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コロナ禍で成長する世界の音楽市場。日本だけ下降の原因はデジタル化の遅れという当たり前の話

 国際的な音楽業界団体、IFPIが2020年のデータを発表しました。詳細を解説したMusicAlly Japanの記事は総合的にまとまっているので、是非、ご覧になってください。

コロナ禍でも成長した日本除いた世界の音楽市場

 2020年は歴史上間違いなく、Covid-19が猛威を奮った年として記憶されていくでしょう。そんな中、音楽市場(正確に言うと、録音原盤市場=旧レコード市場)は、7.4%の増加をしました。大まかに言うと、下降したのは日本市場だけ。前年比2.1%減少と足を引っ張りました。
 原因は明確です。デジタル市場の成長の遅れです。10年くらい前から、全力を上げてデジタル化にブレーキを踏み続けた、日本のレコード会社の経営方針が、コロナ禍に大きなしっぺ返しを受けた形になっています。

 問題はこの状況が、コロナ禍でも方向転換が不十分なことです。2.1%程度の減少でとどまったのは、デジタル市場を伸ばしたからではなく、パッケージ市場の下落率を少なくするべく踏ん張ったからという側面の方が強いです。危機に頑張りがきくのは日本人らしくもあり、良いことなのですが、時代の流れに竿をさしても、負け組になるだけです。10数年前の「日本はデジタル化にブレーキを踏む」という意思決定をした経営者の皆さんは既に引退されていますが、先人から経営のバトンを受け取った現経営陣がしっかりと受け止めて音楽業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいただきたいと願っています。

日本のデジタル音楽市場を伸ばそう

 国際視点での日本音楽市場の課題は、デジタル分野を伸ばすことに付きます。7割以上のパッケージ(physical)に依存する状況は異常です。CDがまだ売れるのは良いことなので、残す努力はするとしても、主な注力はデジタル市場に注ぐべきです。
 国内アーティスト比率やパッケージ比率が高いことで日本に似ていると言われていたドイツもデジタルが7割を超えました。デジタル市場の強化が音楽市場全体を活性化することは明らかです。

 デジタル市場を2000億円規模に成長されることができれば、デジタル音楽においても世界二位の市場にすることができるでしょう。十分そのポテンシャルはあるはずです。日本市場への興味は日本の音楽への興味喚起にも繋がっていきます。デジタル化された音楽消費の場はグローバルな市場です。SpotifyもAppleもYouTubeもユーザー行動はクラウド上で繋がっています。デジタル化することで世界とつながることが容易になるのです。

K-popが切り拓いてくれたアジアへの注目を活かそう

 MusicAllyの記事にもあるように、BTSの成功など韓国音楽業界が頑張ってくれたおかげで世界音楽関係者のアジアの音楽シーンへの関心が高まっています。
 LAに拠点を移しアメリカ音楽界頑張っている作曲家ヒロイズムと先日話したところ、最近は「ヒロ、K-popみたいな音楽得意だよな?」という連絡が増えたそうです。最初はムッとしていたけれど、チャンスだと捉えるようにしたとのことで、とても正しいですね。韓国音楽界の元祖であるSMエンターテインメントの礎を作ったのは日本の音楽業界ですから、根っこは近いところにあるのも事実です。もう随分、先を越されてしまっていますが、日本人にとってもチャンスであるという認識を持って頑張りましょう。欧米人の多くは、日本人と韓国人と中国人の区別が曖昧です。細かいこと(?)は、気にせず、自分たちの音楽を売り込んでいくのです。

デジタル化とグローバル化以外にやることは無い

 ざっくり言って、日本の音楽関係者にとって、マネージャーもレーベルも起業家も、誰にとっても「デジタル化とグローバル化」以外にやることはありません。日本は大幅に遅れているのでやること山積ですし、そこにはビジネスチャンスがたくさん眠っているのです。
 日本は国内市場が(まだ)豊穣で、そこだけで十分なビジネスができるのは事実ですから、音楽家個々人の戦略としては、「内国特化」という方針はあり得ると思います。しかし成長が止まった市場だけでの戦いはハードです。そして「日本以外」と思った瞬間に、巨大な成長市場の可能性があちらこちらに眠っているのも真実なのです。
 僕は日本のレコード産業を石炭業界に喩えることがあります。炭鉱が日本に要らなくなった時って、石炭会社の人たちってどんな気持だったのだろうとよく考えます。感傷的にはなりますよね。ただ「石炭掘り」にこだわる限り、滅びる流れは止めることはできないでしょう。自らを「エネルギー提供会社」と思えれば話は変わるのですけれど、、。

  他の産業と同様に音楽ビジネスもグローバル化が激しく進んでいます。日本人のクリエイティビティは世界水準で決して劣っていませんし、多様性があり、個性的でもありますので、チャンスは大いにあるのです。グローバルな視野を持ちながら音楽に関わっていきましょう!


2014年秋に講座として始めた「ニューミドルマン」は、その頃から、「デジタルとグローバル」の話ばかりしていました。改めて2021年4月時点の総括を行うオンラインイベントをやりますので、興味のある方はご参加ください


モチベーションあがります(^_-)