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ブロックチェーンでクリエイターエコノミーを進化させます【COPYRIGHT巻頭インタビュー/全文公開】


 公益社団法人著作権情報センター(CRIC)が発行している「月刊COPYRIGHT」の巻頭インタビューで、著作権とブロックチェーンについて語りました。発行から1ヶ月が経ち、ご許可をいただいたので、こちらに全文公開させてもらいます。ご意見などあれば歓迎します。

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 ブロックチェーン技術の普及は、インターネットの普及と同じくらい社会に変化をもたらすと言われています。
 改ざんされない形で、プラットフォーマーの基盤を利用することなくコンテンツの著作権者であることの証明や利用許諾の契約を記録できる基盤として機能するからです。そして、そこにはあらゆる契約、約束事のアップデートが含まれてきます。エンタテインメントビジネスを本質的に構造から変えることは間違いないと思っています。

利用許諾のプロセス

 では、何が変わるのでしょうか。高機能な契約確認基盤としてそれが機能することで、まずは利用許諾のプロセスを大きく変えることが可能となります。
 コンテンツの利用許諾はこれまで、原則としてアナログにやらざるを得ませんでした。そして、その許諾のタイミングで契約と金銭発生を行うというビジネスモデルを採用するのがほとんどでした。しかし、ブロックチェーン技術が広がれば、それをアーティストやミュージシャンがコントロールした形で、直接かつ自動的に行えるようになります。
 具体的には、クリエイター(権利者側)が条件を定めて、それを認めた使用者が著作物を利用すると、自動的に対価が支払われるという仕組みを、これまでのプラットフォームを介さず、簡単に成立させることができるわけです
個人のキュレーションがコンテンツ拡散の肝になっている今、報酬の分配の循環にキュレーターを取り込むことが必要ですが、それがプラットフォーマーを介さずとも、自然な流れとしてできるようになります。
毎年20万曲を超える新曲が発表される中、Spotifyなどの配信サービスでは、旧譜のシェアが7割を超えており、新譜のシェアは年々減少しています。TikTokなどの動画プラットフォームでのプロモーション以外にも、新曲が注目され、見いだされるための場所が必要ですが、クリエイターとインフルエンサーのマッチングや契約を半自動化し、効率的なプロモーションができるようにもするわけです。

n次創作のエコシステムを実現

 非常に大きな手間がかかるなどの理由で、実現が難しい部分があった仕組みのひとつ「n次創作」の許諾問題も解決できる可能性があります。
n次創作でもキュレーションでも、最も大切なポイントは、(一次)クリエイターに対するリスペクトがあることですが、クリエイターがn次創作を含めて、自分のコンテンツの使用法と対価を定め、それに同意したクリエイターはn次創作し、使用者は利用するという世界実現してくれるわけです。クリエイターズコモンズが理想とするような、クリエイター主導のビジネス生態系の成立を可能にするという側面は、ブロックチェーン基盤の評価ポイントとして、非常に大きなところではないかとも思います。
 私の会社が運営するNFTのマーケットプレイスでも、NFT(代替不能なトークン=ブロックチェーン上で流通するデジタル資産の一種で、偽造や複製とオリジナルを区別する鑑定書と所有証明書付きのデジタルデータのようなもの)を通じて作品を販売していますが、そこでは、ファンとアーティストのつながりを強化するための基盤としてもブロックチェーンを使っています。

 具体的には、音源とアートワークからなる作品を最初に購入した方の情報をブロックチェーン上に記録し、ミュージシャン・アーティストから公式サポーターとして認定される仕組みを採用していたりします。アーティストからファンへは限定ライブへの招待、ギフト券への交換特典、会員限定記事の公開、寄付など様々なものを直接提供できます。また、ブロックチェーンを基盤に、他の方々のために購入した作品の拡散に貢献したとき、音源の流通によって発生する収益の一部をファンやインフルエンサーが得ることも可能です。
 ニコニコ動画の全盛期について語るまでもなく、n次創作は世界で一番日本が優れている分野です。新たなエンタメ生態系を日本発でつくりたい。そして、WEB3.0時代のエンタメコンテンツ生態系の前史として位置づけられる時代を早く来るようにしたいですね。
              (月刊「COPYRIGHT」2023年4月号より)



モチベーションあがります(^_-)