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第一章-5-コンサート市場の成長とコロナの打撃(全文公開)〜『音楽業界のカラクリ』サポートページ

新型コロナウイルス感染症(COVID- )の流行で、国内外のコンサート市場は大きな打撃を受けま した。一方で、ライブビューイングやVRによるライブエンターテインメントへの期待が高まっています。

●2023年からは成長率が戻る見込み

 エンターテインメントの消費のトレンドが、モノの 購買からコト消費といわれる体験に重心を変えてきて います。この流れは、音楽においても同様です。CD売 上というモノの売上が減り続ける中、体験を商品とす るコンサート市場の売上は増加を続けていました。日 本国内市場、海外市場共に、着実に成長を続けてきた 分野です。そして、COVID- *の広がりによって 行われた感染防止対策で壊滅的な大きな打撃を受け たことも共通です。
 ゴールドマン・サックスのレポート(左図)による と、世界のコンサート市場は、二〇〇七年から二〇一九 年まで平均年率五%の成長を遂げ、二八〇億ドル(三兆円)にまで達しました。COVID- に対する感 染予防のためにコンサートが実施できなくなってしま い、二〇二〇年はマイナス七五%という巨大なダメー ジを受けました。しかし、ワクチンの普及など、感染 症対策が進んできたことで、コンサート市場について も回復のメドがたち、二〇二三年からは年率四%の成 長に戻ると予測されています。


 日本のコンサート市場も大まかには同じ流れです。 コンサート入場料売上は二〇一四年にはCD売上を上 回りました。一〇年間で年平均八・三%の着実な成長 を続け、二〇一九年には四二三七億円に達しました。 中止要請の圧力が高かった日本では、二〇二〇年はマ イナス八二%(三六四八億円減)となりました。二〇二 三年からの回復が期待されますが、ぴあ総研は、コロナ
禍の後遺症を織り込み、年二・四%の成長を予測し ています(本文 ページ上図参照)。
 コンサートというのは、アーティストとファンの深いエンゲージメント(絆)が実現する場です。まとまっ た統計データはありませんが、コンサート時のグッズ の売上はチケット入場料以上にあるといわれていま す。飲食などを含めたコンサートの「経済効果」は非 常に大きなものがあります。音楽の経済効果という意味では、夏フェスと呼ばれ る、オムニバス型の超大型コンサートがあります。一箇 所に複数のステージを用意して、たくさんのアーティ ストが出演するフェスティバル型コンサートがCOV ID- 流行前までは隆盛を誇っていました。フジ ロックフェスティバル、サマーソニック、ロック・イン・ ジャパン・フェスティバルと数日に渡って一〇万人規 模を集めるフェスティバルも存在しています。人気の フェスティバルの中には、出演者が発表になる前にチ ケットが売り切れるものもありました。まさにユー ザーに「体験」を提供するビジネスであるといえるで しょう。


●ライブビューイングや配信は成長軌道

 ライブエンターテイメントの領域でも、今後はテク ノロジーの関与が予想されています。コンサートを配 信で楽しむ形は、映画館などに集まって楽しむライブ ビューイング型と個人向けに配信する形があります が、いずれも成長軌道です。
 バーチャル型の音楽体験にも期待が寄せられていま す。VRはゲームが牽引してきた領域ですが、二〇二 〇年にはフォートナイトという超人気ゲームの中で、 トラビス・スコットがコンサートを行い、一二三〇万 人を集め、二〇〇〇万ドル(約二一億円)の売上を上げ て、大きな話題になりました。
フォートナイトはMMORPG*ですから、ゲームの 世界観の中で、没入感の強い音楽体験となりました。 米津玄師や星野源といった日本人アーティストもコン サートを行っています。
株式会社 CyberZ、株式会社OEN、株式会社デジ タルインファクトによる「デジタルライブエンターテ インメント市場予測」によると、二〇二四年はオンラインでのコンサートなどのデジタルライブの市場が九 八四億円になると予測されています。これは、二〇二一 年の音楽関連のDVDやブルーレイの売上である「音 楽ビデオ」市場が六五六億円であることを考えると、 音楽映像分野で「主役の交代」が起きるということを 意味しています。
 テクノロジーがあらゆるエンターテインメント体験 を進化させているいま、新しいフォーマットによるコ ンサートの行方も注目ですし、有望分野です。ユー ザーの主たる消費行動が、モノの購入から、コト消費、 体験型に移行しているというのは、あらゆる領域で語 られています。音楽はその先陣を切る役割を果たして いくべきでしょう。



モチベーションあがります(^_-)