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第一章-2-CDからサブスクへ、音楽体験の変化(全文公開)〜『音楽業界のカラクリ』サポートページ

 クラウド化により音楽体験はCDなどを買って再生機で聴くものから単曲ごとダウンロードして聴く ものへと変化しました。このような音楽体験を定着させたのが、ストリーミングサービスです。

●配信サービスによる新しい音楽体験

 クラウド化という変化を、ユーザーの音楽消費という観点から見てみましょう。以前は、フィジカル(レコードやCD)を購入して、再生機で聞くというのが以前の音楽体験でした。ソニーのウォークマン(カセット、CD)プレイヤーは、屋外でも聞けるという新たな提案でしたが、テクノロジー環境の変化は、ユーザー体験を更新し続けていきました。Apple創業者のスティーブ・ジョブズは、NTTドコモのi-modeとウォークマンから、iPodとiTune Music Storeを着想したと言われています。iTuneの普及は、配信サービスで選んで、単曲ごとにダウンロードして聴くという新しい音楽体験を定着させました。
 現状のストリーミングによるサブスクリプション(月額課金型)サービスは、その次の段階として登場しました。ダニエル・エクというスウェーデン人の技術者が考案したSpotifyが世界の標準的モデルになっていきました。通信環境の進化、スマートフォンの性能向上および普及率などが普及を後押ししました。インターネットの普及と共に、音楽業界は、無許諾で著作権法違反の楽曲が広まる広まる現象に打撃を受けていましたが、エクが掲げた「違法サービスより便利なサービスを作るのが、最善の違法対策」という方針は正しかったようで、Spotifyが普及していくしたがって、違法サービスは概ね駆逐されていきました。Spotifyは法人設立時より、大手レーベル4社(その後、EMIをユニバーサルミュージックに吸収合併されて3社)が出資しているのが象徴的です。

●ストリーミングでV字回復

 Spotifyの躍進に遅れを取っていたAppleは、iTunesが勝ち組だっただけに、転換がおくれました。「イノベーションのジレンマ」と呼ばれる現象です。2014 年にDr. Dreという著名ヒップホップ音楽家が始めた高級ヘッドフォン会社Beatsを買収。Beatsのストリーミングサービスを取り組む形で、Spotfiyと同種のストリーミングサービスApple Musicを始めました。ユーザー数でSpotifyを追いかけています。長期低落をしていた音楽市場、音楽業界が、ストリーミングサービスの普及に牽引される形で、2014年からV字回復を果たし、伸び続けています。(図1-2参照)
 ストリーミングサービスが音楽生態系の幹になった構造変化について、様々な視点から総合的にひも解いていきましょう。


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