々と資金を移して行きました。

追記:

退職金専用定期預金を利用するにあたっての高金利適用以外のメリットも2つほど紹介致しましょう。

(1)本定期預金を使い倒す期間中は、基本ティッシュペーパーや食品用ラップなどを身銭で購入する必要はありません。各金融機関からいつも手提げ袋いっぱいの生活日用品セットが預金時にプレゼントされます。

(2)ご担当頂ける窓口の方は若い異性の方が多く、お酒こそでませんが「これまでお勤めご苦労様でした」と個別ブースで優しい声を掛けられ、ちょっとしたキャバクラ(またはホストクラブ)気分を無料で楽しめます。

前述の通り、現在のインフレ率からすると退職金専用定期は以前ほどの利用価値はありません。それでも「金融資産はすべて全力で投資商品」という方以外にはこの「一生に一度モノ」を是非楽しんで頂きたいと思います。

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