TuneCore71億円前年比166%から読み取る日本音楽市場の近未来/2025年には30%超のシェアを占める?
それは、2017年の秋頃でした。2016年にSpotify Japanが屈折5年という感じでやっとローンチして、日本の音楽界もデジタルサービスを推進する(少なくとも邪魔しない)という意思統一ができてきました。日本の音楽業界の未来を考えている時に、僕の頭の中で、キーパートンとして浮かび上がってきたのは、TuneCoreJapanの野田威一郎くんでした。今後の音楽ビジネスが「デジタルとグローバル」がキーになってきた時に、自らの開発会社を成功させた後にアメリカのTuneCore本社と口説いて、合弁でTuneCoreJapanを始めて、日本のインディーズミュージシャンに「楽曲を自分で配信する」という方法を定着させ、同時に海外のカンファレンスなどに積極的に出向いて日本の音楽を海外ユーザーに聴かせることを腐心してきた野田くんのノウハウとネットワークは重要性を増していくと確信しました。「これからは野田くんが日本の音楽業界のキーパーソンになるから、その自覚持ってね。何かあれば相談してね」と先走って話す僕を怪訝そうに見ていたのを覚えています。
8年位の付き合いの中で、彼の成長ぶりとブレない人柄を見ていた僕は、音楽業界の在り方が拡張して、野田くんのような起業家が核になっていくのだと確信していたのです。
僕にとっては、2017年から予見できていたことですが、TuneCoreJapanの存在感は、もはやいわゆるドメスティックメジャーのレコード会社を上回っています。
日本レコード協会加盟社の全体の売上合計が783億円ですから、いわゆるメジャレーベルインディペンデントアーティストが1割弱あるということになります。レコード協会加盟社が前年比111%なのに対して、前年比168%です。単純に算数的な計算をしてみましょう。
このままの 成長率が続くと仮定すると、2025年には、レコ協会加盟社売上は1188億円、TCJ還元額は565億円となり、インディーズアーティストが日本のデジタル売上の1/3になることになります。「本当にそんなことおきるの?」という疑問を持つ人も多いかもしれませんが、では、デジタル音楽市場に限って見ると、既存のレーベル契約をもつアーティストよりもインディーズアーティストのほうが伸び率がむしろ加速しそうな印象が強いですよね?世界的な資金力と情報収集力を持つグローバルメジャー3社(ユニバーサル、ソニーM、ワーナー)はともかくとして、デジタル市場ではレコード会社の役割は著しく低下していますし、現状では挽回の兆しはありません。
僕の感覚でいうと、TuneCoreが凄いのではなく、アタリマエのことを普通にやっただけで、日本のレコード会社がデジタル市場に取り組まな過ぎという結果だと思います。海外と比較すれば、日本だけデジタルが伸びませんでした。従来の主役だったレコード会社の経営方針の問題です。時代の流れというのは時に残酷ですね。
そして、これからは、デジタルサービスが音楽ビジネス生態系の中心になることも明らかです。
これは
・音源からの売上がCDなどのパッケージからサブスクサービスからの分配が中心に変わる(音源売上がデジタル中心になる)
ということだけではなく、
・ユーザーと音楽、アーティストとの出逢いがデジタルサービス上で起きる、もしくはその可能性(serendilityとか言いますね)を高める
という意味でも重要性を増していきます。
同時に、これからの音楽を発展させていくユーザー行動解析などテクノロジーの活用の場もデジタルになります
・データドリブンマーケティングが音楽サービスを進化させていく
そして、何よりも、これからの日本の音楽家にとって大切な海外市場進出のためにもデジタルサービスが最重要です。
・グローバル市場はデジタルオリエンテッドな市場である。
という現実を理解することは大切です。
今後の音楽ビジネスというのは、デジタルサービス上で行われるものになっていきます。つまり既存の音楽業界の人材はあまり音楽家の役に立たないということです。ドメスティックレコード会社よりもTuneCoreJapanが存在が大きくなっているのがその証拠です。
これからは、これらの前提を踏まえて、音楽に関わっていくことが必要なわけです。
僕は自分のできることとして、音楽デジタルマーケッターの育成プログラムを始めます。音楽を仕事にしたい方やセルフプロデュースを志す音楽家は是非、受講してみて下さい。
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